今年の「2019ジャパンターフショー」も千葉市内のフクダ電子アリーナにて大盛況のうちに幕を閉じた。ゴルフ場の芝草管理機械や管理資材のすべてを観られる展示会で、出展者が開催するプライベートセミナーは誰でも自由に参加できる。
今回、私が参加したセミナーは2日間でデモンストレーションを含めて5つ。
- 一季出版「ゴルフコースと樹木・コース設計者が考える樹林帯修復」
- バーンハード・アンド・カンパニー「日照問題に光を!グローライトと芝の育成」
- 全国ゴルフ場関連事業協会「世界中のゴルフ場を見てまわり歩いて気づいたこと~ゴルフ場関連ビジネス活性化のために何をすべきか?」
- マミヤ・オーピー「自律走行芝刈り機によるフェアウェイ刈りの自動化が始まる」
- 日本芝草学会ゴルフ場部会「これからの労働環境に適するバミューダグリーン・採用コースの実情と管理のための必須条件について」。
これらの受講は、自分の興味があることや学びたいことを「時間割」を見て決める。今年はなんといっても「バロネス無人芝刈り機」に注目が集まり、セミナーもデモンストレーションも賑わっていた。
無人で動かす自動走行方式は2つの方法があり、ひとつは「管理スタッフの機体操作を記憶させ、再現させるティーチ方式」、もうひとつは「I-GINSでも採用しているマップ方式」と呼ばれるもので、コースのレイアウトをパソコンで読み込み、走行ルートを制御する。
デモはティーチ方式で狭いフェアウェイを刈る設定で、予め記憶された動きが自動走行で披露された。また前方に突然人が出現した場合に自動停止する演出には、会場がどよめき注目の高さが伺えた。
井上誠一の最後の弟子・嶋村唯史氏によるセミナーはいつも学ぶことが多い。
「井上先生に教えられたことは、ゴルフコースにある2つの道を考えて設計すること。それは、風道(かぜみち)と水道(みずみち)です」―。
人間で例えると「風は呼吸」「水は血管」と氏は説明する。風道は年間の気象データに基づき、通り抜けたその先まで考える。血管はコースに栄養を運ぶ。
さらに、ゴルフコースの木は、造成されてから5~10年は育成期間、次の10年は木の成長を見守り育てる期間、次の10年で手入れをし、コースとマッチしてくる。40年程でようやく完成するが、50年が過ぎると育ち過ぎた木が悪戯を始めるという。
手入れされず大きくなり過ぎた木は、日陰をつくり芝の成長に影響を与える(日照遮蔽)。風をさえぎり風道をふさいでしまう(通風阻害)。
コースの景観を維持するためには必要な樹木管理を怠ってはならない。特に日本のコースは林帯が多く、密集しているのが問題だと氏は指摘する。適切な間隔については「木と木の間を乗用カートで通れるくらい」との説明だった。
これは木が成長したときにカートが通れることを意味しているので、植えるときに注意が必要だ。木と芝の生育条件は相反する関係にある。
しかし、やみくもに伐採するのではなく、設計者の設計意図を理解した上での樹木管理が、これからのゴルフコースの最重要課題であろう。
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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