横浜市栄区の練習場・第百ゴルフクラブは今夏(7月1~8月31日)、平日13~17時までの4時間を完全クローズする。理由は酷暑対策で、来場者の健康に配慮して試験的に導入する。
と聞けば、驚く業界関係者は多いかもしれない。支配人であるわたしの見解はこうだ。
「時代の変化を察知し、気温上昇の環境変化に合わせ、夏季猛暑対策としてお客様とスタッフの健康を第一に考えること」
将来の練習場運営を見据えたチャレンジでもある。
当練習場でも熱中症の怖さを何度も目の当たりにした。手足が痙攣、呂律が回らず話の辻褄が合わない、目が合わないなど、救急車を呼んだこともある。
高齢者ばかりではなく、若い方が急に倒れることもあり、命の危険を感じたが「家族には連絡しないでほしい。ゴルフをやめろと言われる」という一言が、鋭くわたしの胸を突いた。
練習場は半屋外だが、午後は西日も強く、無風の日は体感温度がグッと上がる。だから「夏のゴルフをやめて」ではなく「夏こそ朝(夜)活リズム!」をゴルフ練習場から提唱したかった。これによりスタッフの働き方も変わってくる。
むろんリスクは大きく、クローズ時間帯の来場者をそのまま失うとすれば前期比7~10%減となる。スタッフシフトも減となるが、有給休暇の支給で人件費は変えない予定。
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凍ったおしぼりをスタッフが打席へお配りするサービス[/caption]
来場者減の痛手をカバーするには無駄な経費削減が重要で、具体的には①ティールームメニューを「ブランチ」に大幅変更し、通常仕入内容・額を抑えてガスなどの光熱費も削減、②備品・消耗品の質や数量、発注方法の変更、③場内修繕を夜間からクローズ時間帯に行うことで外注工事費等を見直す。
これらで前年比±0に近づけたい。また、夏ならではのチャレンジ企画(60分打ち放題、1日何度来ても打席料216円、打席予約受付可等)も打ち出す方針。
5月27日、酷暑クローズの件をお客様にアナウンスしたが、その反応は様々だった。
ご家族からのお礼メッセージや経緯の説明を求められたり、中には「他の練習場に行くよ」との声もあった。意外に多かったのは40~50代のビジネスマンの声。
「運営方針に興味をもった」「新しい事をしてくれそう」「自社でこの姿勢を真似できるかも」「来場者を金(かね)と思っていない姿勢の表れ」等、励まされる声も多かった。
今回の決断は思いつきではない。例えばディズニーリゾートに「酷暑ガイドライン」の有無を問い合わせて知り得る範囲で確認した。ゴルフ産業以外のレジャー施設は何をしているのか、それらを確認して弊社の社長にプレゼンをした。
「近年、地球温暖化のスピードは予想以上。接客業の相手はヒトであり、時代の流れと練習場運営の将来を考える必要がある」という趣旨で、根拠と目論見を明確に示した。社長の賛同を得たことに驚く反面、チャンスを頂いたことに感謝している。施設内には中古ショップのゴルフパートナーが出店しており、同社の理解・協力にも感謝したい。
何をもって成功とするかは未知数だが、今回の軌道修正が数年後に実を結ぶことを信じてやまない。
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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