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ハンディキャップがゴルフの広がりを阻害している?

ニュース 松尾俊介

ゴルフのハンディキャップ・システムは、上級者とそうではない人が一緒にゲームを楽しむために考えられた。長い歴史もあり、このシステムをもとに倶楽部競技などが行われ、最近では世界共通で使える「スロープシステム」が一部で注目されている。

熟考されたシステムであり、随所に工夫のあとも伺える。だが、ゴルフの普及という観点に立った場合、ハンディキャップは有効に作用するだろうか。これが使われている現場を見ると、様々な問題点が見えてくる。

「ハンディは本当に必要なのか?」――。今回はこの点を読者の皆さんと一緒に考えてみたい。

まず、ハンディキャップの使用に際して重要なことは、これが公平に査定・算出されたものか否かだろう。ここに疑問を覚えるのは算定システムの問題ではなく、ゴルファーの資質によるところが大きいからだ。ハンディキャップは本来、すべてのラウンドのスコアを提出して初めて公平に機能するが、プレイヤーによっては、調子が悪い時のスコアを提出しないことがあり、公平性において不信感を招く。

ゴルファー心理からすると、少しでも良いハンディキャップを取得したいという気持ちや、一度得たハンディキャップを維持したいため、悪いスコアを提出せず、良いスコアだけを提出することが散見される。

その反対もある。コンペなどで上位になりたい、いい賞品をゲットしたいと思うがゆえに悪いスコアを中心に提出して、ハンディを多くしたい人もいる。

「誠実さ」がゴルフの前提とすれば、誠実ではない人が混在し、算出されたハンディキャップは、公平性が担保されているとは言い難い。そのため「ペリア」という簡易測定方式を多くのコンペが採用するのも頷ける。

ゴルフ倶楽部では、ハンディキャップの上位者をAクラス、下位者をBクラスに分けて競技会を行っているが、BクラスからAクラスに昇格することは名誉であり、反対にAからBに落ちることは不名誉という感覚も根付いている。実は、この感覚こそ「諸悪の根源」と思えるフシもある。この感覚を可視化することで、問題の根を紐解いてみよう。

そもそも、他の競技にハンディ・システムはなく、将棋で言えば「飛車角落ち」が非公式にあるぐらい。ゴルフはなぜ、そうなっているのだろう。

ハンディボードは学校の成績表

筆者が感じるゴルフの特異性は、上手ければ偉いという「階級社会」的な意識にあると思う。そのため、上級者があらゆる場面で発言力を発揮して、ゴルフ倶楽部の運営や競技会等における実権を握っていると想像される。上級者の「見えない力」が蔓延し、それが醸成する「威圧的な空気」が漂っているのだ。

そのような空気が障害となって、ゴルフの普及を阻害している。「ゴルフが上手いだけのことで、なぜ上から目線で人を見るのか?」

一般的に、上級者は保守的だ。競技の在り方、ハンディキャップの在り方、倶楽部ライフの在り方など、伝統的に受け継がれてきたものを「良し」として、変革を望まない人が多い。そして彼らは「ゴルフとはこういうもの」「こう在るべき」という考えを高圧的に押し付けるから、ビギナーやアベレージ層は不快に感じる。

そして、ハンディキャップがひとつでも上位であることが、目に見えない「階級制度」を助長させる。

これらは一体、どこからきているのだろう?

筆者の見立てはこうだ。そもそもゴルファーにはエリート意識があり、これと日本独自の「隠れた身分制度」が絡み合ったものではないか。日本のゴルフの黎明期から、ゴルフは上流階級の社交として導入され、スポーツという意識が希薄になっている。換言すれば、強い者、地位が高い者がすべてを決める、という考え方だ。

してみると、ゴルフ場のハンディキャップボードは学校の成績表を公に張り出しているようなものだろう。上位の人は優越感があり、下位の人は劣等感にさいなまれる。

世界のゴルフの潮流として、「スロープシステム」の普及がある。簡単に言えば、各コースの難易度とスコアを独自の計算式に当てはめ、世界中のどのコースでプレーしても「その日の順位」が正当に出せるというものだ。が、普及の足は速くはない。

その理由は、少なくともゴルフの普及を考えたとき、上級者が初心者に対してハンディを与える、それでゴルフを楽しんでもらうという考えがあり、筆者はこれを上級者の「奢り」だと思っている。「君は下手だからハンディをあげる」では、上から目線でビギナーを突き放しているようなものだ。

ゴルファーが楽しみ方を考える

スターティングホールで交わす挨拶の常套句に「今日は皆さんにご迷惑を掛けますが、どうぞよろしくお願いします」というのがある。このようなことを言わせてしまうところに、ゴルフの見えない壁がある。それが筆者の持論である。

この際、私は提言したい。ゴルフをスポーツとして捉えるならば、ハンディキャップ・システムは不要であると。そもそも、上級者に負荷を掛けなければ、如何に相手にハンディを付与しても、上級者のほうが心理的にも技術的にも圧倒的に有利なのだ。では、どうすればいいか?

上級者が下位のゴルファーにハンディキャップを与えるのではなく、下位の者が上級者と対等にゲームを楽しむために、ティーグラウンドの選択肢を増やし、スクラッチまたはマッチプレイでゲームをすべきだと思う。主体はあくまでアベレージ層で、むしろ上級者に負荷を掛ける状況設定が公平だと考える。

仮にストロークプレイで競技をするなら、幾つかのカテゴリーを作り、すべてスクラッチでプレイした方がよほど公平だし、ゲームとしても面白くなるだろう。そして、負ければ悔しいから上達のために練習をする。このような姿がスポーツの原点だと思う。

競技団体は、ゴルフの普及にはすべてのゴルファーがハンディキャップを取得する必要があると懸命に唱えているが、そもそも「競技層」が1割程度の現状で、ハンディの取得が本当に有効なのか。一度立ち止まって、冷静に考える必要があろう。

ゴルフというゲームの楽しみ方、新しいプレイスタイルの在り方は、競技団体が決めるのではなく、ゴルファー自身が発案すべきだと思う。そのための話し合いを活発化するために、ゴルフ全体の普及を考える新たな団体の創設が急務であろう。


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松尾俊介

松尾俊介

1949年12月23日生れ  神奈川県出身
東海大学工学部航空宇宙学科卒、在学中は体育会ゴルフ部副将および関東学生ゴルフ連盟の連盟委員を兼務。パイロット志望から一転してゴルフ用品販売業務に携わる。ゴルフ工房を主宰しながら1988年からフリーランスゴルフライターとしても活動。国内外合わせて25のゴルフクラブメーカを取材し、記事として各誌に掲載する。「良いゴルフクラブとは何か」をテーマに取材活動を続ける。1989年米国キャロウェイゴルフの取材と掲載記事をきっかけに親交を深める。

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