新しいゴルフ規則が施行されてからもうすぐ1年が経とうとしているが、ゴルファーたちに思ったほどの混乱もなくスムーズな移行ができたのは理由がある。
大抵のゴルファーはルールブックを読まないので、混乱しようがないのが現実なのだ。
今年の日本ゴルフ学会は9月2~5日、群馬県のサンコー72CCに於いて開催された。そこで特別企画として「67年ぶりのルール大改定でゴルフはどう変わったか」というお題を頂戴した私は、発表に備えて1月からデータを取ることにした。
しかし、それらはある特定のゴルフ場で調査したもので、日本全国のゴルファーの平均値ではないことを予めご理解願いたい。
以下、日本ゴルフ学会で発表した内容を記しておく。
新規則に関するデータを取った期間は2019年1月~7月までの146ラウンド・延べ529人(プレースタイルはキャディ付き・歩き・35歳以上のゴルファーが対象)で、調査項目は5つ。
①新しいゴルフ規則書は読みましたか?
②距離計測機器の有無
③パッティングのときの旗竿の有無
④新しいドロップは実践できているか
⑤ルール改定で無罰になった規則の頻度。
まず、①の規則書を読んだかという質問に対しては529人中14人が読んだと答え、これは全体の3%にあたる。つまり97%のゴルファーがルールブックを読まないという事実が発覚した。
次に②の距離計測機器については、全体の42%が計測機器を使い、内訳はレーザー19%、GPS23%である。これは1組に4人のプレーヤーがいたら、2人は計測機器を使用している感覚である。
③は今年最も大きく変わった旗竿について、調査結果は全体の88%が「旗竿は立てたまま」プレーする。旗竿を立てたままだとハーフ10分のプレー時間の短縮になるという結果も出ている。
12%の旗竿を抜く派に多く見られるのは、抜いてからラインを読み始める、抜いてからカップの反対側へ行くなど、プレーのペースに明らかに影響を与える行為が見受けられる。抜いた旗竿は最後に誰が立てるのか?という問題まで起き、周りからは歓迎されないと想像できる。
④新しいドロップの「膝の高さから」はかなり浸透してきたが、ドロップはできても「救済エリア」を正確に理解している人は少ない。これはニアレスト・ポイントがわからない為に起きる問題だが、ニアレスト・ポイントの決め方は旧規則と変わらないので、以前からわかっていないのだから新規則になってもわからないままなのは当然といえる。
⑤の例えば「2度打ち」は146ラウンドで6回しか遭遇しなかった。2度打ちが無罰になると喜んだゴルファーは多いが、そもそも頻繁に起こることではないので、2度打ちが無罰になってもスコアが劇的に良くなるわけではない。
また、話題になったバンカーの外から2罰打でプレーできる規則を使った人は529人中6人だった。
ゴルフが他のスポーツと違うのは、審判がいないということであり、それはゴルファーの誇りでもある。この点を踏まえてもう一度聞く。
「あなたはルールブックを読みましたか?」
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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