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    GMG森川社長とホンマ菱沼副社長がゴルフ界の「弱点と未来」を語る

    片山哲郎
    1962年8月3日生れ。月刊誌GEW(ゴルフ・エコノミック・ワールド)を発行する(株)ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長。正確、迅速、考察、提言を込めた記事でゴルフ産業の多様化と発展目指す。
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    ゴルフ場とゴルフメーカー。同じゴルフ業界でありながら、両者の接点は意外に少ない。「施設業」と「製造業」という業種の違いが交流を阻み、双方が抱える問題意識も微妙に違う。 そこで「ゴルフで親交を深めよう」と、ニューリーダー対談を企画した。 GMG八王子ゴルフ場など3コースを運営する関文グループの森川英幸社長と、本間ゴルフの菱沼信之副社長。初対面の二人は9ホールのプレーで意気投合。ゴルフ界の未来を語り合った。 (司会・GEW片山哲郎)

    プチケーキじゃ女性ゴルファーは増えない?

    G コロナでニューノーマルが到来する。そこでゴルフ場とメーカーの二大プリンスを招いて「ニューノーマル対談」をしようとなったわけです。よろしくどうぞ。 森川 プリンスって、勘弁してくださいよ。ぼくもう51なんですから(苦笑)。で、菱沼さんはおいくつですか?
    森川英幸社長
    菱沼 39になりました。 森川 ほお~、落ち着いてますねえ。さすが大きな会社の副社長。ずっとホンマなんですか? 菱沼 いえ、ホンマには2017年11月に転職しました。以前はテーラーメイドで開発担当をしてましたが、ホンマへの転職を決めたのが3年前で。 森川 なるほど。両社ともライバル関係だから、凄い決断だったでしょう。 菱沼 というか、外資と日本の会社という違いがあったので、自分的には大袈裟に考えてなかったんです。ただ、周囲は「よく決断したねえ」と驚いてましたけど(苦笑) 森川 そうですか。実は、ぼくのドライバーはずっとテーラーメイドなんですよ。とにかくカッコよくて使っていて気持ちがいい。もちろん、『ベレス』もいいクラブですが(笑) G これから9ホールまわるので大いに飛ばしてください。菱沼さんは野球部で森川さんはサッカー部の出身だから、二人とも飛ばし屋です。 森川 飛べば気持ちいい、そんなゴルフですよ。ウチは祖父が造ったゴルフ場でぼくが三代目になりますが、小学校から大学までずう~っとサッカー。ゴルフは会社に入ってからのエンジョイ派です。菱沼さんは競技ゴルファー? 菱沼 いえ、わたしも競技はやりません。70台が出たら嬉しいし、悪いと90以上打つゴルフで。 森川 ふ~ん。で、家族でもやるんですか? 菱沼 子供ができるまでは妻とよくやりましたが、子供ができてからはほぼないですね。
    菱沼信之副社長
    森川 ウチもまったく同じですよ。女性は結婚、出産、育児があるので、生活パターンが激変するじゃないですか。なので女性のゴルフ再開は、子供の手が離れる50前後じゃないですかね。 そのタイミングで誘い誘われがあると復活するので、導線の作り方が大事になる。ですよね、片山さん。 G う~ん。 森川 違いますか? G 業界はレディス需要の活性化を掲げてますが、最近つくづく思うのは、女性って本当に難しい。多趣味で支出が分散することもあるけれど、単純に性別で割り切れるのか、と。 森川 つまり? G 女性のゴルフ場来場率は全体の10%強ですが、実際は年間数十回プレーするコアな女性が大半を占めている。つまりゴリゴリの競技層で、彼女達は男よりも男っぽい。 でね、コンサルの専門家は、女性の来場者を増やすにはランチにプチケーキを出しなさいとか言うけれど、競技の女性はカツ丼食べてビール飲んでるじゃないですか。 森川 わかります(笑) G つまり性別としては女だけど、女性用のマーケティングは通用しない。それを含めて難しいと。単純に性別で分けられませんよね。 森川 なるほど。ここ(GMG八王子)の女性来場率は14%ほどですが、去年、男性の最多来場者は206回で、女性のトップは80回超なんですよ。 おっしゃるように競技の女性がレディスの来場率を上げてるわけですが、ただね、ウチの場合はヘビーユーザーが自発的に来るだけじゃなくて、所属の女子プロが初心者向けのレッスンを定期的にやってるんですよ。 コース改造もレディスティの見直しを含めて常時手掛けていますから、その積み重ねが14%なので、 G きちんと努力した結果だと。競技の女性に依存しているわけじゃない。 森川 はい、そこを見てもらいたいですね。ホンマさんの場合はどうですか? 菱沼 やはり女性の販売比率は少なくて、全体の1割強という感じですね。ギア市場全体で見ても女性の売上比率は1割程度で、アパレルと合算すると2割強。ゴルフアパレル全体では3割ほどになりますが、レディスのギアは難しいですね。

    ゴルフバカの子供ではなく!

    菱沼 レディスの開拓も大事ですが、業界にとっては若者の開拓も大事ですよね。御社は若者向けのイベントをしてるんですか? 森川 やってます。実はこの7月から次世代ゴルファー応援キャンペーンということで、メンバーの子供世代が安くプレーできる企画をやってるんですよ。 GMGは今年開場53年で、メンバーの高齢化が進んでいます。それで会員権を譲るケースが増えてますが、一方では市場に出回る会員権もあるので、なるべく子供に継承してもらいたい。それを促進するためのキャンペーンです。 G 市場に出ているGMGの会員権はいくらですか。 森川 安いですよ。10万~20万円で、名変料のほうが50万円と高いんです。で、子供に継承してもらいたいのは、倶楽部の雰囲気づくりもあるんですね。GMGのメンバー来場率は7割で、 G それは極端に高いですね。 森川 はい。普通は逆で、7割のビジターフィに頼っているのが一般的じゃないですか。だけどウチは家族的な倶楽部ライフにこだわっているので、なるべく子供に継承してもらいたい。 親子でプレーするのが一番楽しいので、そういった光景を日常的にしたいわけですよ。目指すのは家族主義的なゴルフ場です。 菱沼 それって凄くいいですねえ。ゴルフの活性化は女性と若者、それとファミリーがキーですから。 森川 そこはまったくおっしゃるとおりで、ぼく自身、祖父とのゴルフが記憶に残っているんですよ。幼少期に一度でもクラブを握った思い出があると、社会人になってゴルフをやろうと思ったときに敷居が下がるじゃないですか。 幼少期の体験は記憶に残るので、エリートジュニアでゴルフバカをつくるんじゃなくて、いろんなスポーツをやる中でゴルフも選択肢に入れてもらいたいと。 菱沼 ぼくも少年期は野球漬けの毎日でしたが、小学校時代に親父について練習場に行ったことがありますし、クラブを握った記憶があるだけでゴルフが身近になった感覚はありますね。 ゴルフは三世代で楽しめる唯一のスポーツだし、時間とお金に余裕がある祖父母と孫のマッチングはゴルフを広げる上で可能性がある。イメージアップにもつながるでしょうし。 G シニアゴルファーの中核は団塊の世代ですが、この層は高度経済成長期に仕事でゴルフをはじめている。麻雀、カラオケ、ゴルフが三大接待で、上司から「ゴルフをやれ」と。 つまり業界の知恵や努力ではなく、社会が勝手にゴルファーをつくってくれたわけですね。そう考えると、シニアがゴルフリタイアをする前にどうやって孫世代と接着するか、業界の戦略的な努力が求められます。 森川 それで一時、子供のスポーツ教育に注力する施設と提携して、GMGに子供を受け入れたんです。小学生を3ホール1000円でやらせる企画で、そこはフットサルのネットを使ってゴルフの疑似体験をさせていた。そのデビュー企画として持ち込まれたんです。 これをヒントに考えると、テニスコートも使えるし、サッカー、テニス、ゴルフの複合体験もできますよね。疑似体験だとしてもゴルフが身近になる。そんな効果が期待できます。 G 実は武蔵野美大のゴルフ授業はテニスコートを使うんです。持ち運びできるマットの上から球を打って、ネットを越えてラインに入れる。アプローチの感覚が身につきます。 森川 なるほどねぇ。それを業界で広げましょうよ。 G テニスコートを併設するゴルフ練習場も沢山あるから、ひとつの雛形になりそうですね。

    大学運動部のOBにゴルフを

    G ほかに若者需要の開拓法はありますか? 森川 そうですねえ、まだ構想の段階ですが、先日NGK(日本ゴルフ場経営者協会)の手塚理事長と話したことがあるんです。 手塚さんもぼくも学習院のサッカー部出身なんですが、就活が終った4年生はクラブ活動も引退して時間がある、そこで彼らにゴルフ体験をさせようじゃないかと。 鍛えた連中がゴルフにハマればアスリートゴルファーになりますし、それが学習院の運動部全体に広がって他大学にも波及すれば、ひとつの流れが期待できますよね。 菱沼 実はそれ、ぼくも可能性があると思っているんですよ。運動部の出身者は運動神経が優れているからゴルフへの導入が楽ですし、そのうち何割かがゴルフにハマれば誘い誘われで広がりますよね。 もうひとつ、運動部は縦の人間関係が強いじゃないですか。先輩やOBから誘われれば、体育会系のネットワークで広がっていく。かなり有効な手段だと思うんですね。 G その際、メーカーとしてやれることはありますか? 菱沼 う~ん、メーカーとしてはどうでしょう。これは将来的な課題ですが、ちゃんとしたクラブが2万~3万円で買えるようにならないと厳しいのかなぁ。 もちろん、裾野の拡大をゴルフ場にだけ任せるつもりはないんですが、今の話をメーカーの仕事につなげると明確なイメージがわかなくて。 森川 正直な話、道具はハマってからでいいと思うんですよ。最初はゴルフ場のレンタルクラブで対応できるし、まずはゴルフ場の雰囲気を体験させることが先決じゃないですか。 G メーカーは引っ込んでいろと。 森川 そんなことは言ってませんよ(苦笑)。我々の活動にメーカーの協力があれば鬼に金棒だし、力強いと思います。ただ、その形が見えないだけで。 G 今日の対談でイメージが固まればいいですね。

    うちは「庭付きの居酒屋」です

    G ところで、先日GDOが運営する茅ケ崎GC(9ホール)でプレーしたんですよ。 菱沼 あそこはカジュアルゴルフに力を入れてるんですよね。ドレスコードもなくて。 G ありません。午後2時スタートで手引きカート、ハーフ料金は5000円ほど。短パンにTシャツで、6本入りのバッグを抱えて巡回バスで行きました。着いたら自分でカートに載せる。運動靴もOKです。 森川 茅ケ崎のHPをチェックして、改めて多様化の流れを実感しましたね。ツーサムでスルー、いつでも手軽に予約できるスタイルは間違いなく増えるでしょう。ただ、ツーサム中心だと収益面できついじゃないですか。 菱沼 でしょうね。組数を増やさなければいけないし、どれぐらい入るんですかね。 G 通常の18ホールに昼休憩だと一日50組ほどでしょうが、茅ケ崎スタイルだと70組以上は入れたいでしょうね。 森川 なんでしょうが、ゴルフ場経営は天候要因が大きいから計算通りにはいきません。トップシーズンが豪雨や台風で休業になると計画が狂うし、非常に苦しい。 菱沼 それに税金の問題もありますよね。これもゴルフ場経営のマイナス要因です。 森川 まさにそう。ゴルフ場には消費税と利用税、固定資産税があって、GMGの固定資産税はピークで7000万~8000万円だったこともありますよ。 都市部で地価が高いゴルフ場は億単位だし、すると来場者一人当たりの固定資産税を2000~3000円で計算します。消費税と利用税を加えれば5000円が税金ですよ。 菱沼 それがあまり知られていないから、全部ゴルフ場の儲けだと思われてる。 森川 そこが本当に辛いよね。 菱沼 利用税の撤廃が進まないのは煙草や飲酒、ギャンブルとか、ゴルフのグレーなイメージが大きくて、一部の金持ちのスポーツだと思われている。 個人的には、そこが非常に悔しいところですが、一度刷り込まれたイメージを変えるのは本当に大変なんでしょうね。 G そんな状況でありながら、GMGは儲かってますよね。 森川 まあ、そこそこです(笑)。当社はGMGのほかに鴻巣CC(埼玉県)と長瀞CC(同)を経営していて、この2コースはGMGとやり方が違います。 長瀞はコロナをきっかけにスルーでサンドイッチを屋外で食べる方式を導入したり、要するに地域性を考えた運営ですが、これだと利益が出にくいですよね。 ゴルフ場はコンペ収益が大きいので、レストランの閉鎖など極端に簡素な運営をすると利益が出ないんです。 G 企業が主催する大型コンペはコロナで自粛モードです。感染者が出ると社会的に叩かれるから。 森川 まったくです。GMGの場合は八王子の商工会やロータリークラブ、大手企業のコンペが多かった。周辺には東芝や日野自動車、NEC、オリンパスなど大企業が多くて、大型コンペは50~60名規模でした。 G 受付や雑務は主催企業の社員がやってくれるし、パーティにお土産の売上など、法人コンペはドル箱ですね。 森川 それが今は壊滅状態で、その代わり企業名を外した「にこにこ会」とか、3組程度の有志のコンペになっています。コンペのいいところは売上の貢献だけじゃなく、誘い誘われでプレー機会が増えるじゃないですか。日本のゴルフは誘われる文化だから、この点の効果も見逃せません。 菱沼 そう、誘われる文化ですよね。そこは非常に日本人らしくて、ゴルフには言い訳が必要じゃないですか。 義理の兄がゴルフ好きで、毎度理由をつけて出掛けるわけですが、それを見ていて悔しいというか、やっぱりゴルフには言い訳が必要なのかと。問題は値段なのか、時間が掛ることなのか、とにかく奥さんに言い訳をする。 森川 時間の問題は大きいでしょうね。 菱沼 だからカジュアル化が大事だと思うんですね。丸一日掛けるゴルフではなく、午前でサクッと終わるスルーだと言い訳を考える必要がなくなる。 多分、ヒトって言い訳を考えながら面倒になって、だったらやめようとなりますよね。その面での機会損失が意外と大きい。 森川 だから、いろんなスタイルがあるべきなんですよ。 菱沼 はい。逆に丸一日をゆったりゴルフ場で過ごすとか。 森川 バスで来てゆっくり飲むのもありですね。ウチは「庭付きの居酒屋」と呼ばれてますから(笑)

    多様化しないゴルフメーカー

    菱沼 あのお、今の話を聞いて余計に思うのは、ゴルフ場は多様化を進めているのに、メーカーはまったく対応できてなくて、ドライバーも安くて6万円、型落ちでも3万はしますよね。 基本のコスト構造はありますが、それは業界の常識というか、今までの在り方を前提に組み立てるから脱皮できない。もしかしたらホームセンターで手軽に買えるクラブがあってもいいし、いろんな楽しみ方を発掘して、それに合わせた開発をするべきだと。 G ゴルフメーカーは旋回が鈍いですね。別の言葉を使えば変化に弱い。流通はECの台頭で激変したし、ゴルフ場もコロナを機に多様化を進めている。対するメーカーは非常に鈍い。 菱沼 だと思います。今日どうしてもお伝えしたかったのは、スポーツはフィールドが一番大事だし、そこが多様性を含めて充実しないとプレーヤーは増えない、プレーヤーが増えなければギアも売れません。 ゴルフ場が頑張らないと活性化しないので、是非、頑張ってくださいと。今日はそれを言いたくて。 G なんか、他人任せ? 菱沼 ですかねえ(苦笑)。一方的な期待で申し訳ないんですが。 森川 正直な話、ゴルフ場も様々なんですよ。この八王子は学校が多いし子供もいますが、地方のゴルフ場は人口が少ないから頑張りようがない面もある。ウチは東京だからこそ、頑張らなきゃと思うんですね。 G 特に八王子は市内に21大学10万人の学生がいる。全国屈指の学園都市です。 森川 おっしゃるとおりです。なのでウチが活性化をやらなきゃという使命感があるんですよ。勝手な思い込みかもしれないけど、都市部のゴルフ場がやらなくてどうするんだと。 それでリクルートの「ゴルマジ!」や大学ゴルフ授業研究会の「Gちゃれ」を積極的に受け入れてます。 G 「ゴルマジ!」はリクルートが主宰する学生向けの事業で、温泉旅行やスキー、Jリーグの観戦などサークル的にクラスターをつくっていて、そのひとつにゴルフもある。学生に無料でゴルフ体験をさせる企画です。 ただ、残念なことに学生を受け入れるゴルフ場や練習場がまだまだ少ない。「ゴルマジ!」の受け入れコースは? 森川 100コースほどです。せっかくリクルートが業界に力を貸してくれてるのに、全国2200コース分の100は少ないだろう、業界が応援しなくてどうするんだと思う反面、やりたくてもできないゴルフ場もある。 だから余計、ウチがやるんだぞと。実は今日も「ゴルマジ!」の大学生が3人来てますが、そのうち2人は初心者です。「ゴルマジ!」自体、初心者向けの企画ですから。 菱沼 ゴルフ初心者の学生を受け入れるコースが少ないのは、スロープレーの問題もあるんですか? 森川 それと、自走のカートを壊したり、クラブを折ってしまうといった問題もありますね。入場時に「ケガは自己責任」のサインをしてもらいますが、ゴルフ場としては余計なことを背負いたくないという意識がどうしてもある。 「ゴルマジ!」とは別に、大学の先生が課外授業で学生にゴルフ場体験をさせる「Gちゃれ」もあって、業界としては非常にありがたい活動です。ただ、先生のプレッシャーが大きいそうで、 G 大きいですね。課外授業で学生にケガをさせたら引率教員の責任問題になる。少子化で大半の大学が定員割れして、先生のリストラも進んでいるから、余計なことはしたくない。 森川 そんなリスクを抱えながら「Gちゃれ」をやってくれているわけだから、我々業界人が応えないでどうするんだと思いますよ、マジな話。 菱沼 そうですねえ。

    「カッコいい」ってなに?

    G ここまで森川さんの話が多かったから、そろそろ菱沼さんに吠えてもらいましょうか。どうです? 菱沼 どうですって、随分ザックリした質問ですねえ(苦笑)。まあ、我々メーカーの仕事はギア開発の面でゴルファーに満足感を与えて、プレー意欲を高めることですが、本音を言えば性能の進化はややギミッキーな面があるというか。 なので、もっとゴルフの本質的な魅力について探求したり、何を目指して開発するのかを再構築する必要があるんじゃないかと。森川さんの話を聞いて思いました。 G ゴルフの本質とは? 菱沼 ゴルフは楽しいということを含めていろんな魅力がありますが、個人的に大事だと思っているのは「自己教育」と言いますか、 森川 ほお~。 菱沼 ぼく自身、野球をやってきて思うのは、 G 菱沼さんは甲子園経験者です。 森川 ほお~。 菱沼 それはともかく(苦笑)、野球とかチームスポーツは敗因を他人のせいにできるじゃないですか。ゴルフは100%自分の責任になる。これってけっこう辛いんですが、そういったことを学生が学ぶには最適なスポーツだと思うんですね。 だけど我々はそこを伝えきれていません。ぼくらやっぱり物売りなので、飛びます、曲がらない、とやりますが、それだけではダメだろうなと。 G ゴルフに限らず、多くの製造業が苦戦しているのはそこでしょうね。品質や性能だけを求めると同質化の競争に突入して、市場シェアを気にしたり、開発の視野が狭くなる。 そうじゃなくて、その製品にどんな意味や意義を持たせるのかを前提とした開発が今後は必要になる。 菱沼 まったく同感です。 G 森川さんはメーカーの「飛びます」を嘘だと思っている? 森川 思ってます(笑)。だって前より10ヤード飛ぶんなら、今頃500ヤード出てますよ。ただ、それでも買ってしまうのは、新しい物をもつ喜びがありますよね。 その喜びを言葉にするのは難しいけど、なんか、新しい物はカッコいい。ですからぼくの場合、好んで騙されるという面があると思いますね。 G 好んで騙される? 森川 はい。 G キャバクラと同じ(笑) 森川 真面目にやりましょうよ。 菱沼 そうですよね(苦笑) 森川 業界に入ってゴルフにハマって、それからですね、ギアを真剣に考えたのは。ぼくのポイントはカッコいいことで、ゴルフクラブは新しい物が出るたびにカッコいいと思わせてくれる。 菱沼 カッコいいって何ですかねぇ。先ほどプレーしているときに森川さんが「これってカッコいいんだよね」って呟いて、あとで聞こうと思ったんですが。 森川 なんていうか、新しいのが出ると前のモデルが古臭く感じちゃうんですよ。形や色柄、デザインだけじゃなくて、クラブ全体の雰囲気を含めてどうも古臭く感じてしまう。そこかなあ。 G 古臭いとは? 森川 んー。 菱沼 見慣れる、飽きる? 森川 それかなあ。古臭く見せる技術があるのかな。

    インパクト音にも時代性がある

    菱沼 実は、そこはめちゃくちゃ気を使ってるんですよ。コンマのミリ単位で曲線を作ったり、ラインのつなぎやペイントの濃淡、特に濃淡は境界線がわからないように10個も20個も試作します。 森川 へえ~。 菱沼 屋外のゴルフ場で見たときの印象や店内のディスプレイも照明の見栄えがあって、クラウンやソールの見え方も徹底的に研究します。 『TW747』からイメージカラーをオレンジに変えましたが、あれはエルメスのオレンジからインスピレーションを受けたんですね。パステル調ではなく、上質なオレンジで。 森川 じゃあ『マーベリック』のオレンジにやられちゃった? 菱沼 いや、『マーベリック』のオレンジはウチよりトーンが落ち着いてます。単に色だけの話ではなくて、欧州の一流ブランドでは職人が高い地位を与えられて、彼らがブランドを支えている。 ホンマも国内に大きな工場をもって優秀な職人が沢山いて、そこも欧州の一流ブランドと共通する部分かなと。 森川 なるほど。今の話、感動モノだなあ。そこまでやるから、ぼくらがなんとなく見てもカッコいいと思えるわけですね。 G インパクト音は気にします? 森川 気にするし、むしろ音が飛んだ気にさせてくれますね。 菱沼 音もかなり研究します。CADで作り込んで音の周波数を測ったり、内部構造のリブは補強だけではなく、打音の共鳴や高音・低音を意図的に作り込むんですね。 G 音にも時代性があって、ゴルファーが高齢化するとインパクトが弱まるから高い周波数に設定するとか、カーボンクラウンで低重心だと音がこもるから内部構造を変えたりする。 菱沼 ゴルフ場も似たところがあるんじゃないですか。プレー中に「常時改造してる」とおっしゃってましたが。 森川 そうですね。山を削って広げたり、谷を埋めたり、常に改造をやっています。時代性という意味ではインパクト音と似たようなところもあって、メンバーの高齢化が進むと谷やフェアウェイバンカーが辛くなりますよね。 その視点で改造することもありますし、プレーヤーにいいスコアを持ち帰ってもらいたいじゃないですか。単にやさしくするということじゃなくて。まあ、ゴルフ場は「生き物」だから。 菱沼 まさに生き物ですねえ。

    コースもクラブも「愛情」が大事

    G GMGは儲かってるから常時改造できるんでしょ? 森川 あのぉ、儲かってるとかの話じゃなくて、ウチは「百年経営」を目指しているから、そこに向けての改造なんですよ。18歳の子が入社して、彼らが定年になるまで安定経営をしたいじゃないですか。 菱沼 それは素晴らしい考え方ですね。目先の利益しか考えない企業が多い中で、果たしてメーカーは何をできるのか、そのことを真剣に考えてしまいます。 18歳が定年まで勤めるにはゴルフ人口を増やすことに尽きますが、それをメーカーの立場として、自分自身の課題としてどうするか、本当に考えてしまいます。 G 長期的な経営を考える上では柔軟な事業構造が不可欠ですが、メーカーはその構造をなかなか変えられない。特にホンマは従業員が多いでしょ。 菱沼 全体で600人規模になりますね。 森川 ええッ、そんなにいるの? 菱沼 はい。ウチは職人を大事にしていますが、全体の半分を酒田工場のスタッフが占めて、あとは直営30店舗の150人とか、 森川 それじゃ食べさせるの大変だし、売れなきゃ困りますよねえ。しかもメーカーの数が多いでしょ。ゴルフ人口800万人じゃ食えないし、共存も難しい。 まあ、ゴルフ場も同じことで、800万人で2200コースは無理ですよ。 G 自分のゴルフ場だけ残ればいいという考えはありませんか。 森川 いや、本音はゴルフ人口が増えて共存共栄ですよ。 G 優等生発言ですねえ。 森川 片山さんはすぐに疑うけど、これはまったく本音ですよ。ゴルフがない人生より、ゴルフがある人生がハッピーだと、真剣にそう思っているし、ぼくがそう思わないと「百年経営」なんかできませんよ。 近視眼的に考えれば、コース改造なんかしないで金を残せばいい。ウチだけ残ればなんてケチな考えじゃなく、ゴルフ全体が繁栄してこその安定経営じゃないですか。 G ゴルフ愛の熱量がすごい(笑) 森川 当たり前じゃないですかッ。 菱沼 それって凄くよくわかるんですよ。ウチの場合、特に工場の人間はゴルフが大好きでシングル級も多いんですが、だから作るクラブに血が通っているんですね。 森川 愛情も入るでしょ! 菱沼 当然入ります。そこが本当に大事な部分で、性能的に突き詰めても最後はヒトの想いですよね。作り手の想いを伝えたいし、だから「ホンマのクラブは一味違う」と感じて頂きたいんです。 森川 めっちゃ感じますよ! G ホントですか? 森川 ホントですよッ、片山さんはすぐに疑うけど。さっきの話、ぼくはカッコいいクラブが好きだって言いましたが、作り手の愛情が知らずに伝わっているんだなと、菱沼さんの話で思いましたよ。 ゴルフ場もまったく同じことで、「ゴルフ」が社員を養ってくれる、ゴルフ愛がなくてどうすんですか!

    家族主義経営の本当の意味

    G 御社の社員は何人ですか? 森川 GMGだけで120人、3コース合計で250人ほどになりますね。 菱沼 それもかなり多いですねえ。実はゴルフ場で働いたことがあるので規模感はわかりますが、それは多いです。 森川 GMGの場合は半分キャディです。 G キャディは派遣でしょ。 森川 ウチは基本、社員です。 G 大変じゃないですか。 森川 大変ですよ。それでコロナで売上半減になったら、食っていけませんよ。GMGは月曜がセルフデーですが、それ以外はキャディ付きで、このエリアで差別化するための方策だとしても、キャディ付きはひとつの信念です。 先ほどちょっと触れましたが、GMGはメンバーの来場率が7割でネット予約会社も通しません。それは家族主義的な倶楽部ライフを目指すからで、となると、 G 社員と来場者も家族的な付き合いになる。 森川 そういった雰囲気が非常に大事です。 菱沼 単にキャディ付きということじゃなく、来場者をファミリーとして迎えようと。そのための準備というか、キャディの待遇を含めてきちんと考える。この話は共鳴できる部分が多いです。 G 我々門外漢がゴルフ場の多様化というと、単にスルーやツーサムといった表層的な話になりますが、「家族主義」という在り方も多様性に含まれる。 森川 社員が定年まで安心して働ける環境があってこそ、メンバーも家族的なゴルフを楽しめる。だからこそ、一人でも多くゴルフ人口を増やしたいんですよ。 菱沼 今日の対談は本当に有意義でした。ホンマはクラブメーカーのトップ・オブ・トップを目指す姿勢ですが、それだけじゃなく、研究開発に負荷を掛けないカジュアルモデルも必要だし、多様化が進めば新たな需要も掘り起こせる。 これをやらないと明日はありませんし、ゴルファーがいるフィールドからもっと学ばなければと思いました。 森川 キャロウェイがいてテーラーがあって、BS、ダンロップにホンマが鎬を削っている。日本のゴルファーは幸せですよ。でもね、それで共存共栄するにはゴルフ人口を増やすことしかない。一緒にやりましょうよ。 菱沼 お願いします! 森川 菱沼さん、 菱沼 はい。 森川 次回は「片山さん抜き」で来てください(笑)
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