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「JGJA大賞」受賞の三觜プロがゴルフ界の問題を熱く語る

ニュース 松尾俊介

1月29日、プロゴルファー三觜喜一プロが2019年度日本ゴルフジャーナリスト協会大賞を受賞し、その授与式が開催されました。

三觜プロはジュニア育成をはじめユーチューブを駆使してのレッスン動画は20万人超の契約視聴者を獲得、歯に衣着せぬ直言居士という点も大賞受賞の理由でした。彼が発信する提案は、混迷するゴルフ界、特にジュニアやプロゴルフの世界に警鐘を鳴らすものです。

プロゴルファーとは

プロゴルファーとは

一般的に日本では、プロゴルファーとはPGA(日本プロゴルフ協会)、LPGA(日本女子プロゴルフ協会)、JGTO(日本ゴルフツアー機構)が主管するプロテストまたはツアー出場テストをクリアして、協会のメンバーになった人を「プロ」として認定するもので、テストの内容によってツアーに出場するタイプとレッスンの資格を得るタイプに分けられています。

トーナメントに出て賞金を得るか、レッスンを行って生計を立てて行くものです。

しかし、現状では日本のPGA、LPGAの会員でなくてもプロゴルファーとして立派にツアーで活躍し、レッスンにおいても良い仕事をして評価されている人は多くいます。三觜プロの問いかけは、会員外の彼らは「正式なプロゴルファーではないのでしょうか?」というものです。

これはPGA、LPGAにとっては重要な問題です。PGAでは現在5600名強の会員があり、年会費4万5000円を徴収して協会の財源の柱にしています。

毎年100名前後が必要な講義を受講し実技テストを経て資格を取得、プロ(会員)になるわけですが、資格を取得したからといってPGAは仕事を斡旋することはなく、練習施設を運営する会社などに社員として就職するか自分自身でスクールを開講して個人事業主として仕事をするかとなります。

彼らからすれば、PGAのライセンスを持っていない人は「白タク」と同じ無資格者で、何とかしたいと思っています。しかし、PGAのライセンスがなくても他のゴルフ団体が発行するライセンスでプロとしてレッスン業務を行い、あるいは海外で学んだり、国内でも独自に学んでレッスンを行っている人も多いのです。

プロ協会が抱える問題点

プロ協会が抱える問題点

現状、問題は3つあると筆者は考えます。

一つは資格認定で使用する教材が現代の最新科学に基づいたものになっていない点です。クラブの知識やレッスンの内容が古く、レッスンの現場では使いづらいものになっているからです。

2つ目は、資格認定を受けるのにはおよそ1年近くかかる講習会の参加が必須で、その費用が100万円近く掛かる点です。

これらを解決する方法としてはPGAが資格認定で使用する教材や受講内容そして認定を行うシステムは世界共通のものがあるべきだと思っています。

これは受講する側もレッスンを受けるゴルファーから見ても最新のものがベストだからです。世界どこでも同じ質のレッスンを提供できるからでゴルフレッスンの国際免許証みたいなものです。

3つ目は、協会が組織として柔軟性に欠け、新しいことに対して機能できない状況にあることです。

新しい革新的な考えを持った人や、積極的に改革を遂行しようという意志を持った人が理事に立候補しにくい環境があると思われます。そこには既得権益があり、改革されると困る人がいるから遅々として進まないという指摘もあります。

ゴルフレッスンは、ツアープロを目指す人たちにツアーで戦える技術を教えるいわゆる「ツアープロコーチ」から、一般ゴルファーにゴルフの楽しさを伝え、その人の目的に沿ったプログラムを作成し実践できる通常の「レッスンプロ」がいます。

また、ゴルフを教育の一環として捉えるならば、ゴルフの枠を超えた幅広い知識やそれを伝える技術を必要とします。これができる人も優れたゴルファーでプロと呼べます。

プロとはプロフェッショナル・専門家であり、持てる知識・技術を必要とする人たちに正しく提供できる人や、それらを学問として追求している人のことを指すものです。しかし、どんなに知識や技術があっても伝え方が悪く、それを必要とする人たちが価値を見出せなければお金を払うこともなく、職業として成り立ちません。

つまりライセンスを取得したからといって教える技術が伴わなければプロとは言えないのです。

それは資格を取得した人にとっても不幸なことです。ライセンスの有無でゴルファーもプロも混乱している状況があるなら、そろそろ資格認定のやり方を変えるべき時期に来ているのではないでしょうか。

資格認定の講習を受講して実技テストを受験することよりも、各分野でゴルフの普及に役立てる仕事をしている人をPGAがプロとして認定し、PGA会員になってもらうほうがPGAの発展に大いに役立つのではないかと見ます。

そのための新しい組織作り、システムの開発が急務です。

ジュニアゴルファー育成について

ジュニアゴルファー育成について

三觜プロは20年前からジュニア育成を行っています。しかも無料で。この活動の原資となるのは、大人向けのレッスン等で得た収益を投じています。

ジュニアを育成するにあたり、自分からゴルフをしたい、といってスクールに入ってくる子供は伸びるそうです。しかし、親が「やれ」と言ってジュニアスクールに入ってくる子は途中でやめたり、ゴルフそのものを楽しめないので最初からお断りをするそうです。

最初は親と面談をして、本当に子供の意志でゴルフをやりたいのかを確認するそうです。そうすれば子供はのびのびと自分の意思で考え、練習を工夫したりするので楽しんで練習するそうです。当然、上手くなります。そうすることでモンスターペアレントは存在しないと明言していました。

このようなプロセスを経ないでジュニアを受け入れると、練習中でも後ろから、ああしろ、こうしろと直接子供に指導を始めたり、持論を押し付けてくるそうで、子供の主体性を奪い取っている保護者がかなり存在するそうです。

そのような親は自分の子供が良い成績や結果を出し始めると、成績が少しでも低い子供達や保護者に対して「上から目線」の言動をあからさまに出してくるそうで、ジュニアを教える前に保護者を教育しなければならないくらい現状はかなり厳しいようです。

三觜プロのジュニアスクールの基本的考えは、教育的な観点からゴルフを教えるものでFirst Tee プログラムが参考になっています。

しかし、自主的にゴルフを始めた子供は自分で練習を工夫し、練習も率先してやるために上手になり、ジュニアの試合で結果が出てくるとツアープロを目指したい子供が必ず出てくるそうです。

プロになれる確率は1%と言われていますが、成績が上がり、多くのジュニア大会に出はじめると年間550万円もの支出を覚悟しなければなりません。つまり、資質があっても親に財力がなければ続けられないという問題も深刻化しています。

また、目的がツアープロであるとQTなどに失敗を続けているうちに挫折して、ゴルフをやめてしまう子が多いことも現状なのです。

このような現状はゴルフ界にとっては不幸なことです。能力がある子供達をお金の問題や挫折した時に救済できるシステムがPGAには必要ではないでしょうか? 子供は将来の財産となる逸材だからです。

友達と上手く付き合えない

友達と上手く付き合えない

プロを目指す子供達の中には通信課程の高校に入り、学校にはほとんど行かず、ほぼ毎日ゴルフ場で過ごしツアープロを目指すジュニアが増えている点にも警笛を鳴らしています。

ジュニア時代からゴルフしか知らない子供たちと過ごすことで、コミュニケーション能力が著しく偏ったり、幼少期に学んで欲しい様々な事柄から遠ざけられた環境が「普通の友達付き合い」ができない子供を育ててしまう弊害も無視できません。

三觜プロは、ただゴルフが上手ければ良いということではなく、ゴルフを通じて“生きる力“を習得できるジュニア育成が大事であると実感しているそうです。

成果主義を優先する大人の社会、結果や成績がすべてに優先した現在の社会のあり方がジュニアの世界にまで入り込んでいることが問題点だ、と指摘しています。同感です。

最近、LPGAはツアーに有望なジュニアを積極的に参加させ、成果を出しています。

昨年LPGAツアーで予選を2試合以上通過したジュニアが38名もいるそうです。半分のプロが予選をクリアできない中で2試合も予選を通過できる実力は、すでにツアープロとしてやっていけるだけの実力を身につけていると考えられます。

しかし、LPGAのプロテストは毎年20名しか会員になれず、これはおかしいと三觜プロは指摘します。しかもマンデートーナメントはLPGAの会員でなければ参加できないという条件があり、この点にも矛盾を感じているそうです。

ここでも「プロとは?」という疑問が出てきます。

「学校法人」としてのPGA

「学校法人」としてのPGA

三觜プロの話を聞いて強く思うことは、業界関係者の鈍感さです。早急な組織改革が必要だと訴える声は少数派で、大半は現状維持を望んでいるようです。

この状況はPGAだけではなく、ゴルフ場やゴルフ練習場、ゴルフ業界全体に内在する問題であり、ゴルフ人口の急減が始まるとされる2025年までに対処しないと大変な事態に陥るでしょう。

PGAやLPGAは毎年資格認定者を生み出していますが、良い職にありつける人は限定され、低賃金や長時間労働に喘ぎ、仕事の質も低下する恐れは十分あります。

プロフェッショナルは職業として尊敬されるものであり、憧れのポジションでなければなりません。ゴルフはスポーツとしての位置付けから社交まで幅広いのが特徴です。しかも、プレイする人はジュニアからシニアまで幅広く、大人であればその職種も多岐に渡ります。

幅広い層の人達を教えるには、「教師」としての資質がなければ真のプロフェッショナルにはなれないのではないでしょうか?

少なくとも大学の教職課程の単位を取り、教えるということの意義を理解して勉強している人がプロと認定されるべきだと思います。

PGAは将来、ゴルフを指導するプロフェッショナル集団として、学校法人の認可を取って大学や各教育団体と連携した新たな教育機関として、新しい組織に変革するよう強く望みます。

プロフェッショナルとは何か、もう一度関係者が熟考し、新たな定義とそれに合わせた資格を発行すべき時期に来ているのではないでしょうか。


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松尾俊介

松尾俊介

1949年12月23日生れ  神奈川県出身
東海大学工学部航空宇宙学科卒、在学中は体育会ゴルフ部副将および関東学生ゴルフ連盟の連盟委員を兼務。パイロット志望から一転してゴルフ用品販売業務に携わる。ゴルフ工房を主宰しながら1988年からフリーランスゴルフライターとしても活動。国内外合わせて25のゴルフクラブメーカを取材し、記事として各誌に掲載する。「良いゴルフクラブとは何か」をテーマに取材活動を続ける。1989年米国キャロウェイゴルフの取材と掲載記事をきっかけに親交を深める。

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