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パターの進化は止まらない 「オデッセイ」の斬新な挑戦を独占取材

ニュース 松尾俊介
STROKE LABの開発のバックグランドを説明するオースティ・ローリンソン

クラブ開発はルールという規制の枠が決められていて、画期的なものはできないのでは? と見られている。しかし、スコアの40%程度を占めるパッティングに使われるパターは、まだまだ開発の自由度が大きく、開発の余地は十分残されている。

パターのトップブランド『オデッセイ』はこれまで、『O-WORKS, STROKE LAB, WHITE HOT Pro, EXO, RED BALL, TOULON』などのシリーズを展開してきたが、今年は全て新しいコンセプトを持った『STROKE LAB』に統一する。

STROKE LAB

従来は様々なタイプのゴルファーに広い選択肢を与え、最適パターを選んでもらうという姿勢だったが、大きな方針転換といえる。なぜなのか?

その真意が知りたくて、オデッセイパターの開発責任者オースティ・ローリンソン氏にメールを送り、取材の要請をした。彼とは旧知の仲であり、快く依頼を受け入れてくれた。2019年1月18日、5年ぶりにキャロウェイゴルフ本社を訪ね、ローリンソ氏に取材。以下がその取材のやりとりである。

松尾:オデッセイは今まで色々なタイプを用意してゴルフアーの選択肢を広げたのに、今回『STROKE LAB』一本に絞って展開することにしたのはなぜですか?

オースティ・ローリンソン:とても良い質問ですね。あなたのためにプレゼン資料を作成しました。まず、 開発のバックグランドから説明しましょう。グラフを見てください。1975年からパターヘッドの重量は少しずつ重く変化しています。

パターヘッド重量の変化
1975年:295g、1999年:325g、2012年:360g、2018年:360g

この理由は、グリーンが年々速くなってきたからで、速いグリーンになると距離感が大切な要素となるために、ストロークのテンポを少しゆっくりしたいのです。
そのような状況でも安定したストロークにするにはヘッド重量を重くして、ストローク中のブレを少なくしたかった。ヘッドを重くすると当然クラブ重量も重く変化します。次の表を見ていただければ一目瞭然です。

パタークラブ重量の変化
1975年:473g、1999年:508g、2012年:535g、2018年:527g

松尾:2015年から軽くなったのはなぜですか?

オースティ・ローリンソン:数年前から採用したスーパーストロークのパターグリップの影響です。グリ ップが軽量化された分、パター重量は軽くなりました。

松尾:当然、パターの操作性の目安となるスウィングウェイトにも変化がでますね。

オースティ・ローリンソン:そうです。スウィングウェイトもこのように変化してきました。

スウィングウェイトの変化
1975年:C-6、1999年:D-8、2012年:E-5、2018年:F-2

軽いグリップに重いヘッド、そして大きなスウィングウェイト、Fのレベルに なるとパターをコントロールするには重すぎる数値でした。
それに重くなることでシャフト硬度も柔らかく変化してきました。シャフトが柔らかいとヘッドの挙動に影響を与えます。できるだけしならない硬いシャフトがパターには必要なのです。

松尾:シャフト硬度の変化はどのような具合になっていたのですか?

オースティ・ローリンソン:これも表を見ていただければわかるでしょう。

シャフト硬度の変化
1975年:385cpm、1999年:335cpm、2018年:320cpm

シャフトはヘッド重量に反比例して柔らかく変化しています。そこで『TANK』と命名したヘッド重量も重くシャフトも硬いパターを開発してみました。
オデッセイ tank
このパターのスペックは、ヘッドの重量:375g、シャフト重量:135g、グリップ重量:113g、総重量:645g、シャフトの硬さ:380cpm、SW:F-3になります。許容範囲の広いO-WORKSパターと比較してもらうとその特異性は一目で分かります。
O-WORKSのスペックは、ヘッド:355g、シャフト重量:117g、グリップ重量:77g、総重量:549g、シャフトの硬さ:325cpm、SW:E-5です。

『TANKパター』は全ての人に合うパターではありませんが、長尺パターのメリットを具現化したものです。そのためにロングパットの距離コントロールが難しい部分がありました。開発においての次の目標は、O-WORKSの重さでシャフトの硬さはTANKというものでした。

松尾:この課題を解決するものとして初代の『STROKE LAB』を作ったのですね。

オースティ・ローリンソン:そうです。シャフトをより軽量化することでヘッドとグリップに重量を配分することを狙ったものです。スペックは、ヘッド重量:365g、シャフト重量:84g、グリップ重量:85g、総重量:534g、シャフトの硬さ:320cpm
オデッセイ stroke lab

ただ、ヘッドの重量とグリップ重量は重くすることができたのですが、シャフトを軽くすることでシャフト強度を出すために、シャフトのバット系が太くなり、その分シャフトの手元が硬くなる反面、先端の方が柔らかくなる課題は残りました。また、クラブ全体の重さは大きな変化がないため、もう少し重くする必要もありました。

松尾:これらの課題をクリアするためにどのような技術を取り入れて改善したのですか?

オースティ・ローリンソン:シャフトをより軽く、そして硬さもより硬くするためにTru-Temperの『Bi-Matrix』シャフトの技術(スチールシャフトとカーボンのハイブリッド)をパター用シャフトに応用したのです。

シャフト重量:130g→87g、シャフト硬さ:330cpm→360cpm
シャフトを約40g軽量化できたので、それをヘッドとグリップに配分し、最適なスウィングウェイトを得るために、シャフトのバット部分にインナーウェイトを装着してパター全体の重さ、狙ったシャフトの硬さを得ることができました。

それに、今回はマレットタイプとブレードタイプでヘッドの重さを変えて、その分、インナーウェイトも重さを変え最適なバランスを確保しています。

最適なバランス重量の確保
ヘッド重量 – マレット:365g、ブレード:360g
グリップ重量 – マレット:75g+インナーウェイト30g、 ブレード:65g+インナーウェイト40g
スウィングウェイト – マレット:E-5、ブレード:D-9
シャフトをハイブリッドにすることで、シャフトの硬さを軽くて硬くすることができ、その結果、インパクト時のボール初速がアップするのと同時にシャフトの不要な動きを抑えることができました。

また、ヘッドの重さを10g重くしてもインナーウェイトを装着することで、パターのバランスポイントがグリップ寄りにシフトし、パターコントロールがよりしやすく、ストロークの再現性が高まったのです。

松尾:今回、モデルを10種類に絞った意図はどこにあるのですか?

オースティ・ローリンソン:新しい『STROKE LAB』はマレットタイプが6種類、ブレードタイプが4種類ですが、マレットタイプには2ベンドシャフト、ショートスラントネック、ストレートシャフトを用意し、ブレードタイプにはクランクネック、ショートスラントを用意しているので、選択肢はかなり広がっています。その中からローテーションの大小やストロークに合わせたものを選べます。

松尾:グリップも太いものとそうでないもの2タイプを用意していますが、その狙いはどこにあるのですか?

オースティ・ローリンソン:太いグリップはヘッドローテーションをあまりしないゴルファー、またはさせたくないゴルファー向けであるのに対して、少し細いタイプはローテーションをしているゴルファーに向けてデザインしてあります。

松尾:『STROKE LAB』に統一した理由がわかりました。それで『TOULON』『EXO』『RED BALL』にもBI-MATRIXシャフトを採用して『STROKE LAB』コンセプトを取り入れて統一化したことも理解できました。先頃発表したオデッセイ独自のパターフィッティングシステムについて教えてください。

オースティ・ローリンソン:計測器の上にボールを乗せて打つものですが、これで分かることはインパクト時のヘッドの動きやストロークの傾向などです。比較的短時間でパターフィッティングができ、ゴルフアーに適したパターを選べるというものです。

松尾:こうして開発のバックグランドを聞いてみると、パターに関してはまだまだ開発の余地があるように感じました。その辺はどう見ていますか?

オースティ・ローリンソン:パターに関してはドライバーと違って開発のスペースはかなりあります。ヘッド素材一つを取ってもまだまだトライしたいものが数多くあります。ヘッドデザインもそうですね。そういった視点で見るとパター開発は無限と言ってもいいかもしれません。

「緊張感」はロボットで再現できない

ミケルソン用に作られた練習用グリーン2度、3度、4度の傾斜が付けられている
ミケルソン用に作られた練習用グリーン2度、3度、4度の傾斜が付けられている

この後、ERCパフォーマンスセンターに行って実験場所を見学したが、パターフィールドも大きく改造されていた。

一つは実際のコースのグリーンと同じようにアンジュレーションをつけたもの、もう一つはセントアンドリュースのグリーンを再現していた。

より実践に近い状況でパターのあり方を見られるようにという工夫で、圧巻はフィル・ミケルソンのリクエストによって作られた約3平米の人工芝のグリーンだった。
これらは2度、3度、4度と角度をつけて設置してあり、それぞれのグリーンの中央と四隅には通常のカップより小さなカップが切られていて、いかなる傾斜でも練習できるものまで用意されていた。

パター開発はロボットテストを行わないというが、その理由はキャロウェイゴルフには様々なゴルファーがいて、その人たちにテストをしてもらうことでかなりのことができること、パターには上級者用、アベレージゴルファー用などレベルによって区分けをする必要がない点も面白い。

『STROKE LAB』パターを再度見ると2つの気づきがあった。一つはヘッドのコスメの部分で全てが銀色と黒で統一されている点。
以前のモデルで『VERSA』というシリーズがあり、ヘッドをより目標に正確にセットアップできるために白と黒のラインを強調させて作られていたが、これをよりシンプルにデザインすることで、落ち着いた感じに仕上げられている。この点は進化を感じた部分だった。

パッティング、特にショートパットほど精神的な緊張感が高まるものであり、ロボットでは表現できない。そのような緊張下においても冷静にセットアップでき、自然な形でストロークできるような配慮がデザインや色使いにもなされている。

もう一つはマレットタイプの一つに『TUTTLE』という名前を復活させたこと。この名前はキャロウェイゴルフの名前でパターを作っていた当時のもので、時代は1994年ビッグ・バーサヘヴェンウッドを発売した時のことだ。

ニューヨークでプロショップを経営していたTUTTLE氏がイリー・キャロウェイに「このショートウッドのヘッドと同じ形でパターを作ってみたらどうだ」とリクエストをした。

キャロウェイゴルフのクラブを積極的に販売してくれたショップオーナーの言葉だが、彼は癌に侵されて余命はあまりないと聞かされていた。

そこでイリー・キャロウェイはオースティに命じてヘヴェンウッドと同じ形のパターを作るように命じ、彼の名前をその功績とともに残すことを意図した。

その後、S2H2コンセプトの洗練されたマレット型が発表され、その名前はTUTTLEとソールに刻印されていた。そのパターを使用してジョニー・ミラーがペプルビーチ・プロアマで復活優勝を遂げたことはちょっとしたSTORYである。

その名前の復活には、明確な意図があったに違いないと想像するが、この部分を聞きそびれたことは記者として不覚だったと反省している。

キャロウェイゴルフがオデッセイを買収した1997年、キャロウェイゴルフのパターデザインの中心人物であったオースティはオデッセイに出向を命じられた。

彼とすれば、キャロウェイゴルフのブランドで良いパターを開発したかったに違いなかったろう。

新しいマレットタイプのヘッドに『TUTTLE』と入れたオースティの気持ちを想像するだけで、楽しくなる。

STROKE LABの開発のバックグランドを説明するオースティ・ローリンソン
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松尾俊介

松尾俊介

1949年12月23日生れ  神奈川県出身
東海大学工学部航空宇宙学科卒、在学中は体育会ゴルフ部副将および関東学生ゴルフ連盟の連盟委員を兼務。パイロット志望から一転してゴルフ用品販売業務に携わる。ゴルフ工房を主宰しながら1988年からフリーランスゴルフライターとしても活動。国内外合わせて25のゴルフクラブメーカを取材し、記事として各誌に掲載する。「良いゴルフクラブとは何か」をテーマに取材活動を続ける。1989年米国キャロウェイゴルフの取材と掲載記事をきっかけに親交を深める。

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