「万振りゴルフ部」―。
そのタイトルから内容は一目瞭然だろう。ゴルフクラブを振りちぎり、飛距離をひたすら伸ばすことを主眼とする動画。今年7月1日にユーチューブにアップしてから数ヶ月、視聴者ゴルファーの心を掴み、チャンネル登録者数・レッスン希望者が増加中だ。
登場するのは米国ティーチングプロライセンス所持者でドラコンチャンピオンの李朋子プロ。彼女は昨年、JPDA(一般社団法人日本プロドラコン協会)のドラコンツアー女性部門でポイントランキング1位、今年も数々のドラコン大会で優勝している実力者。
さらにJPDA所属のドラコンプロ3人(岡田美由紀、川村順二、中村竜一)がチームを組み、自主制作によりSNS配信。数あるゴルフ動画の中で注目を集めている。
ゴルフプロの個人制作にも関わらず、どのように人気を高めたのか?常々気になっていた筆者は、偶然その撮影現場に遭遇し、取材の許可を得た。
東京都荒川区にあるインドアゴルフ練習場「ゴルフ生活」。撮影場所を提供するオーナーの弥永貴尚プロもJPDA所属であり、LDDA(ロングドライバーズ アジア アソシエイト)の公式記録405ヤードのレコードホルダー。
防音設備がある特別なスタジオではないため、ゴルフボールの打球音や、車の騒音などの雑音は避けられない。使用機材は一般的な携帯サイズのハンディビデオ。
ドラコンプロ達が、カメラの角度や照明の当たり具合を細かく確認しながら撮影していた。映像撮影及び編集のプロはいない。
今回はレッスンの合間、土曜日午後、1時間20分で3回の放映分(各回約10分、毎日アップ)を撮影した。視聴者からの質問に対して、実演しながら回答するという内容であった。
番組は飛距離アップがメインテーマだが、豊富なコンテンツを提供している。「ヘッドスピードMAXアップレッスン」「新作や話題のドライバーの試打と検証」に加え、ボディコンディショニングトレーナーでもある岡田プロによる「ゴルフボディを作る辛くないストレッチ」など、飛ばしにつながる要素をトータルに伝える。
「ここまで無料で公開していいの?」と思う内容なのだ。
主宰者の李プロによると、「そもそも私は、レッスンの説得力を高めるためにドラコンに挑戦したのです。結果、ドラコンチャンピオンになりましたが、多くのゴルファーに有益な情報を提供したいと思い、昨年12月から動画配信を始めたのです。内容は、ドラコン大会の様子やプロゴルファー同士のラウンド対決などでした。ところが、こういった内容では視聴者からの反応が薄く、レッスン希望者もそれほど増えませんでした」
それが一転、大きく躍進したのは「飛ばしに特化した総合プログラム」として、李プロ自身が企画構成を担当、ドラコン仲間とタッグを組んで番組配信したことによる。その勝因が面白い。
「実力派の李プロによる、アニメキャラの可愛い高い声を枯らしながらの渾身のレッスン」「幅広い年齢層のプロ仲間によるユーチューバー的なトーク」「レッスンを希望した場合にアクセスしやすいこと(動画の概要欄でリンクをクリックすれば情報が得られる)」など。
「え、ドラコンチャンピオンに直接習えるの?」と多くの人が驚いた。実績と能力があっても、情報発信しなければビジネスチャンスは少ない。情報発信には工夫が必要だ。
ゴルフレッスン業界も参考にしてほしい。
【万振りゴルフYouTube公式ページ】
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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