ここ数年、キャディバッグとは別にセルフ用のスタンドバッグ(以下セルフバッグ)をコース内に持ち込むケースが増え、賛否両論が渦巻いている。2017年、群馬県ゴルフ場支配人会が、県ゴルフ協会に加盟する全コースでセルフバッグの取り扱いを統一する決定を下した。
あれから3年が経過し、セルフバッグの需要が高まる中、これをコースへ持ち込むことを禁止するゴルフ場もあるほどだ。なぜ、ゴルフ場はセルフバッグを禁止したり、取り扱いを統一するのか。背景には複雑な事情があるようだ。
さるゴルフ場でキャディを務める私がセルフバッグのプレーヤーを見かけるようになったのは4~5年前から。
実際にセルフバッグを使用するプレーヤーに付くのは年間1~2名程度だが、セルフのコースでは毎日40組のうち半数がセルフバッグを持ち込むという現状がある。そこで群馬県ゴルフ場支配人会は次の2点をプレーヤーにお願いした。
ひとつはグリーンへの持ち込み禁止、もうひとつは「個人管理」の徹底だ。
ネームプレートも付けずにキャディバッグと一緒に預けられ、大量のバッグと一緒に運搬されると、軽くてシンプルな作りのセルフバッグは破損したり、所有者が不明になったりする。人手不足やスタッフの高齢化が進むゴルフ場では、セルフバッグの対応でトラブルが生じると他の業務にも影響が出る。手荷物と同じように個人で管理してもらうことで現場スタッフの業務を軽減したいのだ。
一方、現場を預かるキャディさん達はセルフバッグについてどう思っているのか?
これはプレースタイルで少し意見が分かれる。乗用カートコースと歩きコースでは使用頻度が大きく異なるからだ。カート道だけを走行する乗用カートコースでは、セルフバッグにクラブを数本入れて行き来することはプレーヤーにとって便利であろう。
しかし、フェアウェイに乗り入れる歩きコースでは、常にプレーヤーの側にカートがあるのでセルフバッグを持ち運ぶ必要がない。それでも乗用、歩き、どちらのキャディもセルフバッグに反対票が多いのには理由がある。
セルフバッグにクラブが数本入っていると、すべてのクラブをひと目で管理できないのだ。4つのキャディバッグが並んでいて、何がどこにあるかを把握している状態がキャディにとって好ましい。
キャディ歴40年のYさんは「クラブがないと、ドキッとする」と言う。本来はキャディバッグの中に順番に並んでいるはずのクラブが、別のところに数本あるという状態は神経を2倍遣う。セルフバッグを持ち運ぶことで「キャディさんもこのほうが助かるでしょ」と思っているプレーヤーがいるとしたら、それは恐らくキャディにとってはいい迷惑かも・・。
今後、キャディ付きコースでセルフバッグを使用するときは、キャディさんに相談してから使うことをお勧めする。そして、使うからには自分で持ち運び、グリーンが終わったら自分でカートまで持って行くことをお願いしたい。キャディはそれが一番助かります!
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2020年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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