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コロナですべての準備が消えたゴルフトライアスロン それでも前向きに考える

ニュース 松尾俊介
ゴルフトライアスロン

筆者は2018年にゴルフトライアスロンという競技を立ち上げ、2019年10月に初めて大会を開催しました。これはゴルフ、ラン、自転車の3種混合競技で、初開催の段階からその将来性に確かな手応えを感じました。多くのゴルファーが開催を待ちわびていたからです。

そこには何が存在していたのでしょうか? 最初に息子とやってみて「これは面白い」と思ったのは、知的ゲームのゴルフに体を激しく使うスポーツが組み合わされ、それがプレイ後の達成感や爽やかさに繋がったからだと感じました。

そして、この感覚を求めている人はそれなりにいるのではと考えました。

ところが、今年4月に運営団体を一般社団法人とし、4大会を立ち上げようとした矢先、新型コロナウイルスですべてが水泡に帰してしまいました。筆者及び関係者の落胆は筆舌に尽くしがたいものがあります。

しかし、前を向いていきましょう! ということで、今回はゴルフトライアスロンを立ち上げた経緯を振り返りつつ、コロナ禍に負けないポジティブシンキングについて書いてみたいと思います。

日本のゴルフ場の高い壁

ゴルフトライアスロン

ゴルフトライアスロンの開催には、高い壁が存在していました。ゴルフ場で担ぎのゴルフやバイク走行、そしてランニングをやらせてくれる場所が少ないからで、場所の選定はとても高いハードルになりました。

実は、構想から最初の大会を実現するまでに5年の歳月を費やしました。日本のゴルフ場経営は画一化(どこもほぼ同じシステム)が目立ち、多様性が求められる現代社会の中でも遅れている部分です。日本社会の閉鎖性、他と同じにする同調性が強くあり、「自由なゴルフ」を阻害する原因となっていました。

筆者が以前勤めていたキャロウェイゴルフの本社幹部は「週末に子供の声、女性の姿がほとんど見えない日本のゴルフの将来が心配だ」と話していましたが、その言葉も強く心に残っています。多様化を進めて選択肢を広げないと、日本のゴルフはガラパゴス化して衰退の一途を辿るでしょう。

このような状況を見るにつけ、筆者はゴルフの多様な在り方を訴求するひとつの起爆剤としてゴルフトライアスロンの普及に本腰を入れました。ゴルフ場はゴルフをするだけの場所から、持てる施設の有効利用をすることで、新たなビジネスが創造出来るのではないか、と。

山は動く

ゴルフトライアスロン

昨年、津CC(三重県)で大会を開催し、それをメディアが取り上げてくれたことでゴルフトライアスロンの認知度は広がり、ゴルフ場関係者にも理解が進んだことは幸いでした。

その後、ほかのゴルフ場を訪問し、次回以降の協力を呼び掛けました。初開催以前は「お話はわかります。とても面白い競技であることも。しかし、うちでは無理です」といって断られることがほとんどでしたが、岡山県で訪問した4つのコースが前向きの返事をくれました。これにより筆者は、大きな手応えを感じました。

開催に際し、ゴルフ場には以下の点を求めました。

  • ゴルフ場としてゴルフトライアスロンを理解して開催を希望するところ
  • ゴルフ場内のカート道やコースの作業用道路などを利用してバイク(MTB)レースが開催できる
  • 大会のためにコースを平日だけでなく日曜または祝日に貸切りを提供できる
  • 競技の普及のためにゴルフ場内でバイクやランニングができる機会を積極的に提供できる
  • 競技普及のためにゴルフトライアスロンの講習会を定期的に開催できる
  • ゴルフトライアスロンに支援してくれるスポーツバイクショップが近くにある
  • 地区でのトライアスロン協会、サイクリング協会、ランニング協会と良好な関係を構築できる(大会開催に他の協会との協力が必要です)
  • 自治体の観光課や観光協会との良好な関係がある/できる
  • 地元のメディアとの良好な関係がある/できる
  • 大会に際してギャラリーを受け入れることができる(指定された場所で)

かなり思い切った提案でしたが、皆さん受け入れてくれました。大きな前進です。

一つの提案が競技を、ゴルフ場を面白くする

もう一つ大きな進展がありました。当初、競技の順番はRUN→GOLF→BIKEでしたが、TV局のスポーツ番組担当者からこんなアドバイスをもらったのです。

もし番組を作るとしたらGOLFを最初にして、そのスコア順にBIKE→RUNにすることで順位がわかるだけではなく、選手も観客も視聴者もワクワク、ドキドキするのではないか?

確かにその通りです。GOLFを最初に行うことは、競技の運営上18Hすべてのホールからショットガン式スタートをする必要が出ます。この方式であれば参加者数を大きく伸ばすことができ、ゴルフ場に大きなメリットが発生することが分かったからです。

具体的にはこうです。18Hに2組(4人一組)とした場合、144名が同時にプレイできます。日が長い夏至近くであれば「鉄人の部」と「チャレンジの部」を午前と午後に振り分けることで最大288名の集客が可能となり、ゴルフ場にも大きなメリットが生じます。

選手はレストランを利用するし、ギャラリーが増えれば施設関連の収益も少なからず見込めますので、このあたりもビジネスチャンスでしょう。

今までは開催に漕ぎ着けるため一人で悩み考えてましたが、実際に開催すると多くの人から様々な知見が寄せられ、新しいやり方が見えてくる。これが最大の収穫でした。

同時に開催県のトライアスロン協会に働きかけた結果、日本トライアスロン連合からの推奨もあり、競技として安全管理部門や選手募集、競技の説明など、多岐にわたる協力を得られたことも大きな進展といえるでしょう。

身にしみた法人格の必要性

ゴルフトライアスロン

その一方で、より現実的な課題としては「資金集め」がありました。参加者からの参加費だけではまかなうことが難しく、資金面で安定した活動ができるようにするためにはスポンサーが不可欠です。

筆者は企画書をもち、様々な企業に足を運びましたが、その際に必ずこう聞かれました。

「ご支援させていただく場合、その対象は個人ですか、任意団体ですか、法人格を持った競技団体としての組織ですか?」。特に上場会社はこの点に厳しく、「個人」では相手にしてくれません。そこで、法人化を早急に進める決心をしたのです。

いろいろ調べた結果、「一般社団法人」が良いとのことで、仲間の会社でお世話になっている司法書士に手続きを進めてもらいました。大変なのは法人化をするにあたっての内容、規約をどのようにするかで、何回も打ち合わせをした結果、シンプルな形でまとめてもらいました。

競技を開催するだけではダメで、継続して大会の開催を行い、普及を進めていくのであれば法人格を持つことは必須でした。これも経験、勉強となったものです。並行して「ゴルフトライアスロン」の商標を特許庁に申請、昨年11月に登録しました。

仲間たちはそれぞれ仕事を持っている中で、スケジュールを調整しながら上記の仕事を分担してくれました。ゴルフ場への説明、スポンサー予定企業への説明など、昨年の第1回大会終了後から目の回る日々を過ごし、3つの地域大会と決勝大会、合計4つの大会開催が決まりました。

これらをホームページで告知し、3月には参加者の募集を始めたわけですが、そこに新型コロナウイルスのパンデミックが重なってしまったのです。

新型コロナウイルス感染症の影響

最初は希望的な観測で、夏までには収束するのではないか、そうであれば大会の延期や中止は免れるかもしれないと見ていたのですが、感染がヨーロッパに、そして米国にもすごい勢いで拡大するにつれて、延期の方向に舵を切ることにしました。

東京オリンピックの延期が決まる前のことです。すぐに開催コースと話し合いました。今後の状況によって延期、中止もあり得ること、その場合の対処方法も話し合い、4月の末には発表する予定で準備していたのですが、政府の緊急非常事態宣言が4月7日に発令され、8日から施行するというニュースを受けた形で、<2020 ゴルフトライアスロン in Japan>の来年への延期を正式に発表したのです。

遅すぎる、という声もいただきましたが、参加予定者や関係者には概ね理解を得られたとものと感謝しています。ここに至るまでのプロセスは一言では語り尽くせないものがあっただけに、苦渋の選択という表現で理解していただきました。

ゴルフトライアスロンだけでなくオリンピック・パラリンピック関係者はもちろん、多くのスポーツイベントの主催者は同じ思いだったと察します。

被害者で良いのだろうか、前向きな考え方はできないものか

しかし、我々は新型コロナウイルスの「被害者」として、不幸や不利益を嘆き悲しんでも仕方ないと思います。むしろ、人類が自然に対する「加害者」となっていることに対する自然界からの強烈なメッセージ、「人類の行き過ぎた行為に対する強い警告」と理解すべきではないでしょうか。

そう思うと人間の考え方、行動に大きな変化が生じてきて、世界が少しずつ正しい方向に変化をする、ターニングポイントとなる可能性が出てきたと考えられます。現実は生活が一変するほどの大変なピンチですが、立ち止まって考え方を、見方を変えることで、これから先をよくするチャンスにできるかもしれません。

事実は一つですが、どう見るかで変わるからです。積極的な思考(ポジティブシンキング)か否定的思考(ネガティブシンキング)なのか、この2つです。どんなに苦しい、厳しい中においても、遠くに出口の明かりが見えると人は元気が出るものです。

私事ですが、キャロウェイゴルフの創始者であるイリー・キャロウェイさんから晩年、よくこの言葉を聞きました。

”Enjoy Your Game”

ゴルフメーカーのトップの言葉なので、多くの方は「あなたのゴルフを楽しんでください」と解釈すると思いますが、筆者はもっと深い意味があると気づいたのです。それは、Gameを人生に置き換えることです。

事業を成功してきた人は、そこにたどり着くまでそれこそ何回も、何回も失敗をして、それでもめげずにやり通したからこそ成功したのです。

ある冒険家が深い山中で遭難し、怪我をして動きがままならない状況の中で、絶対生きて帰ってみせるという強い信念のもと生還した事例もあります。あの岩場まではえずって行こう、そうしたら救援隊が見つけてくれるかもしれない。でもダメだったら次の目的地まで、と一つ一つの行動を、あたかもGameをするようにこなしていったのだと言います。

負けず嫌いの人はGameに負けると、もう一回、あと一回だけと言いながら勝つまでやり切ります。人間だから、ネガティブな不安もふと浮かぶでしょう。それでも目的を達成するまで、できると信じて粘り強く続けること。

人間の体(脳)は、積極的な思考をしていると、体にそのようにする反応を起こさせる酵素が出て神経を刺激し、筋肉に命令を発するそうです。

どのような悲観的な現実が自分に降りかかっても、闘争か逃走かでは全く違う反応が体の中に起こるのです。そして、闘う、と決めた以上、少しでも勝つ可能性を探し知恵をめぐらして行動します。キャロウェイさんは身をもってそれを経験してきたことを”Enjoy Your Game”という言葉で表現したのです。

ゴルフトライアスロンは一つの競技にすぎませんが、それがもたらすものは日本のゴルフ場のあり方、プレイヤーのゴルフスタイルに大きな変化を与えるものだと確信しています。

“Hit Till Happy”<成功するまで何度でもやりなさい>これもキャロウェイさんの言葉です。
あきらめず成功するまで何度でもやり抜きましょう!


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ライター紹介 ライター一覧

松尾俊介

松尾俊介

1949年12月23日生れ  神奈川県出身
東海大学工学部航空宇宙学科卒、在学中は体育会ゴルフ部副将および関東学生ゴルフ連盟の連盟委員を兼務。パイロット志望から一転してゴルフ用品販売業務に携わる。ゴルフ工房を主宰しながら1988年からフリーランスゴルフライターとしても活動。国内外合わせて25のゴルフクラブメーカを取材し、記事として各誌に掲載する。「良いゴルフクラブとは何か」をテーマに取材活動を続ける。1989年米国キャロウェイゴルフの取材と掲載記事をきっかけに親交を深める。

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