集客するには競技会で入賞して発言機会を作る

東京都町田市。町田街道沿いの一角で競技ゴルファーが集まる工房ワイズファクトリーが営業している。神奈川の名門と呼ばれる横浜CC、保土ヶ谷CC、戸塚CC、相模原CCから10㎞圏内で、多くのトップアマに対応しているのがプロフィッターでもある山下博由代表だ。
33歳で初ラウンド。その時の同伴競技者は、女性二人でスコア80台のツワモノ達。彼女らに負けた悔しさからゴルフにハマった。それで毎日練習場に通い、週1回のラウンドを続けたという。しかし、
「全然上達しなくて、疑問を感じて工房に通うようになりました。そうしたら工房店主に『クラブが合ってないから、上手くなるはずない』と言われましてね。クラブを調整してもらったら2年でパープレー。その重要性を伝えたくて工房を始めたのです」
開業は2011年。とはいえ、開業当時は客がいない。だから、
「クラブ競技やコンペを含めて年間10大会ほどエントリーして、とにかくドライバーを飛ばして、名刺を配りまくりました(笑)。それに加え、表彰式で挨拶できるのは『ドラコン』『ニアピン』『ベスグロ』なので、いずれかを獲得すれば、マイクをもって表彰式で挨拶ができます。それで店のPRを積極的に行いました」
その甲斐もあって常連客は100人ほどになり、クラブチャンピオンは16人を数えるまでになった。
そのフィッティングとは?
オーバースイングは適正重量で修正できる

昨今、女子プロのオーバースイングを見ることが少なくなったと山下氏は指摘する。
「フィッティングが定番化して、振りやすい適正重量のクラブを提供できる環境が整ったのでしょう」
同氏のフィッティングは、その意味でまず重量に注目する。
「ゴルフは練習すればある程度は上達します。しかし、クラブが合わなければ上達は遅い。女性でも子供でも、体力に合わせた適正な重量のクラブであれば、振りやすくなるはずです」
例えば、アイアンにダイナミックゴールドS200のスチールシャフトを装着するなら、重量フローを考えるとドライバーの総重量は300g以上になる。ところがドライバーは300g以下で心地良く振り切れるゴルファーでも、超重量帯のスチールアイアンを使用するゴルファーが多いという。
「重要なのは静的ではなく動的に感じる重量です。ゴルフは静から動の動作があり、動的重量が重すぎれば、オーバースイングをはじめ、始動でも無駄な動きを誘発してしまう。シャフトの硬さも重要だから、4年前からマミヤの振動数理論を導入しています」
前提となるのは、ヘッドスピード(HS)と飛距離の誤差。スイングプレーンはクラブ重量が影響して、ミート率はシャフトの硬さや振動数が影響するため、
「ゴルファーに合わせたシャフトの硬さや振動数をフローさせてミート率を上げれば、HSと飛距離の誤差がなくなります。振りやすく飛ぶクラブが出来るわけです」
HSが速いけど飛ばない。そんなゴルファーに理解してほしいと山下代表は語気を強めた。
潰れそうな工房は同じ臭いがする!?
工房開業以前、同氏は新興グリップメーカーの卸業に携わっていたことがあるという。九州以外の工房を行脚するうちに、経営の厳しい工房の〝ある種の臭い〟を感じたという。
「潰れそうな工房は同じ臭いがしましたね。活気がないこと、壁にパーツメーカーのポスターが貼っていないとか、薄暗いなど。それが共通点です。そのため、開業するときは当時勢いのあった『クレイジーファクトリー』の店構えを参考にしたのです」
ところで、同工房には48歳の山下代表をはじめ、最年少は27歳の栗原・M・俊哉店長など4人体制。将来は暖簾分けという形で、各自に独立してほしいという。
「元々は上達しないゴルファーに適正なクラブを提供することで、ゴルフが楽しくなることを伝えたかった。それを多くのゴルファーに提供するには今の店舗だけでは難しい。幸いにして、経営の厳しい工房を見る機会が沢山ありました。その点からも、成功する工房を多店舗展開で経営して、適正なクラブを多くのゴルファーに提供したいですね」
後継者不足で廃業する工房が多いなか、次世代のフィッターやクラフトマンを育てるのも工房の大きな役割。そんな工房経営者が増えることが業界の活性化につながるはずだ。
2020年12月現在、取材当時よりも藤倉コンポジット、シャフトラボなどの試打シャフトが充実。コロナ禍で完全予約制で営業を徹底しており、予約なしでの来店客にはフィッティングサービスの提供ができないほどの盛況ぶり。是非、予約をしてフィッティングを受けたいものだ。
■企業情報
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この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2018年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものです。