多くの人は変化を嫌い、不安に思う。未来に安定があるのならタイムマシンで覗いてみたいが、変化には成長という「果実」もある。
わたしは横浜市郊外の練習場「第百ゴルフクラブ」で支配人を務めている。今年掲げた人事理念は「運営方針と自分の人生理念を結び付け、出逢いに感謝し、自身の成長と第百ゴルフの成長を共に達成できる人材の育成」――。
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この方針に則って、全スタッフ50名が時代に合わせた創意工夫を行っている。「変化は続くよ!でも怖がらなくて大丈夫」。わたしはハッキリと言いきる強さを見せて、具体的に指導している。
変化には大小様々あるが、今の形をほんの少し変えるだけで十分な成果を得られるものもある。
たとえば、打席清掃。移動ワゴンに清掃道具を一式載せて、約120mの細長い打席を2時間かけて一周していた従来の「当たり前」を、仕事内容とシフト時間を細分化し、タイムスケジュールに沿って動く形に変えた。
具体的には、打席拭き清掃、おしぼり補充、ゴミ収集、通路清掃などその都度バックヤードとの往復を何度も行ったり来たり。真夏のお客様の健康チェックまでも多くできる回数が増えた。一度に済ませることをしないので1人の作業効率は悪いと思われるかもしれないが、長い打席通路でスタッフの存在をアピールでき、お客様のお声もキャッチしやすくなる。
挨拶を交わす機会もグンと増えた。勤務時間を3.5時間と短くし、メリハリあるシフトで「スタッフがよく動く」配置とし、人件費も削減できた。
練習場には「プロ室」がある。当施設では5名のレッスンプロが働いているが、約3坪のプロ室で休憩をとったり雑談を交わす。その掃除も自分たちで行なう「当たり前」も始めた。
これにより意識に変化が生じ、打席通路に落ちているゴミを拾うようになった。誰もゴミをまたがないし、残置カゴも自ら片付けてくれる。クリーンスタッフだけの仕事ではない。
これ以外ではスクールシステムの変更もある。従来は日程、時間、内容を施設側がプログラムしていたが、毎回お客様が選べる形に変更。具体的には①週に66コマ設置の中から月に何回でも受講可、②いつでも入会OK、③プロも毎回選べるなど。これによりに1年で生徒数が130人増える結果をもたらした。
意識が受け身のレッスンプロは、当初大反対していたが、今では自分のスキルをアピールしてお客様に選んでもらう前向きな姿勢に変わった。大きな変化に理解をしてくれ感謝している。
まだある。わたしは以前から5千円、1万円以上の高額チャージにだけ10%、15%といったプレミアム(ボール代プレゼント)を付与することに疑問を感じていた。そのような過去の「当たり前」を廃止して、利用料金に対して全員にポイントを付与する料金システムに変更。近所のスーパーを見習ったケースだ。
これにより、1万円チャージを敬遠する若年層ゴルファーが増員するという結果を得た。学生バイトには「就活に役立つ接客や仕事観」を教えている。
今年も2名の学生が第百ゴルフを卒業し、社会人として巣立つ春を迎えた。 実は、わたしにもチャレンジの機会が巡ってきた。3月のジャパンゴルフフェアで「市場活性化セミナー」のパネリストに選ばれたのだ。主題はレディス市場の創造――。まったく予想外の出来事に、自分でも驚いている。
第百ゴルフクラブ公式サイト
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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