DITECTゴルフ測定器の技術を生む「秘密基地」に潜入

DITECTゴルフ測定器の技術を生む「秘密基地」に潜入
日本列島の南の方から梅雨入りの知らせが届き、関東地方もジメジメとした日が続いている。本誌編集C氏より「ディテクト社のインドア施設を取材して欲しいのですが」との電話。予定を確認し、もちろん快諾。「ところで場所はどちらですか?」 「鴨川です」 「えっ、か、か、鴨川ですか?」普通、インドア施設の取材と言ったら都内周辺を想像しますよね。「なぜに鴨川?」と答えが想像出来ぬままC氏に質問した。まさかの答えが「浮谷社長がサーファーだったらしいんですよ」。 えーっ、と予想もしていなかった答えに驚きつつ、ニヤッと妙に納得してしまった。立派な理由である。 約束の日、久しぶりのアクアラインを抜けて、鴨川に向かった。ナビのマップでは山か畑の中にポツンとあるのだろうなと想像していた。ところが、目的地まで残り500mの表示が出たとき街並みが一変した。 左手には大きな家電量販店が2軒並んでいる。美味しそうなお蕎麦屋さんや魚料理の店もある。その目的地は、鴨川駅に向かう途中のメインストリートにあった。 到着すると、浮谷社長が出迎えてくれた。前回12月号で取材した、新国立競技場前の「神宮外苑サマディクラブ」以来である。 「素敵な外観ですね」 緑とアイボリーカラーの木材で囲った外壁が、なんとなく洒落た雰囲気である。スクリーンの遮光に役立っているそうだ。

SURF & TURF

DITECTゴルフ測定器の技術を生む「秘密基地」に潜入 店舗へ入る。正面に3面のスクリーンが並んでいる。右手前に1打席、さらに左手には特別感のあるVIP打席が効率よく配置されている。 そして各打席には、ディテクト社の小型&軽量で高性能の打球解析器「プリズム」がそれぞれ配置されている。ゴルフショップや工房、ジムなどに設置されている、信頼の厚い打球解析器である。スイング映像と初速や打ち出し角、スピン量などのボールの解析、ブロー角やヒットポイントなどのクラブの挙動まで細かく映像と数字で分析できるのだ。 「海が近いので、サーファーはもちろん、家族連れで遊びに来て欲しいんですよね」 「SURF & TURFですね」と横文字にしてしまえばカッコいい。大人のライフスタイル誌にでてくるような文字だ。筆者はサーファーではないので想像しかできないが、海に入った後にゴルフを楽しむ体力が残っているのかはよくわからない。 それでも遊びに長けた大人には響くワードに感じる。その日も小雨交じりのあいにくの天気だったが、インドアだけに雨の日に楽しむ場所としても魅力がありそうだ。

打席ごとに特色がある

DITECTゴルフ測定器の技術を生む「秘密基地」に潜入 5打席はそれぞれ特色があるという。大きく分けると3つ。正面の連続3打席は一般打席。右手前は計測打席。左手は傾斜打席である。プライベート空間を演出するような赤いソファーが設置された別名VIP打席の傾斜打席をまず体感してみる。 シミュレーションでラウンドするとコースのレイアウトに合わせて打席のマット部分が自動的に傾斜する優れモノだ。 例えば、ティーショットが大きくスライスして右の傾斜に止まったとする。画面が2打目地点に切り替わるのと合わせて、打席マットがつま先上がりの右足下がりに自動で見事に変化する。 画像と連動しているので実にリアルである。ちなみに最大12度まで可能だそうだ。スキー場の初心者コース並みの傾斜である。本当のコースにいるようだ。自動で動くマットに気を取られていると、マットの前方にある打球解析器「プリズム」が上下に動き出した。その自然な動きに驚いた。 正しく計測するために、マットの傾斜に合わせて自動的に上下するそうだ。実戦を忠実に再現した体験ラウンドが、この打席で楽しむことができる。 続いて、右手前の計測打席に移動する。ここは左右の幅もゆったりと区切られていて、一人でじっくりと練習するのに良さそうだ。実際に黙々と練習しているゴルファーが多いという。さらに天井のカメラ設置やいろいろな機材がある。 この施設のインドア練習場としてのもう一つの目的である「テストセンター」として役割を果たす打席であるようだ。メーカーとしては、いつでも開発中の機材をテストする場所は欲しい。より良い製品を開発し続けるために絶好の場所を手に入れたのだ。 そして、3打席並んだ一般打席へ。実は、ここの連続打席が「スイングベター鴨川」の売りの一つであるようだ。

4人で一斉にラウンド

DITECTゴルフ測定器の技術を生む「秘密基地」に潜入 通常、練習場モードやラウンドモードなど、それぞれの目的に合った使い方をするのが一般的なシミュレーションゴルフである。スクリーンに向かって黙々と打つ姿は、屋外の練習場で打っているゴルファーと場所が変わっているだけで大差ない。異なるのは、実際のコースを忠実にスクリーンへ照射して仮想コースでプレイするラウンドモードの時である。 通常のラウンドを一つの打席で展開するわけだから、プレイヤー①、次に②、続いて③、④とティーショットを打つ。そこからはピンから遠い順に順番に打っていくわけだが、自分の打つ順になるまで結構待たされる。 打席と外の入れ替わりの時間も必要だ。技術の差が大きいとなかなか自分の順番が来ずに、ラウンドのリアル感とは遠い、単なるゴルフの遊びになってしまう。お酒の入ったゴルフバーでワイワイやる分にはいいかもしれないが、インドア練習場と謳っている以上、ホールアウトに恐ろしく時間のかかるスタイルは、せっかくのソフトの威力が半減してしまう。 それをここ「スイングベター鴨川」では、リアル感以上に、みんなでゴルフを楽しめるスペースに変えているのだ。 4人で一斉にラウンドできる「打席間対戦モード」がそれだ。実際は、全5打席を使って5人でのラウンドができる。3つ並ぶ一般打席と計測打席の4打席を使って、浮谷社長、編集C氏、スタッフと私の4名でラウンドしてみた。

PLAY FAST!

DITECTゴルフ測定器の技術を生む「秘密基地」に潜入 1番ホール、352ヤード、PAR4。全員が打席に入り、ティーショットを打つ準備が整った。 「では、スタートしましょう」。 自分のタイミングでドライバーショットを放つ。ややスライス気味に右のラフで止まった。すかさずスクリーンは2打目地点のラフからの画像に切り替わった。歩かずに瞬間移動である。残り113ヤード。PWでピンを狙った。惜しくもグリーンを外し、AWでアプローチ。2パットのボギーでホールアウトした。ここまでわずか約3分。他の3名の状況を確認する。筆者が一番早くホールアウトしたようだが、全員が出揃うまで2分もかからなかった。 その数秒後、4名揃って次の2番ホールのティーイングエリアに立った。142ヤードのPAR3。9番アイアンでグリーンを捉え、パープレイでホールアウト。その間わずか2分。楽しい。無駄がない。スピーディーにラウンドできる。このペースでいけば、4名でラウンドしても9ホール周るのに1時間もかからない。従来のように1打席で順番に打ちながらラウンドしていたら、3ホール程度しか周れないだろう。 「スイングベター鴨川」の打席間対戦モードなら、通常のラウンドの半分以下の時間で仮想ラウンドができるのだ。本当に楽しい。これなら、雨の日にラウンドするのもいいし、時間のない時にもプレイが楽しめる。ゴルフの魅力を新しい方法で提案する施設が鴨川にあった。ぜひ体感して欲しい。
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2020年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ用品界についてはこちら