矢野経済研究所は先頃「2017年版スポーツ産業白書」(調査期間2017年1~3月、対象企業スポーツ関連約450社)を発刊した。
2016年のゴルフ用品市場において最大の問題は、金額ベースの市場規模ではなく、数量ベースで各カテゴリーとも大幅縮小の見込みとなっている点だと指摘している。
以下、同書のゴルフ用品調査内容の要約。
2016年のゴルフ用品国内出荷金額は、対前年比98.9%の2563億8000万円と微減の見込み。ただし出荷数量は、ほぼ全てのカテゴリーで大幅なマイナスが見込まれる。算出した市場規模はメーカー出荷ベースのため、小売市場(実需)と100%リンクしないが、需要自体も大幅なマイナス基調で推移。
また、ほぼ全てのカテゴリーで平均単価が上昇しており、その主因は「マークダウン品の販売数量減」と「商品の値上げ」である。
小売市場においてマークダウン品の販売自体が鈍化したこと、つまり「価格が安い」だけでは既存ゴルファーの買い替え需要を刺激することができなくなったことも一因と分析した。
以下、品目ごとの商況。
ウッド
2016年のウッド国内出荷量は、数量ベースで175万本(対前年比91.6%)、金額ベースで429億円(同102.4%)の見込み。数量ベースの大幅な縮小はフェアウェイウッドの需要減退が一因。ドライバー市場はフェアウェイウッドに比べると健闘しているものの、全体的な需要量は前年、前々年を下回る。
2016年8月以降に発売された新製品群がいずれも好調で、なかでも2017年2月発売のキャロウェイ「エピック」は驚異的ともいえる初動を記録。ヒット商品に共通しているのは、「飛び」と「易しさ」である。
ユーティリティ
2016年のハイブリッドクラブ国内出荷量は、数量ベースで62万本(対前年比78.5%)、金額ベースで78億6000万円(同89.6%)と数量、金額共に大幅減の見込みだが、普及率が低く潜在的な需要はまだ多く残されているといえる。
アイアン
2016年のアイアン国内出荷量は、数量ベースで392万本(対前年比85.6%)、金額ベースで392億円(同91.8%)の見込みだが、飛距離に特化した商品群は好調な販売を記録。
これを定着させたのはヤマハが2014年に発売した「インプレス(リミックス)UD+2」。二代目を2016年秋に投入し好調な販売を記録している。この数年で「飛距離性能特化型アイアン市場」が確立された。
パター
2016年のパター国内出荷量は、数量ベースで60万本(対前年比92.3%)、金額ベースでは69億5000万円(同101.8%)の見込み。数量ベースの市場規模は2014年比90%程度の水準にまで落ち込んでいるが、金額ベースの市場規模は伸長。
「オデッセイ」が最大シェアを誇るが、それを追う「テーラーメイド」は当該市場の戦略を転換、積極的な新製品販売を取りやめたことからマークダウン品の構成比は24%程度の水準となった(2015年は35%)。
ラウンド用ゴルフボール
2016年のゴルフボール国内出荷量は、数量ベースで912万ダース(対前年比96.7%)、金額ベースで204億円(同99.5%)の見込み。当該市場も平均単価が上昇、価格帯別では1個あたり100円台から200円台(ダース2980円まで)の廉価帯の数量構成比が上昇傾向にある。
一方でプレミアムディスタンス市場は厳しい環境が続く。需要減を補うべく、主要メーカーからはウレタンカバーを採用した「第3のボール」が発売されているが、市場全体の需要や平均実売価格を大きく押し上げるまでのトレンドにはなっていない。
これ以外では、「非公認球」に人気が集まっており、国内ゴルファーの高年齢化を表している。
ゴルフシューズ
2016年のゴルフシューズ国内出荷量は、数量ベースで169万足(対前年比100.6%)、金額ベースでは121億6000万円(同98.6%)の見込み。今回集計したカテゴリーの中で、唯一平均単価下落が見込まれる結果となった。
2016年は、小売店サイドも過剰なマークダウン品の仕入れを抑制し、メーカーサイドも短サイクルでの商品投入とそれに伴う過剰生産を見直す動きが見られた。その他の動向としてダイヤル式の構成比は80%にまで上昇しているものの、市場に一服感が出てきている。
ゴルフウエア
2016年のゴルフウエア国内出荷額は、923億円(対前年比100.4%)の923億円と微増の見込み。当該市場がこの数年伸び悩んでいるのは異常気象の所為だけでない。
ゴルファーの購買動向や購買心理の変化に対応しきれていない面も影響しているものと考えられる。結果的には、小売市場におけるクリアランス販売が年々上昇しているようである。
以上、主な分野を紹介した。
同書では、「シニアゴルファーの減少が顕在化していると共に、ゴルファーはゴルフをしているがゴルフ用品の購入を控えているという現象がみえてくる。特に下半期はレジ通過数が減少し、小売市場がモノ重視に偏り過ぎていた点は否めない。売らんがための発想をコトへ転換することが必要」と警鐘を鳴らしている。