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ゴルフは社交か、スポーツか? それともレジャー?

ニュース 松尾俊介
ゴルフは社交か、スポーツか? それともレジャー?

ゴルフは社交か? それともスポーツ? レジャーなのか? という問いに対して、どう答えたら良いのでしょうか。立場によってその答えは異なります。なぜなら、全てを内包しているのがゴルフだからです。

そして、この問いには現在、日本のゴルフ界が抱えている大きな問題も存在しているのです。特にゴルフ場が、です。

ゴルフ場はこの部分を曖昧にしている、いや、改革したくてもできないことから混乱が起こり始め、プレイ人口が減少し始めているのです。少なくとも筆者にはそう思えます。

日本のゴルフ界がより発展していくには、ゴルフ場が大きく変わっていくことが必要で、今まさにその分岐点に差し掛かっているのです。

「社交場」として発展した日本のゴルフ

「社交場」として発展した日本のゴルフ

社会人になってゴルフを始めた人が「もっと早くからゴルフを始めていればよかった」という言葉をよく発します。仕事の中で付き合いの一環としてゴルフを始めた人は、ゴルフの持つ様々なメリットに気がつくからです。

1日6時間近くも一緒にプレイをして、その95%くらいは話をしたり、相手のショットや態度を見ることができます。その人の性格や考え方のかなり深いところまで知ることができるため、ビジネス上、親睦を深めるには最高のコミュケーションツールがゴルフだからです。

この利点に気がついた人が「もっと早くからゴルフをやっておけばよかった」という言葉を発します。ゴルフを社交として見ると、現在のゴルフ場のシステムは社交としてのゴルフにマッチしていることがよくわかります。ジャケット着用やドレスコードの励行などは社交場のマナーのひとつだからです。

ここではゴルフの腕前は上手に越したことはありませんが、常に90台のスコアでプレイできる実力があれば、ショットに余裕ができ、会話を楽しむ時間も増え、プレイする相手に自分自身を理解してもらうには十分でしょう。

「社交場」として発展した日本のゴルフ

英国スタイルを導入して始まった日本のゴルフは、社交場としてのゴルフコースを作り、社交としてのゴルフを発展させてきたのです。歴史ある日本のゴルフコースは、そのような目的で作られたと言っても過言ではありません。

ゴルフは他の球技と違って相手の弱点を攻めて勝負を決める、というゲームではなく、自然の中でゴルフ場というフィールドを使ってゲームをするものです。だから海岸と陸地の間(双方をリンクしている場所)にある、農耕地には不向きな場所をゴルフコースにして会話とゲームを楽しむことにし、そのような場所にあるゴルフコースをリンクスと称したのです。

プレイも大事ですが、もっと大事なことは親睦なので、気のあった仲間同士が倶楽部を作りそこに集まってワイワイガヤガヤと話をし、時にはビールやスコッチを飲みながら時を過ごしたのです。倶楽部ハウスはそのような場所で、社交場として重用されました。

ビジネスで大切な人をゴルフ場に連れ出すことは、仲間に紹介したい人物であること、もっと親しくなりたいという願望の表れでもあります。

このような世界に「自分も仲間として入りたい」と考えると、どのような振る舞いをゴルフですべきものなのか、会話の内容はどのようなことが求められるのか、教養と品位も必要になってきます。これらはゴルフを通じて身につけるものではなく、小さい時から学びや生活の中で様々な経験を積みながら身につけていくものです。

そのような人たちが行うゴルフは小さな仕草や会話、そして相手を敬う気持ちが自然にプレイに反映されているのです。グッドゴルファーとはそのような人を指すのだと思います。

「同じ場所」だから混乱を招く

「同じ場所」だから混乱を招く

一方、スポーツとしてのゴルフもとても魅力があります。競技としてみればゴルフクラブという道具を使いこなし、ボールをコントロールしながらグリーンに乗せ、ボールを転がしカップインして一つのユニットが終了となります。

通常はこれを18回行ってゴルフというゲームが成立しますが、プロの試合や日本選手権レベルの試合では4日間72ホールも掛けて決着をつける、純然たるスポーツなのです。人としての技量、精神力、さらに4日間には好天も悪天候も混在するため、それを生き抜いた者が覇者となります。他のスポーツは数十秒、数分、数時間で活着がつくのですが、ゴルフはスポーツの中でも全く異なる競技なのです。

競技者はアスリートであり、他のスポーツと同じように心身を鍛え、技術を身につけた者が競い合います。知的な会話や品性はあるに越したことはありませんが、スポーツである以上良いスコアを出した者が最終的には優れたゴルファーなのです。

スポーツとしてのゴルフも先述の「社交場」と同じフィールドを使用します。筆者は、実はこのことが「社交かスポーツか?」の議論が生じる一因ではないかと見ています。

「同じ場所」だから混乱を招く

競技者がボールパークに競技をしに行く時、どのような出で立ちで行くのでしょうか? 競技用のウェアを身につけて、時にはユニフォームを着用して、もしかしたらリラックスしたカジュアルな格好で競技場に入り、競技用ウェアに着替えるはずです。

スパイクやシューズを競技用のものに履き替えることが必要であれば、フィールド内で履き替えれば事足ります。

スポーツとしてのゴルフ場には着替える場所(ロッカー)とトイレ、洗面所があれば十分で、ロッカーがなければ施設内にテントを張っておくだけでもことは足ります。時間が来たらゲーム開始です。

つまり、スポーツフィールドとしてのゴルフ場には倶楽部ハウスは必要ないのです。競技中に食事をとることはありえないし、18ホールスルーでプレイするのがスポーツとしてのゴルフだから、ここではジャケットは不要であり、ドレスコードも意味のないことです。

もう、筆者が何を言いたいかお分かりでしょう。日本のゴルフ場は社交としてのゴルフをスポーツやレジャーで訪れる人に強要している。さらに深刻なのは、そのことが数々の軋轢を生じさせていることに気がついていない。それが問題だと言いたいのです。

ゆえにスポーツとして取り組みたいと考える人や、レジャーで気楽にプレイしたいと考える人たちにとって大きなバリアとなっているのです。むしろ、目的別にゴルフ場の入り口や使える施設を明確にすることで、利用者の利便性がはかれるのではないでしょうか。

北海道のあるゴルフ場が、クラブハウスを利用しない場合3500円ほどのプレイ費で採算がとれる実績を出したことがありました。逆の見方をすると、倶楽部ハウスの維持管理にかなりの固定経費がかかり、それらがゴルフ場経営の大きな負担になっていることがわかります。

これも日本のゴルフ場の大きな特徴ですが、約2300あるゴルフ場のなんと80%近くがメンバーシップ制(プライベートコース)なのです。つまり社交としてのゴルフ場なのです。

ところが、そのほとんどが形だけのプライベートコースであり、メンバーでなくても、あるいはメンバーの紹介がなくても予約してプレイできるところが大半。つまり、実態はパブリックコースとなんら変わりがないのです。

それにも関わらず、あくまで社交場として倶楽部ハウスの利用を促し、9H終了したら食事をして、さらにジャケットの着用やドレスコードの強要を迫る。これは明らかに変ではないでしょうか。

むろん経営者にしても、本当はパブリックにしたい、いやプライベートコースとして存続させたいと思っていますが、そうさせてくれない事情がゴルフ場にはあるのです。以下、その問題点を箇条書きにします。

日本のゴルフ場が抱える問題点

日本のゴルフ場が抱える問題点

①多くのゴルフ場がバブル期に造成されたものが多く、プライベートコースとして会員を募集するも、投機的な目的で作られたものも多く、会員を集めやすくするために入会条件として預託金システムで会員を募った点

②ゴルフ場を造成するのに大きな資金が必要でそのためには数千人規模の会員を募集した点。メンバー数が多いためメンバーフィでのプレイ料金から運営収益を上げることが難しい。

③投機目的で販売したところは、バブルがはじけた瞬間に投機資金を回収しようとするゴルファー(投資家)が退会を希望し預託金を返還する動きが加速し、経営が行き詰まり民事再生法の適用を受けているところが大半である点。その結果、外資系ファンドにかなりのゴルフ場が安い金額で買い取られてしまった。

④メンバーでありながら年会費だけを払い続けている幽霊会員がメンバーの約1/3位も存在するところもあり、仮に年会費が\40,000、幽霊会員数が1,000人とすれば\40,000,000の年会費所得がゴルフ場の大きな収入源となっている点。これがないと即倒産ということにつながってしまうところも多い。

⑤メンバーで構成される理事会がゴルフ場経営の自由さを奪っている点。器産業としてのゴルフ場は入場者数に限りがあるので安定して利益を出し続けるにはメンバーフィを上げるか、他のビジネスを併用して収益を伸ばし行くか。会員の年会費を毎年上げていく必要があるが、いずれも拒否されている点。

⑥倶楽部ハウスの老朽化がはじまり、リニューアルするか建て替えるかという課題に対して数億円と言われるその資金をどのようにして集めるかという点

⑦経営的に優秀な人材、スタッフとして若くて有望な人材が必要不可欠であるが、将来の展望が見えないことからなかなか確保できないだけでなく、現在働いている人もやめてしまう人もいる点

⑧メンバーの家族が相続で引き続いて会員になってくれない点

⑨日本ではゴルフ場にかかる固定資産税が大きく経営を圧迫していることに加え、競合他社(近隣のゴルフ場)との顧客争奪のためにプレイ料金の価格競争が激しくなっている点

まだまだあると思いますが、いずれにせよこれらの問題はゴルフ場にとって深刻であり、これらをどのように解決していくかが大きな課題なのです。

しかし、未来のゴルフ界を鑑みた時、ゴルフ場の大胆な改革が日本のゴルフを発展させるためには避けては通れない難題なのです。

しかし、このような状況をゴルファー視線で見れば、いつでもどのようなコースでも予約が簡単にとれ、しかも安い料金でプレイできることはとても良いことに写っているはずで、ゴルフ市場の活性化は再び予約が難しくなり、プレイ料金も高騰してゴルフがやりにくくなるので賛成しかねる、と感じているのも事実です。

未来の姿をみんなで考えよう

未来の姿をみんなで考えよう

しかし、だからと言って何もせず、手をこまねいていては加速するゴルフ人口の減少に太刀打ちできず、経営的に破綻するコースがここ5年以内に400コース近くあると試算されています。ゴルフがプレイできる場所が少なくなるほど、ゴルファーの減少傾向は勢いを増します。その先にあるのは、想像するだけでも恐ろしい世界です。

顧客(ゴルファー)のプレイ目的が明白に分かれている以上、それに合わせたゴルフ場があってもよく、20%の本物のプライベートコースと80%のパブリックコースの構成が自然な形であり、ゴルフの普及にも大きく役立つと筆者は考えています。

スポーツとしてのゴルフ場はパブリックコースで行うべきであり、レジャーゴルフも然りです。パブリックコースでもコースの選手権を開催したり、月例会を開いたり、プライベートコースの競技部門と同じことは簡単にできます。

しかも、理事会が存在しないので、ゴルフ場は広大な土地と施設を最大限に利用した新しいビジネスを展開する自由を得られ、発展が見込めます。

そうなれば、新しい優秀な人材も自然と集まってくるのではないでしょうか?

この文脈で考えれば、地方自治体もゴルフ場を持つべきだと思います。それは災害時の集団避難場所としても使用でき、市民、町民のための公園としても利用できるため、ランニング、ウォーキング、サイクリング、サッカーやフットサルなど、スポーツ施設としても芝生のフィールドは利用範囲が広いからです。

これらを維持管理するために通常はゴルフ場として利用者から料金を取り、同時にゴルフ場利用税をこのような形で還元できれば、維持管理費はただ公園を維持管理する費用に比べれば大きな差が出ると見ます。市民の健康維持にも大きく役立ちます。週末には一般にスポーツ施設として有料で開放すれば良いことです。

現状、ゴルフ場の将来は、ゴルフ場自身が握っている部分があまりにも大きい。だからこそ、ゴルフ関係者やこれからの利用を考える人たちの間で大いに議論を尽くさねばなりません。日本のゴルフをもっと面白くするためにです。いや、日本の社会を明るくするためにです。


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松尾俊介

松尾俊介

1949年12月23日生れ  神奈川県出身
東海大学工学部航空宇宙学科卒、在学中は体育会ゴルフ部副将および関東学生ゴルフ連盟の連盟委員を兼務。パイロット志望から一転してゴルフ用品販売業務に携わる。ゴルフ工房を主宰しながら1988年からフリーランスゴルフライターとしても活動。国内外合わせて25のゴルフクラブメーカを取材し、記事として各誌に掲載する。「良いゴルフクラブとは何か」をテーマに取材活動を続ける。1989年米国キャロウェイゴルフの取材と掲載記事をきっかけに親交を深める。

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