休業の40日間で芽生えたアフターコロナへの対策と新たなチャレンジ

休業の40日間で芽生えたアフターコロナへの対策と新たなチャレンジ
横浜市栄区にあるゴルフ練習場 第百ゴルフクラブは、神奈川県知事による新型コロナウイルスについての会見を受け3月28、29日(土日)を臨時休業。 政府からの緊急事態宣言を受けた翌4月8日より完全臨時休業とした。本社指示だった。 3月2日の時点で場内ティールームでの飲食を止め、テイクアウトのみとした。きっかけは、混み合った店内での会話だった。高齢のお客様同士が「俺は37.5℃の熱なんてへっちゃらだ、普通にゴルフできるよ」「俺もだよ、熱なんて測ったことない」。 これは危ないと思った私は、翌日から当面の間臨時休店に踏み切った。 その後、日々情勢が変わったのは周知のとおり。世界はパンデミックに突入し、多くの業種が休業要請の対象になった。 屋外のゴルフ練習場は「対象外」となったため、近隣の練習場は営業続行し、休業の当施設にはクレームを含め多くの問い合わせが相次いだ。「第百はなぜ営業しないのか?」「休業要請外れただろう」「俺の健康維持をどうしてくれるんだ」―。 そこで我々はこう答えた。 「スタッフとその家族の命、お客様とその家族の命を守ること。地域感染の拡大を防ぎ、医療崩壊にならないように」と。一部のお客様からは失笑交じりにこんなことを言われもした。 「はぁ?馬鹿じゃないのか?命守るだって?」 未知のウイルスは怖い。スタッフを自宅待機とし、休業してすぐに私は考えた。第百ゴルフは元に戻らないかもしれない。臨時休業中に先を見据え、変化の形を作らなくてはならないと。 そこでランチデリバリーを始めた。場内の竹林から収穫したタケノコを100本近く販売し、近隣の方に喜ばれた。そしてeラーニングの準備に取り掛かった。 ツアープロやティーチングプロのeラーニングはよく見かけるが、ゴルフ練習場発信のeラーニングはまだ珍しいそうだ。専属プロの反応もそれぞれ違う。これまでSNSとは無縁だったが、急に理解しなくてはならなくなり、多少強い意見交換もあった。 その反面、新しい風を吹かせてくれる若いプロスタッフも入社して新鮮味が加わった。 5月10日、練習場主催でZoomミーティングを開催し、eラーニングに関わる反応を探った。午前・午後の部に30名のお客様が参加して、6名のプロスタッフを交えて建設的な意見交換ができた。 全てのご意見は宝物。その「宝物」が新鮮なうちにプロスタッフと一緒に形にしていく。ピンチの時は思い切ったことができるチャンスでもある。私は「チャンスを逃さずアイデア出して、スピーディに動きましょう!」と檄を飛ばし、プロの賛同も得て、まずは初々しい動画をYouTubeにもupした。 コロナ収束後、仮に元に戻れたとしてもそれはラッキーでしかない。 この機に新しいプラスαを創造すれば、第百ならではの差別化になるはずだ。 営業は5月18日に再開した。この40日間の休業で第百には、危機感と変化と希望が生まれた。大変なのは今ではない、これからだ。
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2020年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ用品界についてはこちら