PGAツアー完全生放送のゴルフネットワーク 前田社長が交渉の舞台裏語る
今年1月、ジュピターテレコム傘下のジュピターゴルフネットワーク(GN)は、米PGAツアーを完全生放送する権利を得た。タフな交渉を行ってきたのが、昨年6月にGNの社長に就任した前田鎮男氏だ。
放送インフラが多様化する中、スポーツコンテンツの価値は高騰中。DAZNはJリーグの放映権を10年2100億円、PGAツアーはディスカバリーが12年2200億円(米国内の中継除く)を投じたとされるなど、莫大な資金が必要になる。
GNは日本での放映権を、ディスカバリー・グループのディスカバリーゴルフと向き合う形で交渉してきた。ほかにNHKも中継するが、「当社の場合は4日間で一日平均4~5時間。PGAツアーの魅力を余すところなく中継して、ゴルフの魅力を伝えたい」(前田社長)
同氏は、GEW2月号のインタビューでそのあたりの詳細を次のように話している。
NHKとの違いをどうやって出すわけですか。
「まず、ワールドフィードという言い方をしますが、ベースの映像はNHKも当社も基本的には一緒です。これはPGAツアーのプロダクション機能が制作するものですが、ただし、画は同じだけど解説が違うし、スーパーやテロップなど差し込む素材や、我々が撮った現地映像もあるので、そのあたりでオリジナリティを出していきます」
中継に深みを出すにはインタビュアーの質も大事になる。年配のプロが先輩目線で一方的に話す光景をよく見ますが、あれでは選手の内面を引き出せない。
「それは、難しい質問ですねえ(苦笑)。まあ、地上波の番組が有名プロを起用して質問するのはアリだと思いますが、専門チャンネルとしてはご指摘のように、ギリギリの内面を引き出すことが凄く大事だと思います」
その意味で、前田さんの記憶に残るインタビューは?
「一昨年の全米プロですね。松山プロが最終日に崩れて優勝を逃したとき、プロキャディの杉澤さんを現地リポーターに起用してインタビューしたんです。すると、松山プロがボロボロ泣き崩れた。素晴らしいコメントを引き出したというよりも、無念が一気に表われたわけです。悔しい、辛い、という激しい想いが噴き出したんだと思いますね」
杉ちゃんの顔を見て内面が表出した。
「だと思うんです。この人(インタビュアー)は選手の気持ちをよくわかってる、だから心が開いてしまった、と」
前田社長は、このあたりの引き出し方にゴルフ専門チャンネルならではの価値を見出したいと考えている。以下、動画で語ってもらおう。
話は旧聞に属するが、タイガー・ウッズとフィル・ミケルソンの対決が話題となった「ザ・マッチ」は、SNSで事前に結果がわかり、米国では配信に関わるトラブルが起きるなど番外の話が注目された。このことは、コンテンツの「買い付け」の難しさを明かしており、今後の課題といえるかもしれない。
また、今年10月にPGAツアーの「ZOZO選手権」(千葉県、習志野CC)が開催される。GNが同大会の放映権を得るかどうかは未定だが、本場のトーナメントが上陸することで業界には賛否両論が渦巻いている。
「賛」は、日本のギャラリーがPGAツアーの迫力に触れることでゴルフ熱が高まることへの期待。一方の「否」は、これにより国内男子ツアーの人気が低迷して、トーナメントスポンサーが離れるのではないかとの懸念である。この点について前田社長はどのような見解をもっているのだろうか?