分業化で支えるヘッド製造

分業化で支えるヘッド製造
月刊ゴルフ用品界2017年9月号に掲載された「現場放浪記 第4回」をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
▼前回の記事はこちら↓ [surfing_other_article id=44760] ゴルフヘッドの一大生産拠点である中国の工場現場から、チタンドライバーはどうやって出来るのか。鋳造(ちゅうぞう)ドライバーヘッドを例にお伝えしています。前回までは鋳造のアズキャスト(AC)が完成し、ようやくドライバーの形になりました。今回はその続きです。

⑪フェースは特別な設計

ヘッド製造工場に到着したACは、別途鍛造製法で作られたフェース部分と溶接されます。ドライバーの場合は、より反発性能(反発係数と高反発エリア)のアップに重点を置く設計手法をとり、ボディとは異なる高機能チタン材料を採用。フェース厚さを変化させたり、ディンプル加工したりしています。 このフェース設計はクラブメーカー各社の腕の見せ所であり、機密事項・ノウハウも多く含む特別な部位と言えるでしょう。

⑫フェースはどうやって作る?

ドライバーヘッドのフェースは、単にチタンの板材を切って製造するのではなく、主に鍛造(たんぞう)製法によって作られます。 中国の製造現場では、まずチタン平板を「抜き型」で切断したあと、加熱炉で熱してから鍛造します。この時点でフェースにはロールとバルジがついているわけです。後から研磨でロールとバルジをつけているのではないのですね。 鍛造されたままのフェースは不要部分が残っているので、これを三次元レーザーカットやワイヤーカットで切断します。

⑬分業化で支えるヘッド製造

このようにして完成した部品を組み合わせ、ヘッドにしていくのですが、中国では従業員数千人規模の大手工場を除き、中小ブランド(いわゆる地クラブを含む)の完成までの各工程は専業の小規模企業の分業制によって支えられています。 大まかには、 A:鋳造ボディ製造工場 B:フェース鍛造工場 C:フェース鍛造後のカット工場 D:溶接工場 E:ヘッド研磨工場 F:メッキ工場(イオンブレーティング工場) G:仕上げ・塗装工場 H:クラブ組立工場 と分かれています。 これら小規模なゴルフヘッド製造工場のメッカ、広東省東莞市にあるC:フェース鍛造後のカット工場の高大上公司を訪れました。 ここではカップフェースの鍛造後の余計な部分をワイヤーカットという方法で切断し、次の溶接工程のためにフェースを仕上げる工場で、社長の勝さんは家族経営をしています。月産1万個程度、加工費の収入で生計を立てています。月の売上は10万元程度とのこと。 また同じく東莞市の誠鈦公司では社員3人でボディとフェースの溶接を行っています。社長の万さんによると、溶接機はTIG溶接機2台で月産5000個程度、主にチタンドライバーの溶接専門で行っています。いわゆるヘッド外注加工屋という立場で、「町工場」的な佇まいでした。

⑭そして研磨へ

[caption id="attachment_47856" align="aligncenter" width="788"]研磨前のヘッド 研磨前のヘッド[/caption] そうして完成した研磨前のヘッド写真を示します。まだ肉盛(ビード)が残っていて、地肌も熱影響で変色していますね。その後、E:ヘッド研磨工場で研磨されます。 広東省東莞市中堂鎮にある諾文ゴルフ五金制品廠は、その後のE:ヘッド研磨工場兼G:仕上げ・塗装工場です。日系ゴルフ製造工場で実務経験のある社長の黄さんによると、従業員は30人で、月産2万個程度の製造キャパがあり、日本のメーカーの仕事も多いとのことです。 研磨工程は、まずヘッド溶接状態から余計な溶接ビードを回転式の研磨機で落としていきます。また、ヒール部分に残る鋳造の「湯口」の跡も落とします。その後、中研磨機でヘッド全体を研磨していき、クラウン形状、ネックのつながり、フェースのラインだしなどを行います。 黄さんによると、この工程は一番経験が必要で「日本のメーカーさんの要求は厳しいです。特にネック周りのラインとクラウン、フェースへのつながりです」と話していました。 また、工場ではドライバーだけでなく、アイアン、パターなども手掛けていました。 最後に「バフ掛け」と呼ばれる研磨を行い、金属面に光沢を出し、ピカピカに仕上げます。この段階で、「ミラー仕上げ」や「サテン仕上げ」、「ヘアライン仕上げ」などの最終仕上げや、サンドブラストでザラザラにしたりしてメーカーの要求通りに仕上げていきます。 こうして完成したピカピカのヘッドをメッキやイオンプレーティングで色付けしていきます。 次回はその工程を紹介します。どうぞお楽しみに。