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西村弁護士渾身の記 ゴルフ版経済敗戦を総括する(1)

ニュース 西村 國彦
西村弁護士渾身の記 ゴルフ版経済敗戦を総括する(1)

本稿はゴルフ場関連の「事件」に詳しい西村國彦弁護士が、主にバブル時代、何がどのように行われたかをゴルフ場及び当時の経済環境を含めて総括する「渾身の記」。計8回にわたりお届けする。

バブル破綻後の約30年、日本のゴルフ市場は長引く低迷に苦しんでいるが、往時を振り返ることで活性化のヒントを浮き彫りにしたい。なお、記事は弁護士歴42年のN(西村弁護士)と、N事務所で修習中のA司法修習生によるQ&A形式とした。

失われた34兆円はどこに消えたのか? 当時の複雑な構造をわかりやすく説明したい。

正確なゴルフ場数、実は「不明」

A:N先生が書かれた本(ゴルフ場 そこは僕らの戦場だった2015年3月 ほんの木)を拝読しましたが、よくわからないところがいくつかあるので教えて下さい。

N:もちろん。君はゴルフをしたことはないのかな?

A:事務所の若い先生方からコンペのお誘いを受けますが、まだプレーしたことはありません。

N:そう。最近は弁護士の数が増えているから、お客さんとの付き合いにもゴルフは必要だよ。パソコン仕事ばかりの弁護士には歩きを伴う運動になるので、ゴルフはお勧めだ。

A:はい、前向きに考えます。まず、日本のゴルフ場数がわからないので、このあたりからお願いします。

N:実は、正確な数字は不明なのだ。所轄の経産省でも民間の数字を使って推定しているくらいだからね。さらに驚きなのは「ゴルフ場の定義」さえ統一されていないんだ。

A:本当ですか。経産省は優秀な役人の集まりだと思うのですが。

N:僕もはじめはびっくりした。でも福島原発問題で、あの「優秀な」日本の「官庁」で、なんとこの間「放射能漏れ」がまったく想定されておらず、「放射能漏れ」を担当する役所がわからなかったらしいんだね。環境省の現役から聞いた話だけど。

A:まさに「安全神話」ですね。原発のような深刻な問題でその程度なら、命に関わらないゴルフ場問題は推して知るべしだと。

N:「たかがゴルフ」のことだからね。一般には、18ホール以上でパー72前後のゴルフ場が想定されているのだが、6コース108ホールが同じ市町村にあるゴルフ場もあれば、12ホールしかないけどパー3、パー4、パー5があるコースや、ホール数は様々だが、ほとんどパー3ホールのいわゆるショートコースも多くある。

A:先日、NGK(一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会)という団体が、毎年日本のゴルフ場数を発表している資料を見つけました。それによると、1957年116、1975年1093、1989年1722コースと増加の一途をたどり、2002年の2460コースがピークのようです。

N:ほお、よく調べたね。君は将来、見込みがありそうだねえ(笑)

A:恐縮です!

N:ただしNGKの発表数字は、ゴルフ場利用税の課税状況からゴルフ場数を推定しているため、1つのゴルフ場がダブルでカウントされるという話もある。

A:ダブルでカウント、ですか?

N:そう。19のゴルフ場が隣接都道府県にまたがるので、「実稼働のゴルフ場」は2018年3月末日現在、2238(2257マイナス19)だとNGKは発表している。いずれにせよ、太陽光発電のブームとゴルファー数の減少を受けて、確実にゴルフ場数は減っているわけだ。

A:元々36ホールや27ホールのコースが太陽光発電の設置で18ホールになっても、ゴルフ場数は減らないわけですね。

N:その通り。いろんな店が日々閉鎖したり開店したりしているよね。つまり、生き物である企業の正確な数などは、リアルタイムでは把握できないのだよ。

日本は世界3位に転落?

A:ちなみに世界のゴルフ場数はどうなっているのでしょう。

N:正確性については不明だが、こんなデータ(月刊ゴルフマネジメント創刊300号)はある。2007~2008年米国1万5590、カナダ2300、イングランド1897、オーストラリア1500コース。

ただし、英国を連邦として合計すると2752あるので、事実上日本は世界3位で、カナダに抜かれつつあるのだろう。

A:日本は平地が少ない小さな島国なのに、世界有数のゴルフ場数なのですね。

N:そう。お隣の韓国は、日本のゴルフ場が乱造され、多くの被害者が出たことを学んだ。そこで彼らはゴルフ場造りに厳しい法的規制をかけ、事実上国家管理にしたみたいだ。

A: だから韓国には300コースも出来ていないわけですね(2007~8年時点で234)。

N:だから安い日本のゴルフ場を買いに来るわけだ。

バブル崩壊とその原因

A:ところで、私が生まれる前のバブル期の日本のゴルフ場の価値はどうだったのでしょう?

N:いま東京の不動産の価格は、ミニバブルといわれるくらい、復活しつつあるようだね。銀座あたりには、バブル期の価格を超えたところもあるという。いわゆる「外人買い」が多いのだろうが、それでもバブルピーク時のマンションは1坪当たり2000万円とかの異常値がついたけど、今はそこまでいってないはずだ。

A:ワンルームマンション5坪で1億円とは…。

N:バブルの起源は、オランダのチューリップ・バブルと言われているのだよ。チューリップの球根ごときに投機的な価値がついて、買えば値上がりするという雰囲気だけで毎日空前の高騰を続け、それをみんなで買いあさることでまた値段を上げたわけだ。

A:銀行員だった父から聞く日本のバブル経済の話や、サブプライム問題なども同じなのですね。

N:ベルリンの壁崩壊による冷戦終結や共産主義・社会主義国家の崩壊を受けて「資本主義」は生き残った。その「資本主義」は、資本を投じて利益・利潤を生み出すことを否定するどころか、むしろこれを奨励する。

人間の欲望を否定しないで、むしろ社会発展の原動力としているわけだ。つまりバブルは資本主義に必然的に伴うもの、と言ってよいのではないか。

A:裁判官が、時々判決に「景気変動の一つとして想定可能」みたいなことを書くのは、そういう意味ですね?

N:弁護士のほうも、ろくに調べず安易に事情変更の原則など持ち出すから、そう切り捨てられるケースも多いわけだ。  (続く)

月刊ゴルフ用品界(GEW)2018年12月号掲載

「西村コラム」官僚組織の無責任

日本人は、素直である。中国人と異なり、島国の日本では、「長いものには巻かれろ」とばかり、「お上」のいうことを無条件に信ずる傾向がまだ続いている。

確かに、日本の官僚たちは優秀であった。でも彼らは、自分で物事を考えることを学んだ優秀な人たちではなかった。彼らの優秀さは、上から指示されたことについては、その是非など全く疑うことなく、それを要領よく記憶し実行する能力を重視する学校教育の上での優秀さに過ぎなかった。

原発を推進するにあたり、その被害についての責任について法律は制定したのに、いざ「放射能漏れ」の事態が発生したときに、どの官庁が担当すべき問題かがわからなかったという。本当に危機感が全くない国である。

そんな国の発表するデータには、「レジャー白書」も含め、常に裏があると考える必要がある。

日本ゴルフジャーナリスト協会Webサイトに寄稿している、西村國彦氏の記事一覧はこちら


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西村 國彦

西村 國彦

お酒は飲めないしカラオケも駄目の営業下手の弁護士。そんな男が40歳を迎える年、ゴルフを始めたことから人生も性格も激変。ゴルフ大好き仲間を求めるオデッセイになって、世界を放浪。ゴルフエッセイも書く傍ら、法的に弱いゴルフ場会員たちの権利を守るため、「新理論」を構築。ハゲタカ外資にも正面から闘いを挑み、撃破。最近、ジャズの世界も覗いている。日本ゴルフジャーナリスト協会理事。

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