堅苦しい会議では、柔軟な発想が生まれにくい。上司に囲まれ「売上は立つのか?」と問われるほどに緊張が高まり、思考停止に陥ってしまう。よくあるケースだ。
特にゴルフ関連の商品は「遊び心」が大事。ふとした喫煙室での雑談や酒場のコミュニケーションからヒット商品が生まれることもある。「雑談力」が求められる所以だ。
そんな社内の雑談から、新たにゴルフアパレル市場へ参入したのがドゥクラッセという会社。同社の中澤健太郎氏によれば、
「当社にはゴルフ好きが多いんですが、雑談で『そういえばゴルフウエアやってないね』という話になり、『やってみようか』となったのです」
ノリとしては非常に軽い。が、センスを形にするのがアパレルビジネスだけに参入の決断は早かった。むろん、これを実現できる背景もある。
アパレルメーカーの同社は直営58店舗を展開しており、社名と同じブランド『ドゥクラッセ』は40~50代の女性が中心。今秋、サブブランドの『ていねいに生きるひとの服』を立ち上げて、そこから「Doヒート」「Doアップ」「Doガード」の3シリーズを展開。ゴルフ専用ウエアとして新規参入となった次第。
その経緯を含めて中澤氏との一問一答を紹介しよう。
まず、ドゥクラッセについて教えてください。
「ドゥクラッセは2007年に立ち上げたアパレルブランドです。『40~50代の女性を輝かせる』というコンセプトで、当初はレディスウエアからスタートしました。
2011年からは『夫を格好良くするには?』『オヤジを元気にさせる』のコンセプトで、50代を対象にしたメンズウエアも立ち上げています」
企画やネーミングが独特で面白い。ブランドのウリは?
「そうですねえ。当社は工場と直取引だから、企画から素材選びまで一貫して自社でやれることが強みでしょう。立体裁断で身体のラインがきれいに見えることと、顔色が映える色遣いにこだわっています。
その結果、ひとつのシャツで30色ほどラインアップすることもあります」
男女の販売構成比と平均上代は?
「女性8割、男性2割という比率で、アイテム数も同じ割合です。人気アイテムの平均上代はレディスのワンピース、スカートが8000~9000円、メンズはシャツ4000~5000円、パンツ5000~6000円など、手頃な値段にしています」
で、肝心な話。ゴルフウエアの発売に至った経緯を教えてください。
「実は、何気ない会話がきっかけなんですよ。社内にはゴルフ好きが多く、『そういえばウチにはゴルフウエアないよね。作ってみよう』ということで(笑)
ただ、以前からレギュラー販売のパンツを『ゴルフ用に履いています』というユーザーの声があったんですね。そこで試験的に5月25日から当社のECサイトでゴルフ専用パンツ(6990円)を販売したところ、3か月ほどで完売。
それで可能性を感じて、サブブランドの立ち上げを機に本格的にやろうとなったのです。ゴルフウエアは全体的に高額な印象なので、何とか安く、品質の良いものをという考えです」
新展開するゴルフウエアの特徴は?

「『Doヒート・超快温ベスト』(1万2900~1万3900円)、『Doヒート・超快温LUXEゴルフジャケット』(2万9900円)が主力商品になります。冷え性や肩こりに悩む女性は多く、冬のゴルフ場では1枚で温度調整できるウエアがほしいとの要望を実現しました。
『Doヒート・超快温LUXEゴルフジャケット』はモバイルバッテリーを使用して繊維自体が発熱する『HOTO PIA(ホットピア)』を採用したので、温かく、柔らかく、ストレッチ性もあるためゴルフの動きに適しています」
販路や今後の展開予定、販売目標を教えてください。

「11月10の発売で、当初は直営29店舗(『Doヒート・超快温LUXEゴルフジャケット』は6店舗)と、自社のECサイトで販売予定です。今後はゴルフ用のポロシャツなど夏物も検討中ですが、いずれゴルフショップでの展開も考えています。
そもそも『ゴルフウエアもほしいね』というゴルフ好き社員の会話から始めたので、販売目標は特に設けず、まずはカタログ会員300万人への告知とゴルフ場での体験会などで広げたいですね」
ノリで作った商品だが、機能性や自前流通のインフラを武器に群雄割拠の市場に名乗りをあげた。
老舗専門店、コトブキゴルフ(都内御徒町)の安本昌煥社長がゴルフアパレルの現状をこう話す。
「やはりゴルフウエアは高いですよ。最近は『ワークマンプラス』など、低価格でそれなりのファッション要素を入れた商品が人気ですが、ゴルフでも十分に通用する。
ポロシャツで1万円以上するゴルフウエアの今後を含めて、見直しを迫られるかもしれません」
ゴルフアパレルは、入れ替わりの激しい市場でもある。その中で独自路線を開拓できるか、注目される。