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地クラブの神髄 – 日幸物産『新生DRETTO(ディレット)』

ニュース 吉村真
地クラブの神髄 - 日幸物産『新生DRETTO(ディレット)』

二〇〇八年、初代が誕生した『ディレット』。

兵どもに欲され、幾度となく復活し、姿を消した。時は一回りし、企業の体も転じた。巷間では舶来品が猛威を振るい、時勢は未曽有の疫病に翻弄されている。その窮地に立ち向かうのが『新生ディレット』。

五十四年目にして、NEW日幸物産の挑みは、生死を賭けた戦い。その神髄に迫る。

老若男女へ右向き一度の理

 地クラブの神髄 - 日幸物産『新生DRETTO(ディレット)』
左から、製造管理:傅煒氏、アドバイザー:田中文雄氏、技術顧問松浦真也氏

昭和四十一年、部品問屋として興されたのが日幸物産。六年後にはパーシモンヘッドの輸入を手掛け、さらに十年の時を経て国内工場を操業。以後、素材はチタンへと変遷し、中国に製造工場を建て、パーツのOEM生産を請け負った先駆者。姿や材料の変遷を識る。

遡ること一年前。日幸物産を買収したのがゴルフレボリューション(GR)。日幸物産はゴルフ場、インドア施設を運営する企業群の傘下に入った。

「ゴルフ人口の増加に寄与する」

それがGRの夢であり、日幸物産の新たな大志。しかし、一年を経ることなく、前代未聞の疫病が世界で猛威を振るう。例にもれず、実業が儘ならない。

牽引する石川卓社長曰く、「此れが飛躍の一手」――。 そこに集うのが技術顧問・松浦真也、アドバイザー・田中文雄プロ、製造管理を担う・傅煒。四人の侍の想いが『新生ディレット』である。

初代の『ディレット』が世に生を受けたのが二〇〇八年。競技者に好まれ、廃盤復活を繰り返した。一方、二〇一三年生まれの『ヴィバル』。ゴルフを楽しむ層に好まれ、生業の軸となった。

「とはいえ、『ディレット』も多勢に求められた」

ゆえに当初、『新生ディレット』は中上級者向けに事が進んでいた。しかし、開発当初、田中は過去の作品を眺め、新たな作品にこう口を開いた。

「小ぶりで、誰でも、女性でも使える。そして顔がいい」

田中は、そう感じた。田中にはプロゴルファーとして、クラブに一家言ある。「女性でも使えるよう、ロフトが寝ているモデルが必要だと言っている。ただ、ロフトが寝れば、顔を左向きに作りがち。それが間違い。左足踵で構えた時に、顔が真っ直ぐ正対していなければならない。スタンスの左三分の一に構えた時にスクエアなのが、ゴルフのストレートライン」

よって、『新生ディレット』は使い手が広いながらに、右向き一度。ライ角も同じで、昔と異なり、使い手の身長も高くなったことも指摘する。それに加え、田中が続ける。「どんなヘッドを作っても完全ではない。なぜなら使い手が影響するからだ。ならば、構えを決めることができるヘッドを作ってあげる。ワンパターンに構えられるヘッドが良い」

田中の想いはとどまらない。「インパクト時にフェースが開いているか、開いていないか。単純に言えば、それだけのこと。それを上級者は上半身を巧く使うことで、器用に熟しているだけ。それを初中級者に、『腰を切る』とか、『下半身から始動する』とか言っても無駄。腕を振るんだから。それがゴルフを成立させる。何も考えずに腕を振る。何も考えずに腕を振ることができるヘッドでなければならない。構えが決まることが大事。その構えは、だから、右向き一度」――。

振りが速くとも遅くとも、構えの基本は不変。それが数字上、右に向いているだけ。それだけではない。腕を振る。振ることができる姿がある。そして速く振れない使い手に対する意匠もある。それが日幸物産五十四年目の神髄でもある。

固めず潰す和の国の飛び道具

 地クラブの神髄 - 日幸物産『新生DRETTO(ディレット)』

田中が力説する「振る」は、挙げて下すに非ず。挙げて振る。ひいては、構えを単純に備える。そして幾万の使い手のゴルフをシンプルにする。そこには日幸物産の、そして開発を導いた松浦の学びがある。「スイングは球を捉える前後で弧を描く。クラウン右側の弧の頂点はクラウンの弧を等分したところより少しだけ下に位置し、クラウンの頂点と、フェースとクラウンのつなぎ目を等分した点の三点が一直線になり弧を描く。それによって弧を描くスイングが想起できる」

それを、パーシモン、そしてメタル、チタンと素材が変遷し姿形が変り果てる中で学んだ。市井で舶来品が重宝される世でも、求める姿は揺るがない。松浦が語気を強める。「いわゆる海外の大型ヘッドは、やはり強靭な身体を持つ欧米人向けです。あれだけMOIが大きなヘッドは、日本人のヘッドスピードでは当たり負けする。ヘッドが開く。外国人だから真っ直ぐ引いて、真っ直ぐスイングできる。結果、構造も変わる」

松浦は「バチコーン」という言葉を用いた。強靭な体躯を持つ外国人の球の捉えを、そう表す。よって、意匠も変わる。「それらの多くが、フェースとクラウンのつなぎ目部分(角)にリブを入れて補強し、剛性を強めている。フェース素材の軟度を除いて、ヘッドが硬いと感じるのはそのため」

 地クラブの神髄 - 日幸物産『新生DRETTO(ディレット)』

舶来品の多くがヘッドを硬く、ボールを潰して飛距離を得る。一方で、振る速さが遅ければ、ヘッドを潰して球を飛ばす。ゆえに『新生ディレット』はリブを用いず、ヘッドを潰す。それであれば、田中がいう、「女性でも使える」にも通底する。

ヘッドを潰す創意工夫はほかにもある。それがソールに配された溝。「『新生ディレット』はヘッドを、フェースを固めない。吸い付く打感を姿を変えずに成す」

松浦が加える。「この二年ほどで、ヘッド開発への考え方が変わった。例えば、『二本柱』のドライバーは柱より前方で反発力を向上させて飛ばし、それ以後は重心特性を司っている。一方で日本のゴルファーに向けた開発はヘッド全体で飛びを考えなければならない。それにこの数年で気づいた」

『新生ディレット』の謳い文句は、「振れば捉まる」――。振れる姿であり、捉まえて飛ばすデザイン。その神髄は、日幸物産初となる飛び系アイアン『ディレット アイアン』にも相通ずる。

地クラブを広く新たな使い手を求めて

 地クラブの神髄 - 日幸物産『新生DRETTO(ディレット)』

飛び系アイアン――。プロギア『egg』に始まり、ヤマハ『UD+2』など、近年一つの分野を成している。しかし、その製造は高い技術を要してきた。肝となるのはバネ鋼のL字フェース。鍛造で薄く作るには、金型製作と製造工程に困難を極める。「特に鍛造する温度、押さえる力、そして時間。これまでは大手工場でしか生産できなかった」

中国の工場を知り尽くす傅の言だ。「だから、中国の工場には感謝している」 とはいえ、開発は長期にわたった。傅によれば、「フェースだけで半年かかった」

それだけに、生まれた『ディレット アイアン』には自信を漲らせている。

バックフェースを深く抉り、重心を下げ、構えた際にソールが見えない限界までソール幅を広げ、重心の深さ14mmを達成した。大手が提案するロフトにも習った。重心位置も番手によってフローさせた。これまでの「飛び系アイアン」の弱点を、中国の中小工場の技術革新によって成した。

その一つが先のフェースに用いたバネ鋼「KS301」と、軟鉄鍛造ボディの「S20C」の採用。反発力の向上と打感に拘った構造。それに加え、ドライバー同様、吸い付く打感を実現するためEPDM(エチレンプロピレン)ラバーを、バックフェースのポケット部に配した。

とはいえ、齢七十四の田中文雄は『ディレット アイアン』に首を傾げる。「飛べばいいってもんじゃない。だけど人間は飛ばしたい。昔は全部軟鉄鍛造だった。でもボディを軟鉄鍛造にしたから吸い付く。球を飛ばしたいのは当たり前。方向性は腕。科学の進歩で巧く作っている。球も止まる」

首を傾げた顔が、笑顔に変わった。

雨後の竹の子の如く、地クラブが表れ、その一部始終を傍らで見、そして時として手を貸してきた松浦には、夢がある。「地クラブが台頭して、多くの拘り派が魅了された。クラブマニア、上級者、新しもの好きだが、それが一回りしたら、地クラブに係う者たちは生きづらくなる。出来合いのクラブに慣れ親しんだ人々にもオリジナルクラブをオファーしたい。それが市場に風穴を開けることになる」

それが『ディレット アイアン』。大手にしか作れなかった飛び系アイアンを上市する。新たな市場をパーツで創る。

それが新生日幸物産の新たな姿。そして、石川がグループ会社として謳う、「すべてはゴルファーのために」

という文言に共鳴する。それに共感する売り手の存在も『新生ディレット』を鼓舞する。

美しく、柔らかく、優しいまるで秋田美人

 地クラブの神髄 - 日幸物産『新生DRETTO(ディレット)』

四半世紀にわたり行き来し、日幸物産を識るのがリメイクショップ田奈加の田中晃社長だ。新生『ディレット』を見て開口一番、「綺麗な顔だねぇ」

破顔一笑。続けざまに、「綺麗だし、ガチガチしていない。シニアやレディスのゴルファーにも合うよね」

『新生ディレット』の何かしらを語る前に、田中晃は、そう笑みを浮かべた。

嬉しそうですね。そう問うと、「だって、綺麗な顔しているでしょう。線が滑らかで、フェースが見えてボールが上がりそうに見える。フェースアングルがマイナス1度と聞いたけど、開いて見えないよ。捉まるよね」

 地クラブの神髄 - 日幸物産『新生DRETTO(ディレット)』

田中晃の称賛は止まらない。「ヘッド全体が柔らかく見えるね。ヘッドスピードが遅いシニアやレディスでも使える柔らかさ。ホーゼルも長めだから、シャフトの特性を生かせるので、誰でも飛ばせるんじゃない」

開発陣の思惑通りだ。先述の田中プロは、「シャフトを合わせれば、上級者でもシニアでも、女性でも使えるのが『新生ディレット』。美人だしね」

そう語っていた。呼応するように、田中晃も、「まるで秋田美人」と評す。

一方、『ディレット アイアン』を見た田中晃は、「ネックが短いし、球は上がるよね。ロフト立ってるの? それにしてはネックがストレート。引っかかるイメージがない。バックフェースも手間がかかっているね。ソールも幅広いし、簡単なクラブだよね」

田中晃が、また笑顔になった。「ドライバーにしてもアイアンにしても、美人だし優しい姿。売れると思うし、売りたいと思うよね」

兵どもに求められた『ディレット』が優しい秋田美人として生まれ変わった。それを即時に感じ取る売り手がいる。すべてはゴルファーのために。新生日幸物産、『新生ディレット』の神髄は、そこにあるのかもしれない。〈敬称略〉


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ライター紹介 ライター一覧

吉村真

吉村真

1974年1月22日生まれ、長崎県出身。
パーツブランド、ゴルフ場経営、中古ゴルフチェーン、ゴルフ雑誌を渡り歩き、現在は「月刊ゴルフ用品界」で地クラブを中心に取材、執筆。
国内を始め、中国、台湾、米国のゴルフ用品工場の取材経験もあり、地クラブ・工房ビジネスへの有益な情報発信、国内外の製造拠点などの取材を通してゴルフ用品市場の発展に貢献したいと、東奔西走。ほかには日本ゴルフ用品協会広報委員会アドバイザリースタッフ、販売技術者資格(日本ゴルフ用品協会認定)取得。
プライベートでは1歳男児の日々の成長と格闘中。

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