今ではエンジョイゴルファー街道まっしぐらだが、「競技に出ないの?」と聞かれるたび、4年前の苦い思い出が蘇る。意を決して競技会デビューをした「太平洋クラブ女子選手権」で予選を通過し、本選前の練習ラウンドで突然シャンクが止まらなくなった。
今思えば、実力が伴わないのに「勝ちたい」気持ちが先走り、緊張も相まってスイングがばらばらになっていたのだろうと思う。当時の私はパニックに陥り、決勝では散々な結果だった。それから「忙しい」という理由をつけて、競技から背を向けて暮らしてきた。
まわりで「ゴルフが全然上達しない」とイラついてクラブを置く人々をたくさん見てきた。最近ではスコアアプリと連動してSNSでベストスコア更新を喜ぶ投稿も多く、これを見て更なる劣等感を呼び起こすことも多いだろう。あれっ、ゴルフって楽しいはずの遊びだったのに、上手くないとダメなのかな?
NHKの秀逸な番組「クローズアップ現代」で、健康寿命を延ばす秘策を特集していた。なんとシンプルな習慣の変化で細胞レベルを若返らせることができ、「軽めの有酸素運動」「バランスのいい食生活」「質の良い睡眠」「人とのつながり」を保ち、自然の中で深い呼吸をすると効果があるらしい。ゴルファーの平均寿命が5年長いと言われているのも納得だ。
ピラティスの先生はレッスン前にいつも活力が湧いてくるような話をしてくれるのだが、「男性は女性より年齢とともに副交感神経の働きが低下する傾向にある」と教えてくれた。
ストレスを受けると交感神経が働き体の緊張が高まるが、女性は年齢を重ねてもリラックスする副交感神経の働きが持続するので平均寿命が長いらしい。適度なプレッシャーに立ち向い意識的に深い呼吸でゴルフをすれば、乱れがちな自律神経が整っていいことだらけ。新たな正当性を感じ、意気揚々と久しぶりの競技会に出場してみることにした。
「ターキッシュエアラインズワールドゴルフカップ」は、世界70ヶ国100を超える都市で予選会を開催し、優勝者にはトルコの地中海リゾート「アンタルヤ」でのグランドファイナル出場権を獲得できる。7月11日に日本予選レディース大会が「森永高滝カントリー倶楽部(千葉県市原市))で開催され、昨年のリベンジを目標にGDO代表として参戦した。
「今年こそ勝ちたい!」と「恥ずかしいプレーをしたくない」という気持ちが入り混じり、序盤で心拍数が上がり気味だったことに気付き、深い呼吸を心がけてみた。
残念ながら優勝は逃したものの、同伴者との会話を楽しみながらも適度な緊張感でプレーを楽しむことができ、「また競技に出てみようかな」と思えたのは大きな収穫だった。この日一番ドキドキしたのは表彰式の最後に行われた「じゃんけん大会」で勝ち残り、ターキッシュエアラインズが就航する世界124ヶ国311都市の往復航空券が当たったことだった。
人生をドラマチックに彩ってくれるゴルフは、やっぱり辞められそうにない。
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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