パート主婦から支配人へ 「女性目線」の ゴルフ練習場改革

パート主婦から支配人へ 「女性目線」の ゴルフ練習場改革
「常に他業界にアンテナを張りヒントを得て、他の練習場がやっていない取り組みとサービスを提供する」 「接客が自慢できるゴルフ練習場、横浜No.1をスタッフ全員で目指す」――。 これは、横浜市郊外にあるゴルフ練習場「第百ゴルフクラブ」の運営コンセプト。 5年計画の運営改革はこの2月に3年が経過した。月間の女性来場率12%は、当初に比べて約5%アップの結果を見ている。 私にとって、乗り過ごすところだった思いがけない人生の始まりは2016年2月。その3年前に清掃パートスタッフとして入社したが、一転、ゴルフ練習場の支配人を任されることとなった。 この時、私の人生は大きく変わった。ゴルフ業界ではまだ珍しいといわれる練習場の女性支配人。ん? 珍しいの? 他業界では珍しくないよ...。 業界知らずのアラフィフ女性に突如の重責。今振り返ると、この時すでに私は恐ろしいほど前を向いていた。私がやるしかない! 緩やかな時間が流れていた練習場に、活気を取り戻すために。2階、131打席の場内を忙しく歩く日々が始まる。

練習場はサービス業

女性のお客様は、フラッグの色を変えただけですぐに反応してくださるほど敏感だ。清潔な場内、少し気が利いたセンスあるキレイさや可愛らしさ。これらがクルクル変わると、なお良い。女性客の増加で場内も華やいでくる。 お客様が話しかけやすい雰囲気と微笑みを絶やさず、しかし、時には毅然とイエス・ノーを言うことも大事だ。 たとえば「30年来てやっているんだ!サービス悪くなったぞ!」とのクレームに対しては「サービスのタイミングは、どのお客様にも公平にご案内しています」。また、愛煙家のお客様から「喫煙場所を元に戻せ!」と言われても、「喫煙場所は移動させていただきましたが、愛煙家のお客様も大事なお客様です」といった具合に、ひるまず主張する。 私がまず手がけたことは、プロ、設備管理も含め全スタッフの接客意識改革だった。 「ゴルフ練習場は、接客サービス業である」と伝え続け、その目的や具体的な方法もブレずに、セクションや年齢、立場に関係なく約60名のスタッフ全員に伝え続けた。 当時の目的は練習場の存続。同時に、40年経過していたハード面の一部リニューアル計画も立て始めたが、とにかく時間がなかった。 わずか1年の猶予期間で、テント、打席カーペット全面張替、ICカード料金システム導入、送球ライン、ボールベンダー全取り換えなど、真夏に休業10日間とその前後数か月間で順次打席クローズをしながらこなす必要があった。 「私達は変わります!みんなついてきて!」と戦いが始まった。

「思い込み物」は迷わず捨てる

特に、場内のクリンリネスの徹底。 いつか使えるかも、と取っておいた思い込み物は迷わず捨てる。節約の間違いを訂正し、必要な節約を徹底する。 適材適所のスタッフ配置。シフトの修正。場内掲示ポスターは真っ直ぐに張る。「手間がかかる」という発言は禁止。そして、なんといっても公平な接客対応。 来る日も来る日も、同じことを伝え続けて共有。新米女性支配人は率先垂範を基本とし、場内を走り回った。歩数計は2万歩を下らなかった。 方々から反発の矢が飛んでくるが、仕方ない。できることは山ほどあるし、深く勇気づけられる仲間もいる。『ホスピタリティ溢れる練習場を一緒に作るよ!』 ※写真の左が旧打席、右がリニューアル後の新打席です。
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ用品界についてはこちら