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    アメリカン俱楽部の役目は終わった 高額地クラブ路線に舵を切る諸般の事情

    吉村真
    1974年生まれ、長崎県出身。 パーツブランド、ゴルフ場経営、中古ゴルフチェーン、ゴルフ雑誌を渡り歩き、現在は「月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド」で地クラブの担当として取材、執筆。 国内を始め、中国、台湾、米...
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    一時「企業30年周期説」が盛んに言われた。企業は30年経つと初期の目的を終えて社会的な存在意義を失ってしまう、という説だ。時代は変わる。変化に対応できない企業は、市場から退場を迫られてしまう。 ゴルフクラブの製造小売業として「アメリカン俱楽部」が立ち上がったのは2001年のこと。栃木県に創業し、安価な製品供給でゴルフの大衆化を目指すのが使命だった。最盛期には直営54店舗を運営し、累計500万人に販売した実績がある。 「その役目は終わりました」 と話すのは、アメリカン俱楽部を運営するトキタ・acの鈴木修社長である。冒頭の「30年説」に照らしてみると10年早いが、鈴木社長の表情は真剣そのもの。一体、何があったのか? 「ゴルフの大衆化を用具面で支援する、そんな役割は終わったと考えたのです。そう思った理由のひとつにユーザーからの声がありました。近年は『高くてもいいから、もっと良い商品がほしい』という声が多くなりましてね、これを受けて次のステップに移る製品開発に注力しようとなったのです。 この話は単なる商品政策ではなく、会社自身も大きな挑戦だと考えております」 旗艦店の小山店(栃木県小山市)は10月末からセールに入り、年内を目途に閉店する。アメリカン俱楽部は今後、従来の店舗展開から退いてネットショップやゴルフ場への製品供給で命脈を保つが、主役事業の座を下りることになる。その代わり、新たに高額な商品を立ち上げて付加価値路線に舵を切る。これまでと180度異なる青写真を描くのだ。

    今のクラブは「顔」がよくない

    11月末に新ブランドの『巧匠』(こうしょう)を立ち上げ、そのシリーズの第一弾としてドライバーヘッド単品の『SEVENTIES』(セブンティーズ)を発売する。ヘッドだけで6万8000円。これに人気のシャフトを装着すれば、大手メーカーの主力商品と肩を並べる価格になる。 アメリカン俱楽部の完成品ドライバーは1本1万円台から3万円半ばだから、思い切った跳躍といえるだろう。 写真のように漆黒のヘッドで、カーボンクラウンとチタンボディの複合型。関沢均ゴルフ事業部長によると、パーシモン時代の「洋梨形状」を彷彿させるデザインにこだわったという。同氏の話。 「当社がゴルフ事業部を設立したのは1986年ですが、以来、多くのクラブを開発して、製造工場とも太いパイプをもっています。わたし自身、アリガゴルフの斉藤今朝雄さんに学んだ最後の弟子で、昨今の『顔』(ヘッド形状)を重視しない科学的なクラブ作りには疑問を感じていたんです。
    関沢均ゴルフ事業部長
    そこで、正統派のクラブをもう一度作りたいと思いました。『アメリカン倶楽部』の商品でやれなかったこだわりを『セブンティーズ』で実現したい。そんな想いが強くあります」 関沢部長が頭に浮かべるのは1960年代から70年代に名器といわれたマグレガーの『ターニーM85』や『同693』だという。当時はウッドのマグレガー、アイアンのスポルディングと言われ、これにウイルソンを加えた3社が「舶来御三家」と呼ばれていた。 一方の国内メーカーだが、往時はゴルフ工房から発展した小資本メーカーが点在し、アリガゴルフもそのひとつ。70年代以降はブリヂストンを筆頭にダイワ精工(現グローブライド)、ヤマハ、横浜ゴムなどの大資本がクラブ市場へ参入し、潤沢な開発資金を武器に先進技術を取り入れたクラブを開発した。 そして今、米国の新御三家(キャロウェイ、テーラーメイド、ピン)が国内市場を席巻しているのは周知のとおり。

    工房200店舗への供給目指す

    関沢部長がイメージする60~70年代のゴルフクラブは、ドライバーヘッドが柿材(パーシモン)で、北米ミシシッピー川流域に自生する柿が上等と言われていた。これを研磨職人が「洋梨型」に削ったのがマグレガーの人気商品で、国内メーカーの多くはその模倣から始まっている。 「70年代のアメリカは自由で開放的。その空気に憧れたゴルファーは沢山いたし、だから今回『セブンティーズ』というネーミングにしたのです。スコア70台を目指すゴルファー向けのドライバーヘッドという意味もあります」(関沢部長) 実は、ヘッド素材がチタン合金に変わった今も「洋梨型」を踏襲したり、そのエッセンスを残す国内メーカーは多い。反面、米国メーカーは慣性モーメントの追求からヘッド外郭部を大きくする設計が主流となったが、それが関沢部長いわく「顔がよくない」ということになる。現代の技術で70年代を復刻する、それが新ブランドのコンセプトと言えそうだ。 同社は今後、3本柱での事業展開を考えている。低価格路線の「アメリカン倶楽部」と高価格帯の『巧匠』、さらにゴルフ場500~600コースを対象に中価格帯のクラブを供給していく。鈴木社長の決意を聞こう。 「当社の役割は時代と共に変わってきましたが、ゴルファーへの提案内容も変わってきました。直営店としての『アメリカン倶楽部』の役割は終わりましたが、次のステップをゴルファーに示すことで成長していきたいですね。 これは大きなチャレンジです。会社が変わるチャンスだと思っています」 『巧匠』は初年度、工房を中心に最大200店舗での販売を目指す。先頃、地クラブ市場への参入を決めたキャスコを含め、俄かに地クラブが熱くなってきた。群雄割拠の中で存在感を発揮できるのか?「70年代戦略」の成否が注目される。
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