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  • 自粛ドミノで分かったトーナメントの「構造的欠陥」

    小川朗
    山梨県甲府市生まれ。甲府一高→日大芸術卒。82年東スポ入社。「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女のメジャー大会など通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。フリージャー...
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    前夜祭やめます。プロアマ戦中止します。ギャラリーを締め出して無観客試合。右見て、左見て、政府声明が出たら、大会中止。 新型コロナウイルスの感染拡大は2020女子プロゴルフの序盤戦に自粛の雪崩を引き起こした。開幕戦のダイキンオーキッドレディスに続き明治安田生命レディスヨコハマタイヤも中止に。 すべては主催者頼みという構造的欠陥が、「自粛の連鎖」によって顕在化した。

    中国からアジアへと広がった自粛ドミノ

    波及のスピードは関係者の想像をはるかに超えた。最初にドミノが倒れたのは、新型コロナが発生した中国だった。中国女子プロゴルフ協会(CLPGA)ツアーは序盤4試合の開催が一旦すべて見送られた。その後開幕戦の香港女子オープンの延期を発表。当初2月28日だった初日が、5月8日になった。 その翌週に海南島で開催予定だった米女子ツアー(LPGA)と共催の第2戦、ブルーベイLPGAは中止。続く2試合も延期が決定した。 2〜3月の稼ぎ場所を失った女子プロゴルファーにとっては大ショック。その中に、日本の女子プロゴルファーは10人もいた。 実はこの10人、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)が行った「愚策」の被害者たちでもあった。JLPGAは原則的にQTの受験資格を正会員のみに限定。資格を持っていない選手はまずプロテストを受験し、合格して初めてQTが受けられる。 すでに正会員の資格を持っている者を「保護」するもので、外国人選手や若手にとって、門戸は一気に狭まった。実力がありながら一発勝負に失敗した若手も多くいる。不合格となった選手は行き場を失ったが、その中には闘争心を失わず、海外へと戦いの場を求めた選手も多くいた。 そうした選手を受け入れたのが日本とは逆に、外国人選手に大きく門戸を開放したCLPGA。今年の1月15日から18日まで「中国のハワイ」とも呼ばれる海南島(海南省)の神州ゴルフクラブで開催されたQTには、34人もの日本人選手が大挙参加した。これは16人がエントリーした昨年の倍以上となる。 プラチナ世代の佐渡山理莉ら10人が今年のシード権を得たわけだが、シーズン開幕を目前としながら、またしても試練に見舞われてしまった。 こうしてみると、日本で起きた「自粛の雪崩現象」の発端が中国であったことが分かる。ブルーベイに端を発しアジアの2試合(ホンダLPGAタイランド、HSBC女子世界選手権)にも広がった。他の試合との兼ね合いもあり米女子ツアーの3大会は延期ではなく、中止の選択を余儀なくされてしまった。 このニュースは、日本でも大きく取り上げられた。中止の2試合に渋野日向子が出場予定だったためだ。渋野にとっては日本ツアーの開幕前に東京五輪の出場を賭けたポイントを稼ぐ機会を失ったことにもなった。

    後手後手に回った中止決定

    中止が決まった中国での2試合の翌週に予定されていたのが日本女子ツアーの開幕戦・ダイキンオーキッドレディス(3月5~8日、沖縄・琉球GC)。例年であれば、トーナメントウィークの前々週の月曜日、2月17日に報道関係を含めた各所に大会の実施要項や取材要領のリリースが流され、開催準備は最終局面に入って行く。 だが、今年は違っていた。その2月17日が、開催から中止への分水嶺となり、リリース発送のゴーサインは出なかった。一方で、日本国内でも自粛ドミノのスピードが上がる。 この日の午前、東京マラソンを主催する「東京マラソン財団」がエリート選手176人、車いすの部30人の規模への縮小を決定。3万8000人のランナーは、走ることが出来なくなった。 この日は東京マラソンだけでなく、多くのイベントが苦渋の決断。人気グループの嵐も春に予定していた中国・北京公演の中止を発表。宮内庁も天皇誕生日の2月23日に予定されていた一般参賀を取りやめると発表した。 それでも翌18日の段階で、日本女子プロゴルフ協会も主催者サイドも「開催の予定で準備しています」と前向きなコメントを出していたが、2日遅れの19日に大きく自粛への舵を切る。 大会初日まであと15日に迫ったこの日、ダイキンオーキッド側がトーナメントの4日間すべてを無観客で行うことを発表した。 この段階で、すでに感染リスクの高い前夜祭とプロアマは先に中止が決定していたことも、関係者への取材で明らかになって来る。主催のダイキン、琉球放送、日本女子プロゴルフ協会は「ギリギリまで検討を重ねた結果の苦渋の決断」と説明した。 しかし無観客試合という苦渋の決断すらかなわなくなる。開幕まで1週間を切ってしまった28日、遂に大会そのものの中止が決定してしまった。 ずるずると引き延ばした末の中止。決断が遅れれば遅れる程、傷口は広がる。すでにプレスセンターなど多くの仮設建築物も出来上がり、トーナメントの開催に準備万端だった。

    主催者ファースト?

    ドミノは止まらない。開幕戦に続く2戦目の明治安田生命レディスヨコハマタイヤゴルフトーナメントも中止が決定。大会ホームページによれば2月24日に厚労省が出した「ここ1~2週間が拡大か収束かの瀬戸際」との見解と、26日の「大規模のスポーツや文化イベントについて、今後2週間程度、中止か延期か規模縮小を求める」という政府発表に対し、最大限の協力として中止を決定したとしている。 これによって自粛の流れがしっかりと作られ、後続の大会が競技を開催するハードルは一気に高くなってしまった。3月13日、Tポイント×ENEOSも中止を決めた。 無観客でも開催する方法はなかったのか。中止された大会に深く関わる関係者の一人が本音を明かしてくれた。「トーナメントの準備は半年以上も前から始まって、時にはスタッフ同士で激論を交わしここまで来ているワケですから、中止はつらい。でも開催して感染者が出たら『それ見たことか』となる。中止なら『何で開催出来なかったの?』と聞かれても『仕方なかったでしょ』と言い返せる。そういうことです」。 自己防衛最優先の、横並び主義。それが今回も発揮されたわけだ。トーナメントの経費を出す主催者に、おんぶにだっこできたLPGAが、相変わらず何も決められないことも改めて露見した。3試合の中止、などと言う形ではなく、1試合、1試合が徐々に決まっていくことがそれを裏付けている。これでは選手も、その周辺も予定が立たず、仕事の調整もできない。選手ファーストで考えれば中止にしても強行にしても、もっと早い時期に方針を打ち出すべきだったことは明白だ。 中止が決まった時、沖縄への人と物の流れも始まっていた。早々と沖縄入りしていた選手もいれば、多くの機材をフェリーに載せてしまった関係者もいる。早割で格安チケットを購入したケースもあれば、複数のスタッフでホテルを押さえたケースもある。直前の中止による混乱は、末端の関係者ほど深刻なダメージを与えた。 自粛、自粛で一番苦しい思いをするのは、いつだって弱者だ。トーナメントをスポンサードするような大企業よりも受ける傷は、はるかに深い。
    この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2020年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ用品界についてはこちら
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