緊急事態宣言が5月25日に全面解除された。私が勤務するゴルフ場は東京都内にあり、都心にも近いということで53日間の営業自粛(クローズ)を経て、6月から営業を再開した。
ゴルフ場では、どのような新型コロナウイルス感染予防対策を行なっているのか。それに対してプレーヤーの反応は?
以下、私が勤めるコース(歩きプレー)での対策を中心に述べていくが、時代の変化に対応できない人の特徴についてもキャディ目線で指摘したい。
まず、ゴルフ場の対策だが、セルフ用の手引きカートを導入した。メンバーの中には、人との接触機会を減らすため、セルフプレーを希望する人もいるが、キャディ付きが基本のゴルフ場では、キャディの雇用を守らなければならない。同時に健康や安全にも配慮し、さらにプレーヤーに対するサービスも考慮しなければならないところが少々やっかいだ。
営業を再開してから2週間、キャディサービスは、①原則クラブの受け渡し、ボールの手渡しはしない。②ボール拭きはしない。③グリーンには上がらない。ということを試みたが、プレーヤーは自分からクラブを持って行こうとはしないし、打った後に当たり前のようにキャディにクラブを渡す。仕方がないのでゴルフ場側は「クラブの受け渡しは臨機応変に対応してくれ」と言い出す始末だった。
クローズ期間中、メンバーの中には、近隣のコースでプレーをしていた人もいるようだ。その際、コロナ対策のガイドラインをあまり守っていないゴルフ場のキャディは、コロナ以前と同じように業務を行っており、それと比較して、「○○ゴルフ場のキャディはなんでもやってくれた」と言っては私たちを困らせた。
そして一番の問題は、高齢のゴルファーほど「新しい生活様式」に対応できないでいることだった。彼らは、営業が再開されたゴルフ場は、以前と同じように自分たちを迎えてくれると思っていたようだ。
行動創造理論を提唱する齋藤英人は、時代の変化に対応できない人の思考の特徴として、次の3つを挙げている。
⒈自分の都合だけで考える。
⒉過去の経験からしか判断しようとしない。
⒊自分にだけは関係ないと思っている。
また、心理学者の河合隼雄は、「昔はよかった」と言い出したときは、「『自分も時代の変化についてゆけなくなったのか』と考えてみる必要がある。」(「こころの処方箋」新潮文庫,1998年)と説いている。高齢者に限らず、これらに心当たりがあるゴルファーは、自らの行動を省察してみる必要があるのではないだろうか。
再開から2週間が過ぎ、対策は徐々に緩和され、キャディサービスは「通常」に戻ることとなった。
しかし、ゴルフ場における感染拡大防止のガイドラインは、ゴルフ場の従業員とプレーヤーの両方のために作成されていることを忘れてはならない。
その上で、「最優先されるべきは、『ゴルファーと従業員の健康』」であると述べ、そのためには、「従来と違うサービスの提供に成らざるを得ない」ことをプレーヤーに理解してもらう必要があるという。コロナにより時代は変わった。それぞれが、時代の変化に柔軟に対応できてこそ、「新しい生活様式」がゴルフ場でも実践できると考える。
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2020年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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