2045年には、全人類を合わせた知能を超えるAIが誕生する「シンギュラリティ」が起きると言われている。
AIが自ら考え行動し、人間には理解できないレベルのスピードと知能で自己改善のサイクルに入る時代が訪れる。ゴルフ界では今年2月、キャロウエイ社が発売した「エピックフラッシュ」が注目された。AIの導入により、通常だと34年もかかる多量のデザイン解析が短時間で可能になったもの。
また、AIキャディとも言われる「アーコス」は専用センサーをクラブに付けスマホ連動させると、ラウンド中の全ショットを分析。自身のラウンドデータをAIが自動学習し、専用のキャディになってくれる代物だ。
様々な業界でAIの導入が始まっているが、その際必要なのがAIの利活用に長けた「AI人材」。
今回は3万人以上のAI人材を育成、50社以上に導入実績のあるAI人材教育ツールAidemy社長の石川聡彦氏に、今後ゴルフ界でどのようなAI活用の可能性があるのか話を伺った。(以下:石川氏談)
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社長の石川氏はイニシャルも「AI」。元歌舞伎子役の経歴をもつ[/caption]
私はゴルフを始めたばかり。週1でレッスンに通い、コースデビューして爽快感を味わっています。ゴルフの面白さは上達度が数値で可視化されること。
AIには色々な分野があります。AIのディープラーニングでは、まず、解決のために労力をかける「意義ある課題設定」が必要です。ベテランはできるけど、初心者ができない、経験・カン・度胸・判断軸が必要なものほどAIで解きやすい。
可視化し、設定された判断軸から予測ができますが、どうデータで取れるものにしていくかが工夫のみせどころです。例えば、レッスンはフォームから可視化・予測しやすい。動画からフォームの何が悪いかを指摘するのはAIの得意分野です。
ただ、人間が相手なので、やり切らせるとか、練習するようプレッシャーをかけるなどは人の力が必要です。コールセンターなども、問合せの内容からAIが選択肢を予測し、オペレーターが選びながら和やかに会話を進めるなどの活用が進んでいます。
ゴルフ場運営では、タクシー配車アプリUber社のAI活用が参考になるかもしれません。同社は、イベントの後など需要の高いエリアは価格を上げる設定をします。時には通常価格の3倍になりますが、それでも需要がある。
これをゴルフにつなげると、憧れの名門倶楽部で会員は従来通り固定価格・ビジターは高めの日別変動価格で限定開放で顧客拡大が期待できます。また、Uberは目的地・出発地が分かるため、相乗りができる機能があります。これを応用すると、2サムの時など腕前が近い人と組める等、ストレスを排除できるかも。
用具開発にもAIには2つのイノベーションの可能性があります。品質検査を容易にするなど開発におけるプロセスイノベーション、製品自体を考えるプロダクトのイノベーションです。MI(マテリアルズインフォマティックス)でAIを活用し、新素材での飛距離延長の効果シミュレーションも出来そうですね。
石川氏の話を聞くと、ゴルフ界のAI革命は遠くない未来かもしれない。
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年月9号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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