ミズノが3月16日に発売する新ブランド『GX』。ドライバー、FW、UT、アイアンそれぞれ1機種ずつがラインアップする。
このシリーズは、昨年9月に発売した『ミズノプロ』によるミズノ製品販売網再編で今後発売予定のない『JPX』のシリーズにとって変わるシリーズになる。
さらに、フィッティングを通じて販売する『ミズノプロ』に対して、一方でフィッティングは敷居が高くて簡単にクラブを購入したいというゴルファー層をターゲットに据えたのが『GX』となるという。
MPシリーズとの違い
『MP』シリーズのドライバーと違うところはロフト角調整機能「クイックスイッチ」が搭載されていないこと。
そして、ソールの2ヵ所にウエイトを配置して低スピン化とヘッドの慣性モーメント化を高めているところだろう。その結果として、『MPタイプ2』と比べて、反発係数が0.8以上の高初速エリアが17%拡大しているという。
もうひとつの特長がシャフトだろう。同社のカーボン事業では現在、トヨタの電気自動車「MIRAI」用高圧水素タンクやカシオ計算機の「G-SHOCK」時計バンドなどのカーボン部材に採用されている。
そのカーボン事業は、2014年7月には国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として採用され、その成果として「カーボンナンボチューブと炭素繊維の複合化を実現」している。
この技術を使って、軽量でありながら暴れない「MFUSION(エムフュージョン)」シャフトの開発に成功。今回の『GX』シリーズに搭載されている。
『GX』はどんなクラブなのか?
簡単にいえば
フィッティングをしない、
『MPタイプ』よりやさしく飛ぶ、そして
軽量でも暴れないシャフトが装着されたミズノの飛ぶクラブ。そんな特長の『GX」だが、開発に携わったゴルフ事業部の竹生一貴氏に『GX』の特長を詳しく聞いてみた。
GEW吉村がGXドライバーを打ってみた!
ところで、今回開催されたメディア試打会で、GEW吉村も『GX』のドライバーを試打してみた。
試打したスペックの順番は、ロフト角10.5度のフレックスR → ロフト角10.5度のフレックスSR → ロフト角9.5度のSフレックス。竹生氏の解説を聞いてみよう。
シャフトの重量ピッチは5g!?
実際、ヘッドスピード40m/sで246ヤードは飛んでいるといえるだろう。ただ、フレックスSRで頼りなさを少なからず感じて、フレックスSを試打するのだが、筆者にはフレックスSは厳しかった。弾道計測器でもフレックスSの場合、著しくヘッドスピードが減速する。その理由は?
選びやすい重量設定
通常、ドライバーのシャフトフレックス違いによるクラブ間の重量差は、2~3gといわれる。
それが『GX』の場合、シャフト重量によるクラブ総重量はRフレックス279g(シャフト重量39g)、SRフレックス284g(同44g)、Sフレックス289g(同49g)と、重量ピッチが5g。
打ってみると、その差が大きく分かり易い。つまり、選びやすいラインアップになっていることも、フィッティングを介さずに買うことができるクラブとしての『GX』の大きな特長といえるだろう。
飛ぶヘッド、4つの構造
その『GX』ドライバーだが、ヘッドには4つ特徴的構造が搭載されている。GEW吉村がHS40m/sで246ヤードも飛んだ理由が、どうやらヘッドの構造にもあるようだ。その構造を紹介しよう。
ソールに装着された2つのウエイト
このソールに装着されたウエイトは、ひとつのウエイト(6g)がフェースの近くに装着されており、ボールの吹け上がりを抑える要素がある。もうひとつのウエイト(6g)は、ソール後方に装着されていて、弾道を安定させる効果があるとか。その2つのウエイトで、重心が低くなり、スイートエリアが広くなるというわけだ。
ドライバーは重心の位置より高い部分でボールをインパクトすることで、無駄なスピン量を抑えると言われているから、ボールの余分な吹け上がりが抑えられるということになる。また、フェースより遠くのソールの後方に重量物を装着することで、ヘッドのスイートエリアは拡大すると言われていることから、ミスヒット時にも弾道の曲がりが少なく、結果として飛距離の増大に貢献するということになる。
強度としなやかさを両立したフェース素材
フェース素材にも飛ぶ理由があるようだ。素材は航空宇宙素材「ストロングフォージド・エリートチタン」(SP700)を採用している。この素材は、強靱さとしなやかさをあわせ持った特性で、一般的なチタン合金(6Al-4V)よりも10%強度が高いため、フェース周辺部に強度を持たせながら、薄肉設計が可能になっているという。
フェースを薄肉化すればボールの弾きなどは格段に向上するが、構造上、ボディとフェースの結合部分が弱くなることがあるという。それが「ストロングフォージド・エリートチタン」を採用する事で、その強度も保たれ、薄肉化設計が可能になって、トランポリン効果で飛距離アップが目指せる。
フェースをたわませる部分肉厚フェース
その「ストロングフォージド・エリートチタン」で作られたフェースの裏側は、部分的にフェースの厚さを変える設計を施している。フェースの中心部に厚みを持たせて質量を付加しながら、周辺部はフェース厚を薄く設計。これによってフェース部の強度を保ちながら、フェースのたわみ量を増加させている。
フェースのたわみ量が増加するというのは、先のトランポリン効果ともつながる部分で、適正で且つ、大きなたわみであれば、インパクト時にボールを跳ね返す、いわゆる反発性能が高くなるというわけだ。それによって飛距離アップにつながると考えると理解しやすいだろう。
ソールにデザインされた溝「ウエーブテクノロジー」
そして最後の構造がソールにデザインされている溝のようなデザイン「ウエーブテクノジー」だろう。ソールのフェース寄りに設計されている溝構造だが、これがボールがフェースにあった瞬間にヘッドの下部が押されて戻る、いわゆるたわみを生んでいる。そのたわみは、ヘッドに溝がなくても多少、起きうる現象だが、『GX』ドライバーには、そのたわみを増加させるために、溝を刻んでいる。特にこの溝はフェースセンターのたわみ量を増やすためにデザインされたもので、溝の無いドライバーと比較すると、フェースのたわみ量は約10%増加しているという。
これら4つの構造もGEW吉村がHS40m/sで246ヤード飛んだ理由だと思わざるを得ない。