教えるとは学ぶことなり トレンドとかけ離れたゴルフの現状を再発見

教えるとは学ぶことなり トレンドとかけ離れたゴルフの現状を再発見
2019年4月に武蔵野美術大学で「ゴルフビジネス論」が開講し、「女子プロゴルファーのオシャレな装い~ゴルフウェアをデザインしよう~」という演題でゲスト講師を務めた。 毎週InterFMのラジオ番組で若手女子プロゴルファーにインタビューをしているし、GDOのバイヤーだった頃はゴルフウェアの展示会に出向き大量に買い付けていたので多少の知識はあったものの、未来ある若者に軽はずみな話はできないと、講義の数週間前から緊張のあまりドキドキが止まらなかった。 ゴルフ経験のない生徒に少しでも興味をもってもらおうと、アニメーションを駆使して一晩中パワーポイントと格闘し、総数37枚にも及ぶ資料を用意した。 寝不足気味で、小平市に広大な敷地を有する鷹の台キャンパスに足を踏み入れると、芝生に座ってランチを食べながら楽しそうにディスカッションをしている学生が眩しく映り、「なんだか随分月日が経ってしまったんだなぁ」と甘酸っぱい気持ちになった。 授業は滞りなく進み、最後の30分で「ゴルフをしなくても着たくなるゴルフウェアをデザインする」というテーマでワークショップをおこなった。何名かに前に出てもらい作品を発表してもらったのち、すぐに職員室ですべて拝見させてもらったが、さすがは美大生、短時間にも関わらず真っ白い紙に鉛筆でスラスラと描かれた線の美しさに感服した。 「興味はあるがドレスコートが厳しいと行く気がなくなる」「ゴルフウェアはスカートが極端に短く多様性が認められる現代で違和感がある」「えりのついた服を着ないトレンドとかけ離れている」など、現状のゴルフウェアやマナーは、学生達にとっては相当な違和感があり、ゴルフ業界に身を置き、みずからも長年ゴルフをしている自分の感覚とは想像以上にかけ離れていることがわかって愕然とした。 「夏だ、暑いぞ!ドレスコードをぶっとばせ!」 刺激的な見出しとともに、プリンス系列の「西熱海ゴルフコース(静岡県熱海市)」が、7月6日から9月16日までの夏場限定でドレスコードを緩和すると発表した。 「タンクトップ・水着はダメヨ!!」と注意書きはあるものの、ここまでドレスコードに反旗を翻したキャンペーンは見たことがなく、斬新だと感じた。 Tシャツや短パンなど手持ちの洋服でゴルフを楽しめるなら、敷居が高いとためらっていた学生や若者へのハードルは一気に下がるはずだ。 元日本代表サッカー選手の本田圭佑が「1万円を払うので教わりたい人いますか」と自身のツイッターで呼びかけ反響を呼んだ。今回初めて講師を務めるにあたり、うろ覚えの知識を事実確認するために市場レポートをひっぱりだしたり、現役GDOバイヤーにトレンドをヒアリングしたりと、「教えることは学ぶこと」をあらためて実感。 若者を呼び込みたいならお金を払ってでもゴルフの知識を教える機会を設け、再発見を通じて活性化につなげていく必要があると思った。
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ用品界についてはこちら