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    総力取材 コロナで萎縮のゴルフ界で今なにが起きているのか? 

    片山哲郎
    1962年8月3日生れ。月刊誌GEW(ゴルフ・エコノミック・ワールド)を発行する(株)ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長。正確、迅速、考察、提言を込めた記事でゴルフ産業の多様化と発展目指す。
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    国内14コースを運営するリソルゴルフの富樫孝之社長がこう話す。 「あくまでも肌感覚ですが、志村けんさん(70)死亡の報道がされてから、コンペのキャンセルが増えたような気がします」 ゴルフ市場を支えるのはシニア層。志村さん死去の一報は多くの人にショックを与えたが、同年配が多いゴルファーは他人事ではなく、日常生活に影響を与えたようだ。まずは富樫社長に最新事情を取材した。

    スループレー広げるチャンス

    コロナが深刻度を増していますが、御社の景況感を教えてください。 「そうですねえ。業界はどこも2月は良くて、当社もそうだったわけですが、これは閏年で1日多かったのと、天皇誕生日などで土日祝日が計11日。単純に日まわりが良かったのが理由とも思われます。 その後、3月になるとコロナ報道の過熱でキャンセルが続き、一度落ち着いたと思ったわけですが、30日に志村さんの件が報道されてから、コンペのキャンセルが増えたように思います」 今後の予測はどうですか。 「5~6月のコンペはキャンセルが増えているわけですが、個人の予約は入っています。そこで、需要喚起につなげるためにハーフやスループレーなど、多種多様なプランを用意して対応したいと考えています。 それと、自粛気運が高まると外に出にくくなりますが、せめてゴルフ場へ来た日には思いっきりプレーしたいという気持ちが働きます。そんな需要に応えるべく27ホールや36ホールのプレーを用意したところ好評です。 具体的にどの程度の需要があったかの詳細はまとめていませんが、感覚的に実感できます」 以上、富樫社長との一問一答を紹介したが、コメントにあるスループレーの普及はゴルフ界にとって積年の課題であったといえる。「ゴルフは丸一日掛かる」という時間的な縛りが若年層に敬遠され、大衆化を阻害してきた経緯があるからだ。 今回のコロナを機に一気にスルー化につなげたいという思いは国内141コースを運営するPGMも同様で、同社は3月初旬に50コースだったスループレーの予約枠を現在、約100コースにまで広げている。 「プレーはしたいけど浴場や食堂での感染が怖いという気持ちが強くなっているので、これを機にスルーを強化してカジュアル化を進めたいと考えています」(広報担当・大嶋智氏) また、日本長江GC(千葉県市原市)のファン・チャンイル支配人は、 「当コースの来場者は東京、神奈川が7割ですから、秒読み段階に入った首都封鎖は大変心配です」 と前置きして、次のように続ける。 「ただし、ゴルフには野外スポーツという利点があります。現在週1日のセルフデーを完全セルフ化に移行することを考えており、となれば食堂や浴場を閉鎖して少人数でオペレーションできるでしょう。仮に首都封鎖が現実化すれば、セルフを経営施策の柱にすることもありえます」 小池百合子都知事が3月に発言した「ロックダウン」(首都封鎖)は、欧米とは異なり、日本では法律的な強制権をもたないが、アナウンス効果は強いと思われる。それはともかく、同社以外にもセルフ&スルーの重要性を主張する関係者は多い。ゴルフジャーナリストの三田村昌鳳氏がこう話す。 「コロナで『ピンチはチャンス』を考えると、新たなプレースタイルを普及させる活動もできます。特に昼休憩を挟まないスルーには可能性がある。ゴルフ場の食堂は儲けがなく、長年の習慣でやっていますが、今なら『コロナでスルー』と言えますよね。普及すれば時間短縮を含めて敷居を下げられるでしょう」 別の観点からこの点に同調するのは、日本ゴルフ場経営者協会(NGK)の大石順一専務理事だ。 「USGAのハンディシステムは9ホールでのスコア提出を認めていますが、これを導入したJGAは18ホールを義務付けています。9ホールを認めればハーフプレーが認知され、時間短縮の意識がスルーの普及につながっていく。この点も大事なポイントだと思いますね」 ゴルフ場の運営は、経営の収支を司る事業会社と会員から選ばれる理事会によって方向性が決まる。そこで古株の理事が「昼休憩は当たり前」と主張すれば、スループレーの普及が足止めされる。三田村氏が指摘するように「コロナだからスルー」という空気が醸成されれば、大きな前進となりそうだ。

    ミウラは製造の国内回帰実感

    目をゴルフ用品市場に転じると、商況は斑模様の様相を呈す。関東で26店舗を運営する有賀園ゴルフは2月、テーラーメイドの『SIM』とキャロウェイの『マーベリック』が牽引して、昨対40%増を記録したが、 「3月は厳しく見て、昨対3割減を想定しましたが、結果的には15%減で収まりました。ただし、4月はかなり厳しくなることが予想されます。キャッシュを厚く持つことが重要になるので、金融機関との話し合いを進めているものの、金利は0・5%から0・8%など、政府の姿勢とは裏腹に便乗値上げが目立ちます」(有賀史剛社長) ゴルフ用品市場は首都圏の需要が牽引してきたが、首都封鎖が実行されれば一気に冷え込む。日本の法律上、移動の自由を制限する「封鎖」は強制力をもたないが、ひとたび発令されれば人心に大きな影響を与える。それを見越して有賀園は体力温存を図る構えだ。その一方で最大手のゴルフ5は3月、都市部で苦戦、九州、北海道は増加など、地方商圏の底堅さが目立っている。 地クラブメーカー、ドゥーカスの原健太郎社長もそのあたりの動きを実感しているようで、同社の売上は2、3月に前年実績をクリアしたが、理由についてこう話す。 「都市部以外の商圏が中心ということも売上維持の原因です。今後も従来の路線を踏襲して、これまで以上に地方の工房を積極的に攻めたいと考えています。当社はゴルフシューズも扱っており、これがイタリア製ということで目処が立っていませんが、それ以外はまったく悲観していません」 大手メーカーは総じて苦戦を予想しており、首都圏需要の低落を危惧するが、大都市への依存度が低い地クラブメーカーは事業規模が小さいこともあり、今のところ柔軟な立ち回りを演じている。 会員制の通販でオリジナルクラブを販売する日本フローラルアートの山下信治常務も、現段階では、 「コロナの影響はほとんどありません。主要顧客がシニアなのでコロナによる収入減の不安がなく、1本8万円のドライバーも堅調に動いています」 大手メディアは連日連夜、コロナ災禍を報道し、世界の感染者100万人突破など不安材料を喧伝する。これらは感染防止のための警鐘であり、行動制限も当然の話だが、業界の細部を見てみるとすべてが不安一色ではなく、それなりの経済活動が維持されているといえそうだ。 特筆すべきは、これまで中国に一極集中していた生産拠点が、コロナを機に「国内回帰」が始まったこと。兵庫県の三浦技研は自社工場を運営しているが、三浦信栄社長によれば、 「コロナで国内生産が注目されるようになりました」 という。様々なリスクを抱える中国依存から脱し、アジアの周辺国に生産拠点をもつチャイナ・プラスワンが加速する一方で、国内生産の価値が再認識されているようだ。以下、三浦社長との一問一答。 コロナに関わる印象を聞かせてください。 「こんな時期だからこそ、日本の物作りが元気を出さなければと実感しています。国内工場を維持するのは難しい局面もありますが、現状、国内に生産拠点があるおかげで販売店への商品供給に支障はありません。 1月24日発売のアイアン『TC-101』も順調に推移しており、越谷にあるフィッティングスタジオの予約も埋まっています」 苦しくても国内工場を維持してきた。それが報われた格好ですね。 「そうですね。コロナの影響で国内生産に意識が向き始めた。以前は意識が薄かった企業も我々の話に耳を傾けてくれるようになったと思います。『脱中国』と言われますが、それを考えるきっかけになっているのでしよう」 それだけに、工場でコロナの感染者が出たら大問題。工場の衛生管理は大事ですね。 「おっしゃる通りです。そのため事務所棟の入り口には、塩素系の微酸性次亜塩素酸水のビージア水を加湿器のような機械で噴霧して、空間除菌・消毒しています。また、フィッティングは濃厚接触の危険があるので、来場者には除菌・消毒の重要性を強く訴えかけています」 製造の国内回帰は、ある種の朗報と言えるだろう。当初は中国の安い人件費を求めて多くの工場が大陸進出を果たしたが、以後、中国の労賃は急上昇。現在の平均賃金は535㌦だが、これはミャンマーの162㌦、カンボジアの201㌦、ベトナムの220㌦などと比べて倍以上。コスト競争力の魅力はなくなっている。 むろん、国内生産に比べれば割安感は残っているが、中国共産党の一党支配は、コロナ以前にも多くのチャイナ・リスクを現出させた。前触れなく、クラブ工場が軍需工場に衣替えするなどが典型例だ。 かつて、多くの国内メーカーが新潟県の遠藤製作所に鍛造チタンヘッドの製造を依頼していた。その後、中国の台頭で下火になるが、現在は栃木県のササキなどが高品質をウリにした生産態勢を整えている。同社の佐々木正浩社長は、 「コロナの件もそうですが、日本の製造業は国内回帰しつつあります。中国は多くのリスクや人件費の高騰もある。日本で大量生産はしないにせよ、ジャパン・メイドの付加価値がありますから、ゴルフクラブの国内回帰も必然だと思います」 そのような動きが随所に散見される。

    中国工場全面稼働

    生産の国内回帰が起こる一方で、中国の工場も徐々に人員が戻り、3月末にようやく通常稼働に戻った現場も目立ち始めた。そのあたりの事情をトライアルの山本憲一社長に取材した。同社は初心者向けの低価格セットや、グリーン周りでウエッジ数本を持ち運べるセルフスタンドのバッグが主力商品。 中国の工場は現状、どんな感じですか? 「当社の場合は広東省の東莞でクラブ関係3カ所、キャディバッグやヘッドカバーを4カ所の工場で作っていますが、3月末にようやく通常稼働に戻りました。各工場とも従業員150名ほどの規模で、大半の工員が戻っており、全面稼働と言ってもいいでしょう」 ビジネスの目処が立つようになった? 「そう思いたいですね。なんせ、3月の売上は半減でしたから」 半減の理由は? 「ゴルフフェアの中止が大きかったですね。実は、商品自体は旧正月前に9割ほど入荷していましたが、3月中旬に取引店にカタログを配布して、ゴルフフェアで注文を受け、3月末の出荷を予定していたのに、すべて崩れてしまったわけです。 コロナの終息は見えませんが、どうにか取り戻したいと思っています」 また、現地の事情に詳しい日幸物産の傅偉氏も次のように話す。 「コロナの発生源となった武漢で外出禁止令が解除されたのが3月22日。一定の条件をクリアすれば外出できるとのニュースが流れました。これにより3月末から湖北省の出身者も工場に戻り、4月初旬には通常稼働できそうな感じです。 2月初旬に予定されていた納期は2~3カ月遅れるでしょうが、例年5~6月は閑散期なので、ここで遅れを一気に取り返す。そんな流れになると思いますね」 今後2カ月程度で遅れを取り戻し、挽回に努める算段だという。 実際、中国の感染者数は急激に減っているが、それでも安心できるわけではない。日本政府はこのほど、中国の一部からの入国禁止措置を中国全土からに切り替えた。中国の発表数字が信用できないことの裏返しであり、通常稼働に戻った工場で感染者が出れば二番底を迎えてしまう。 このあたりの状況は神のみぞ知るで、まったく予断を許さない。

    平日の満席率8割

    神奈川県横浜市にゴルフ練習場とレストランを併設する「パームスプリングス」は、コロナの影響で痛し痒しの状況だという。どういったことか? 相原裕太社長に話を聞いた。 ビジネスの現状はどうですか? 「レストランの方は厳しいですね。コロナの影響で歓送迎会が相次いでキャンセル。3月は600人弱、4月も今の段階で80人弱の予約が取り消しになりました。いずれも直前のキャンセルが多く、営業計画が立てにくい状況です」 キャンセル料はとれない? 「通常は3日前のキャンセルだと発生しますが、このような状況だと請求できないので影響は非常に大きいです」 練習場はどうですか。 「こちらは好調ですね。当社は1、2階で各18打席ですが、在宅勤務が増えた影響か、以前は平日の満席率が50%でしたけど、現状は80%で推移しています。増えた3割は30~40代が占めているため、現役のサラリーマン層が来場するケースが多いと言えます。休日についてはほぼ終日で待ち時間が発生しています」 大繁盛はけっこうですが、待合室でクラスター感染の危険性もある。 「なので、感染防止には万全を期しています。打席清掃は1時間ごとに行い、打席の椅子は2時間ごとに消毒します。また、ボール購入のコインは毎回アルコール消毒、受付でもアルコール消毒を促すなど、細心の注意を払っています」 その一方、同じく神奈川県の練習場・第百ゴルフは3月28、29日(土日)の2日間、コロナ対策の一環として臨時休業に踏み切っている。山本桂支配人によれば、 「毎日多くの来場者がありますが、3月26日に発せられた県知事からの要請を受け、臨時休業に踏み切ったのです。 医療崩壊につながる感染爆発を防ぐためには、不要不急の外出を避けてくださいとの主旨で、『不要不急』の定義は生活に必要な日用品の購入以外、つまり娯楽やショッピングなどを指すため、当施設もそれに従いました。 迷いながらも勇気を振り絞り、運営姿勢を示したいと考えています」 上記の両社に共通するのは、テレワークの普及などで来場者が増えたことであり、特に首都圏の練習場においては総じて似たような状況になっている。そんな中、第百ゴルフは土日の臨時休業に踏み切っており、経営判断がわかれている。

    仕事を失ったプロがオンラインレッスン

    『ビバハート』や『ヒールクリーク』などのゴルフアパレルを展開するグリップインターナショナルは、 「契約プロを起用したオンライン・レッスンを考えています」(竹内裕美子部長) という。男女ツアーとも開幕の目処が立たず、失業状態のプロゴルファー。そこで窮余の一策としてオンライン・レッスンとなるわけだが、今後に向けて新たな商機となるかもしれない。 「コロナ関連の暗いニュースが世の中に蔓延しているので、何か盛り上げる施策はないだろうかと、そんなことを話し合っているんですね。そんな折、当社契約の横田英治プロからオンライン・レッスンの提案がありました。 東京本社のフロアを使って、そこから発信するという企画で、ゴルフ熱を盛り上げたいと考えています」 竹内部長のコメントを聞くまでもなく、ゴルフトーナメントを含む世界のスポーツイベントは軒並み自粛。日本ゴルフツアー機構(JGTO)は国内3戦目の「アジアパシフィックオープン ダイヤモンド杯」の中止を決定するなど、開幕の目処が立っていない。 日本プロゴルフ協会(PGA)の倉本昌弘会長は3月30日、4期目の会長就任を発表し、併せてシニアの開幕戦となる「金秀シニア沖縄オープン」(4月10、11日)の開催を明言していたが、これも本日、2戦目の「ノジマチャンピオン杯」を含む4月の2試合をいずれも延期する旨発表した。 グランド・ゴールド競技の6試合も延期となり、計8試合が開催未定。女子ツアーは初戦から6試合連続中止など、男子を含めて8億円を超える賞金が消えたことになる。 JGTOとLPGAは本誌の取材に対して、いずれも「選手への休業補償は予定していない」と答えており、プロゴルファーは失業状態になっている。 その一方、米PGAツアーは選手やキャディに対して金銭的な支援を行うことを明らかにした。対象者は3月8日時点でフェデックスカップ順位150位まで、シーズン終了後に配分されるボーナスを最大50%、上限10万㌦まで受け取れるとのこと。キャディも「キャディ基金」に金銭的な要望ができるという。このあたり、日米の違いが浮き彫りになった格好だ。 米ツアーの相次ぐ中止は様々な波紋を広げているが、その波をもろに被ったのがゴルフ専門TVのジュピターゴルフネットワーク。多額の契約金で放映権を得たものの、肝心の試合が飛んでしまった。前田鎮男社長が苦しい胸の内をこう語る。 「そんなわけで現状は、過去の名勝負をかき集め、新たな番組を編成中。タイガーの優勝や松山が活躍した試合の特集などで乗り切ろうと思っています。 ただ、中止や延期が長期化すると、経営の圧迫要因になりかねません。コロナという不測の事態なので、補償面について請求できるか検討中です」 昨秋のzozo選手権でタイガー・ウッズが優勝。米ツアーへの注目度が格段に上がり、その流れで今夏の東京五輪につながれば、有料視聴者は大いに増えるはずだった。むろん、五輪の放映権はもっていないが、相乗効果は期待できた。 そのような計画が根底から崩れてしまった。新型コロナウイルスは、各社の事業計画を粉砕して、終息の気配は見えていない。
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