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過去30年の視野で見たPGAショーの衰退とジャパンゴルフフェアに求められるもの

ニュース 松尾俊介

今年も1月22日から米国フロリダ州オーランドでPGAショーが開催され、3月にはジャパンゴルフフェアが横浜で開催される。PGAショーは今年66回目を数えるが、筆者が初めて取材で訪れたのは1989年のこと。あれから30年の月日が経ったことになる。

記者として9回、その後キャロウェイに転職したため、メーカーの人間として16回参加したことになるのだが、そのPGAショーは今、大きな転換期を迎えているように見える。

一つは出展企業数と来場者数がピーク時から比べて大きく減少している点である。ショーを主催するリードエキシビジョン(リード社)は、次の数字を発表している。ゴルフ関係者の入場は4万人、全米50州と世界89カ国、1000以上の参加企業と200以上の新規参加企業に加え、7500名にものぼるPGAメンバー、という内容だ。

お気づきだろうか。どれも抽象的で、リアルな数字は一切発表されていない。しかも、この数字は過去数年ほとんど変わっておらず、ショーの苦しい台所事情が垣間見える。

筆者の実感としては、入場者数は確実に減少傾向で、ゴルフクラブメーカーの展示スペースは以前に比べ大きく縮小している。それをカバーするための施策として試打会場の設置などで埋めてはいるが、それでも空間が目立つほどである。

1990年代前半は、PGAショーへの参加希望企業が多く、広大なコンベンションセンターでも収まりがつかず、近隣のホテルなどで臨時のブースを設置するほどであった。特に旧ピーボディホテルやローゼンホテルの宴会場は、新規メーカーや抽選に漏れた企業が争って予約、特設の展示受注会が行われた。

当然、夜のレストランは予約を取るのが困難で、ホテルのエントランスはタクシーや人ごみで溢れ返っていた。

PGAショーには最先端の情報が集まり、新製品を直接手にとって見ることができる。世界中のゴルフ関係者が、遠くオーランドまで時間と経費をかけて足を運んでいた。

この状況に変化が起こってきたのは1990年代後半からである。2000年代に入るとショーの運営はPGAから民間のリード社に移り、これが縮小に弾みをつけた印象が強い。

ただ、一連の変化は過去30年というスパンで見てわかるため、近年の様子しか知らない来場者は、日本のゴルフフェアと比べて規模感に圧倒されるかもしれない。

なぜ縮小を来たしたのか? それは、PGAショーの存在が問われているからにほかならない。

PGAショーの成り立ちを見る

そもそもなぜ、PGAショーは1月後半にフロリダのオーランドで開催されるのか。それは次の理由による。まず、米国の半分近くは冬季ゴルフができない地域であること。そして、オーランドはディズニーワールドやユニバーサルスタジオ、シーワールドなどレジャー施設が充実しているだけでなく、ゴルフ場も数多い。

そのためPGA会員である来場者は家族同伴でこの地を訪れ、一緒に休暇を楽しめる。むろん、シーズンに先駆けて年間のビジネスプランを立てるにも最適な時期だった。

その一方、1年を通じてゴルフができるグリーンベルト地域(カリフォルニア、アリゾナ、テキサス、ニューメキシコ、フロリダなど)では、冬季の来場者が増えることから繁忙期となり、オーランドには忙しくて参加できないという事情から、サンディエゴで夏のPGAショーを別途開催していたことがある。現在、夏のショーはラスベガスに会場を移して年2回、ゴルフアパレルを中心に展開している。

PGAショーか衰退した4つの理由


この30年間で特筆すべき大きな変化は、2000年を境に強化されはじめた用品用具のルール規制だろう。これにより画期的な製品が出にくくなり、資本力がある大手しかクラブ開発に資金を投入できなくなった。メーカーのサバイバルが急速に進み、クラブメーカーの数も激減した。

日本のメーカーは80年代、バブル景気へと向かう熱気をテコに北米進出を目論んでいた。PGAショーにも意欲的に出展したが、期待したほどの成果は残せなかった。その理由は明快である。日本のメーカーは良いパターとウェッジを作れないからだ。

この2つのクラブはスコアメイクに大きな影響力を持ち、ゴルフのゲーム性をよく理解していないと良いものができない。価格もドライバーに比べて半分以下。ビジネス的に魅力がないと考えた日本のメーカーは、クラブ作りの大切な部分を省略してきた。

良いウェッジを作ることができれば、アイアンの開発はその延長上にあればよく、良いアイアンができれば、その延長上にウッドが来る。日本のメーカーはその逆を歩んできたため、セットとしての流れが見えない。一方のタイトリスト、キャロウェイ、ピン、テーラーメイドなどは優れたパターとウェッジを作り続けている。この差は大きいのだ。

話を元に戻そう。強力な新製品をなかなか出せなくなると、クラブメーカーは販売のアドバンテージを得るために新製品の発売時期を前倒しする。第1四半期からスタートダッシュをかけて、他社の機先を制する戦略が主流になる。となると1月末の発表、受注では遅いのだ。つまり1月末に開催されるPGAショーは、展示受注会という本来の目的を喪失した。

これに拍車を掛けたのがインターネットの普及である。今ではスマホのカメラを利用して、個人がメディアとして情報を瞬時に発信できる。そうなると誰よりも早く新製品情報が欲しい、新製品を購入したい、というゴルファーの欲求が強くなる。

そこでメーカーは、この「欲求」を利用しようと戦略を変えてきた。発売前に情報を意図的にリークしたり、トーナメントで選手に新製品をいち早く使用させる。

これによって新製品情報は、PGAショーの開催前に広く知れわたることになった。ワクワク感がなくなり、PGAショーを訪れる価値が薄れるのも当然だろう。

こうなると、メーカーの出展意欲も萎えてくる。以前はショーの開催前に全米からセールス担当者をフロリダに集め、真剣な会議が行われた。

各種バイヤーとの関係を強化できる場でもあるため、資金を投じる意味があった。同時に、会期中の営業活動を通じて年間の売り上げ予測を立てられるメリットもあった。

しかし、今はどうだろうか。先述の理由から、社員を何十人もオーランドに派遣するメリット・デメリットを考えると、出展に二の足を踏むのは当然だろう。

実は今回、PGAショーの主役であり続けたテーラーメイドが出展を取りやめている。同社は毎年3億円ともいわれる経費をPGAショーに投じてきたが、大きな決断を下したことになる。

変化するものが生き残る

このままで良いのだろうか? 確かにゴルフ人口は世界的に見れば減少傾向にあるのだが、ゴルフがもたらす経済効果は他のスポーツ産業の比ではないほど大きなものがある。

ならば、毎年同じような展開を続けるのではなく、やり方、開催時期などを根本から見直し、世界最大のゴルフビジネスショーとして再構築する時期に来ていると強く思う。

同じことはジャパンゴルフフェアにも言える。このイベントは2年前、開催時期を2月から3月に、また、会場も東京ビッグサイトからパシフィコ横浜へ移転している。

新製品は発売済みだから、この会場で発表するものは何もない。何を見たら良いのだろうか?何を見せたら良いのだろうか? それは、誰のために行うものなのか? 今こそ、ゴルフショーの開催意義を関係者が知恵を出し合い見出す必要がある。

基本は「誰のためのショーなのか」「何のために開催するのか」である。対象や目的が明確になれば、開催時期や会場の選定、ショーの内容が明確になるからだ。

SNSやインターネットの威力は凄く、誰もがメディアとして活動できる時代。情報の価値が大きく変化しており、流通にも一大変化が起こり始めている。小売業の価値が問われる中、顧客が唯一求めるものは興味ある商品だけなのだ。

PGAショーもジャパンゴルフフェアも、顧客がワクワクして興味を持つものを提供できなければ存在価値は小さくなる。

今、まさにそれが始まっていると思うのだ。

変化に対応できるものに変えていかなければ、最初は参加企業が徐々に撤退を始め、それに伴って来場者も減るという悪循環が待ち受けている。

次の5年先、10年先、そして30年先を見据えた時、時代にふさわしいショーのあり方を様々な視点で再検討すべきだろう。数年先まで会場を押さえているから変更は難しい、などと言っていると、5年先には存在すら難しくなっているかもしれない。今回、PGAショーの30年を改めて振り返ってみて、変化の大きさに愕然とした。時代の変化のスピードは、想像以上に速いのである。

“最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるのでもない。
唯一生き残ることができるものは、変化できるものである“
チャールス・ダーウィン


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松尾俊介

松尾俊介

1949年12月23日生れ  神奈川県出身
東海大学工学部航空宇宙学科卒、在学中は体育会ゴルフ部副将および関東学生ゴルフ連盟の連盟委員を兼務。パイロット志望から一転してゴルフ用品販売業務に携わる。ゴルフ工房を主宰しながら1988年からフリーランスゴルフライターとしても活動。国内外合わせて25のゴルフクラブメーカを取材し、記事として各誌に掲載する。「良いゴルフクラブとは何か」をテーマに取材活動を続ける。1989年米国キャロウェイゴルフの取材と掲載記事をきっかけに親交を深める。

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