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山口県のゴルフ場発「1人乗り乗用カート」が旧弊をぶっ壊す

ニュース 松尾俊介

名前は『PONY』

山口県宇部市のゴルフ場、アイランドゴルフガーデン宇部に『PONY』(ポニー)と名付けられた1人乗り用の電動乗用カートがテスト導入されています。

ゴルフ場の親会社であるロックフィールドゴルフリゾート株式会社の大島均社長が、ゴルフをもっと手軽にカジュアルに楽しめる方法のひとつとして「1人乗りカート」の有効性に着目し、正式導入前のテスト用として12台導入したものです。

現在、コースでの実施テスト段階ですが、改善すべき点がいくつか出てきたことを踏まえ、新たにマレーシアのメーカーに依頼して「自社オリジナル製品」として開発を進めています。

1人乗りカートの良さを体感してもらうために、導入直後はメンバーに無料で、ゲストには低料金で試乗を促し、その使用感を聞き取り調査したところ、想像以上の高い評価があり、本格的に導入、ゴルフ場の特徴のひとつとしてアピールすることになったのです。

コースフロントに『PONY』を1台展示して、その脇に設置したTVモニターで使い方や機能を動画で流すだけではなく、コースのホームページにも同じ動画を掲載して『PONY』を使う楽しさ、快適さをPRしているのですが、やはりゴルフ場で実際に使っている姿を見るとつい乗って体感してみたくなるものです。

潜在的な需要は想像以上にある

「導入前は、どのようなゴルファーがこのカートを利用するのだろうか、どうしたら『PONY』を受け入れてくれるのだろうか、と色々考えましたが、一度乗ってプレイしていただくと確実にリピーターとなって予約が入るようになりました。

シニアから若いゴルファーまで、想像以上に幅広く利用されています」

と、中西大輔支配人は答えてくれました。

新型コロナウィルス感染症の拡大により、世の中の仕組みが大きく変わり始めました。その中でゴルフ場は3つの密を避けるという点から来場者が増え始めているのですが、唯一問題があるとすれば、乗用カートにマスクなしで複数のプレイヤーが同乗することによる感染リスクです。

その点、1人乗りカートは密からは完全にセパレートされるので、感染防止対策としては最も有効な手段となります。感染防止という予想外の出来事が『PONY』にとってフォローウィンドになったことは確かです。

しかし、1人乗り用カートの潜在需要は、単に「コロナ対策」に限ったものではありません。実は、ゴルフ市場には様々な問題点がありますが、そのいくつかを『PONY』が一気に解決してくれるかもしれない。そんな期待感を抱かせるのです。

その意味で「ポニー」は、ゴルフ界の改革を実現する奔馬になりえるのです。

すべての仕組みが「ゴルフ場目線」

今、世界中でゴルフ人口の減少に危機感を持つ業界関係者は多いのですが、問題は、なぜゴルファーの減少は続くのかという点です。

現代人にとってはプレイ時間が長すぎる、ゲームを楽しめる腕前になるまで時間もお金もかかる、道具にもプレイ料金にもお金がかかる、マナーやエチケットなどの縛りが堅苦しい、などなど理由はいくつもあります。

どれも当てはまる理由ですが、端的に言えばゴルフをやめる人の方が始める人より多いという明確な事実があります。

日本では若年層を対象とした統計で、ゴルフを始めた人のうち約半数が「3年以内」に止めてしまうというデータもあります。

その主な理由は、<楽しめない、なかなか上手にならないから>というもので、ゴルフ界は無策のまま、敷居が高いとかお金がかかるなどのハードルを乗り越えてきてくれた人たちを放置して、半数も失っている。その原因を早急に取り除かなければなりません。

ゴルフが楽しいものであれば、やめる人はもう少し減らせるはずです。

実際、「1人乗りカート」がなぜ人気が出たかを考えると、理由は簡単。「楽しい!」ということに尽きるでしょう。ゴルフ場という広大な空間を自由にプレイするという開放感を感じられること、そこが一番のポイントではないかと考えます。

日本独自の「5人乗りカート」はキャディシステムの4バッグの延長上にあるもので、効率の良さを考えて組み入れられたものですが、それはあくまでゴルフ場の視点に立ったシステムの延長上にあります。

また、5人乗りのカートは「2人乗りカート」2台分より安いだけでなく、メンテナンス費用も1台分なので安く、またフェアウェイを走行できないのでコース管理がしやすい、しかも進行状況を把握しやすいというメリットがあります。

むろんこれらのメリットは、あくまでゴルフ場にとってです。

一方、「1人乗りカート」は自分の打ったボールのところにプレイヤーが直接行けるため、正しいクラブ選択が容易にできるというゴルフ本来のプレイスタイルを取り戻せます。違う番手で打ちたくても、カートが遠くにあるため「まあいいか」でミスショット。それがなくなることは大きな利点です。

『PONY』という専属キャディと一緒にゴルフをしているような感覚は、開放感、快適さに繋がるものなのです。

楽しさを実感できれば、さらに楽しさを求めて練習場に行き、コースに出かけることにつながります。プレイ回数が多くなれば上達のペースも早まり、良い循環が回り始めるのです。

タクシーに乗るのに、見知らぬ他人と相乗りするのはごくごく稀です。なぜでしょうか? 相乗りすれば安くなるのにそれをしないのは、他人と一緒にいる煩わしさがあるからです。人には自分の空間を一定のスペースで確保したいという自然の欲求があるのです。

それを、ゴルフ場の都合で同伴プレイヤーを1台の車に相乗りさせることは、かなり乱暴な(ゴルフ場からすれば良いシステムと思っているかもしれませんが)やり方でしょう。

その意味で筆者は、5人乗り乗用カート、電磁誘導式カートは「1人乗りカート」の出現により徐々に過去の時代の遺物となって行くと見ています。

アイランドゴルフガーデン宇部では1台の使用料として1650円を設定していますが、それでも使用したい人が多いのは、少なくとも「1650円以上の価値」をゴルファーが認めているからです。

『PONY』開発の5つの狙い

『PONY』は次の5つの基本コンセプトを盛り込んで開発中とか。前提にあるのは「開放感」「楽しさ」「快適さ」です。

1、電気駆動車でありCO2を排出せず環境にやさしいこと。

2、200Vの電源で充電でき現状モデルでは1回の充電で36Hの運行距離があること。
  <テスト用は電池の性能が十分でないために高性能のリチュウム電池を装着予定>

3、USBの受け口が2箇所ありスマートフォンの充電やPCとの接続もできるためにGPSを利用したコースナビも可能であること。

4、タイヤもフェアウェイ走行を考えて芝生を傷めることがない特殊なものを装着すること。

5、カート重量(テスト用は220kg、5人乗りの平均的カートの重量550kg)は可能な限り軽量化し、走行距離を伸ばし、安全を重視し操作性を高めること。

以上が基本コンセプトですが、この『PONY』が広く普及すれば、ゴルフ場の集客コンテンツとして力を発揮することは間違いない。筆者はそう見ています。

なぜなら、今までの一般的なゴルフ場は社交を中心にプレイスタイルをシステム化してきました。どちらかといえばプレイを「させてあげる」的な空気感があり、ゴルフの持つ楽しさに行き着く前に、そのゴルフ場のやり方に合わせなければいけない堅苦しさを感じさせてしまうのです。

ゴルフ場に「させてあげる」の意識がなくても、結果的には自分たちのやり方を前面に出し、強要していることが「当たり前」になっている。そのことに気づかないのです。

1人乗りのカートをゴルファーの選択肢のひとつとして提供するだけでも、旧来のシステムに対するアンチテーゼとしての「開放感」、そして、自分で運転してプレイできる「快適性」や、ゴルフ場の雰囲気や同伴プレイヤーとのコミュニケーションを自分の距離感で行える「安心感」が醸成され、需要を高められると思います。

ゴルフ場以外の可能性

もうひとつ可能性があるのは、ゴルフ以外の発展性で、1人乗りの短距離移動カートとして存在感を発揮することも考えられます。

病院や大学のキャンパス、大きな工場などでの移動手段、観光施設や人の多く集まる街の中心地域の交通環境や空気環境などを考慮した「小さな交通手段」として、2輪の自転車やバイクなどよりも安全に移動できるだけでなく、物も運べます。

電気駆動なので環境にも優しく、家庭用電力で充電できるなら使い勝手も手軽になるでしょう。環境意識が高い欧州では、目標年度を決めてガソリン車やハイブリッドカーの新車を生産しない方針が決まっています。

そのような動きに照らしても、筆者は可能性を確信します。

また、加速する超高齢者社会や障害者の移動手段としても有効で、生活の中に普通に存在する乗り物としての可能性もあります。

先述のように『PONY』は開発段階で、改良点はまだまだあるかと思いますが、最初はスポーツなどで手軽に利用をしてもらうことで認知を広め、そこからいろいろな形の要望が出てきて、仕様を少しアレンジするだけで使用範囲が広がるという期待感があります。

山口県宇部市のゴルフ場から始まった1人乗りカート、これからどんな可能性を見せてくれるのか楽しみです。


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ライター紹介 ライター一覧

松尾俊介

松尾俊介

1949年12月23日生れ  神奈川県出身
東海大学工学部航空宇宙学科卒、在学中は体育会ゴルフ部副将および関東学生ゴルフ連盟の連盟委員を兼務。パイロット志望から一転してゴルフ用品販売業務に携わる。ゴルフ工房を主宰しながら1988年からフリーランスゴルフライターとしても活動。国内外合わせて25のゴルフクラブメーカを取材し、記事として各誌に掲載する。「良いゴルフクラブとは何か」をテーマに取材活動を続ける。1989年米国キャロウェイゴルフの取材と掲載記事をきっかけに親交を深める。

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