JGF中止で流れた夢対談 「神戸」と「雲仙」をフェアで会わせたかった

JGF中止で流れた夢対談   「神戸」と「雲仙」をフェアで会わせたかった
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。3月に開催予定だったジャパンゴルフフェアも中止になった。 個人的にはフェア期間中に、ある「夢の対談」を企画していたので残念で仕方がない。かねてより、日本で1番古い神戸ゴルフ倶楽部(1903年開場)と、現存するコースでは2番目に古い雲仙ゴルフ場(1913年開場)の関係者を引き合わせてみたいと考えていた。 神戸と雲仙は離れているが、「グラバー商会」という共通のキーワードがある。 1859年、スコットランド出身のトーマス・グレーク・グラバーは開港と同時に長崎にやってきて、23歳でグラバー商会を立ち上げた。ともに設立に加わったフランシス・グルームという人物がいる。 グルームには弟がいて、のちに商会の神戸支店を開設するために神戸へ行くが、彼こそが「六甲山の開祖」アーサー・ヘルケス・グルームその人である。商会を設立したグラバーの息子(倉場富三郎)はのちに雲仙ゴルフ場を、グルームの弟がのちに神戸GCを造ることになる。 つまるところ、日本のゴルフの歴史は「グラバー商会」なくしては語れないということだ。 商会が繋ぐ2つのコースには他にも共通点がある。どちらも山の上の避暑地に造られていて、真夏でも涼しい。開場当時は外国人の利用者が多く、山を登るときには駕籠が使われていた。駕籠については両コースとも当時の様子を資料として展示しているが、神戸は写真で、雲仙はステンドグラスにして後世に伝えている。 そしてどちらも現在では一般的となった18ホールズ・パー72というフォーマットではない。神戸は18ホールズ・パー 61で、雲仙は9ホールズ・パー 36だが、2グリーンなので2周でパー72となる。 大きく違う点は、神戸は開場時からメンバーシップとして運営されており、プレーするにはメンバーの紹介が必要で、雲仙は日本初のパブリックコースとして設立されたので予約は誰でも自由にできる。 予約は取れるが行くには遠い雲仙、行ってみたいが予約が取れない神戸。どちらも一長一短である。 しかし、神戸にはメンバーの紹介なしでプレーできる方法があるので紹介しよう。神戸GCのホームページを開き、トップページにある『限定プレー枠』をクリックすると、用意された日程から希望日を選び、往復葉書でプレー予約の申し込みが出来る。 支配人の池戸秀行氏によると、往復葉書による申し込みは多い年で年間40枚、少ない年でも20 〜 30枚ほど届くという。HPには「日本のゴルフの幕開けである神戸ゴルフ倶楽部の歴史と伝統を、より多くのゴルフをされる方に知る機会を提供させていただくため『限定プレー枠』の企画を準備致しました。」とある。 神戸は日本のゴルフの聖地としての役割を幅広くゴルフファンを受け入れることで果たそうとしている。 歴史あるコースにありがちなコース移転も、神戸と雲仙に限ってはなく、開場時と同じ場所に現在もコースが残っている。100年前と同じ場所で、同じ景色を眺めながらゴルフをする醍醐味は何ものにも代えがたい。 神戸と雲仙の「出会い」はコロナショックで不発に終わったが、次の機会に是非実現させたい。 ※写真は雲仙ゴルフ場のステンドグラス
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2020年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ用品界についてはこちら