まずは三浦技研の工場動画をご覧頂きたい。その後、コロナ禍によって生じたゴルフクラブの物不足と、国内工場の健闘ぶりを取材したので併せてお読みください。
国内で作ればコロナは無関係?
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三浦技研 TC-101[/caption]
コロナ禍で国内での製造工場に注目が集まっている。その一つが三浦技研の躍進だろう。今年2月発売のアイアン『TC-101』は、今季ルーキーイヤーにして2勝を挙げ賞金ランクのトップを走る笹生優花の使用で脚光を浴びた。
現在、『TC-101』のカスタム研磨商品の納期は2か月先ともいわれているが、笹生の活躍以前から同アイアンはスタートダッシュを見せていた。緊急事態宣言が発出された新型コロナウイルス拡大の時期にあっても、国内生産ゆえに供給が滞らなかったからだ。
同様に国内生産で潤沢に供給されているのがシャフトだといわれている。アーチブランドを展開するHopeFulの浅井淳一取締役は次のように指摘している。
「いわゆる地シャフトは、国内工場で製造しているメーカーが多いと思います。そのため、海外工場での製造がほとんどのグリップやドライバーヘッドと違い、供給が滞らない。いま、地シャフトの販売が好調に推移しているのは、そのためだと思います」--。
地クラブのヘッドは納期遅延が悪化
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中条カムイ KP-01[/caption]
一方で、コロナ禍で大幅に製造が遅れたのが地クラブのドライバーヘッドだろう。キャスコの『バティック』、イオンスポーツの新ブランド『ジニコ』など新規参入やリブランドなども見受けられるが、コロナ禍で地クラブメーカーの担当者は製造拠点である中国に渡航できず、現地での細かな修正のミーティングが行えない。そのため、量産前のヘッドサンプルが納品されても修正が遅れ、発売が数か月遅れる事態も発生している。
「6か月以上発売が遅れて、販売店、ゴルファーの方々に御迷惑をかけました」--。
そう語るのが中条カムイの中条浩重専務だ。同社が11月に発売した『KP-01』は、当初4月の発売予定だった。それがコロナ禍で量産が遅れた。それ以外にも、多くのパーツブランドで納期が遅れ、商機を逸したケースが散見される。
グリップは世界的な欠品 理由は生産調整とスターターセットの爆売れ
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純国産のパルマックス[/caption]
世界的に欠品していると言われるのがグリップだ。大手グリップメーカーがコロナ禍で大幅な生産調整を行ったことに加え、日米のゴルフ用品市場でスターターセットが爆売れしたことが、グリップの不足につながっている。
「クラブの販売は順調ですが、ヘッド、シャフトが間に合ってもグリップが不足しているので、特に初心者セットの販売店への供給が遅れるとの噂も出ています」(流通関係者)
一方、一部の商品を国内でも生産しているのがイオミックだが、
「イオミックのグリップ生産のメインはタイといわれていますが、一部国内でも製造しており、同社は忙しいと聞いてます」(問屋関係者)
鍛造は日本のお家芸 タイガーのクラブを削った男のアイアンも国産
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来春発売予定のアーティザンアイアンは国内工場で生産[/caption]
ゴルフクラブのパーツで国産がひと際目立つのが、鍛造アイアンだろう。三浦技研や共栄ゴルフ工業、藤本技工などが業を営む兵庫県神崎郡市川町は、国産アイアン発祥の地として歴史を刻んでいる。一方、2017年に鍛造工場を竣工したのがササキ(栃木県鹿沼市)だ。
当初、国内での鍛造フルチタンウッドの開発を目指したが、現在はアイアン、ウエッジを中心に鍛造製品を優先的に製造している。西の市川町、東のササキと、アイアンの鍛造工場の存在は、国内での鍛造製品の製造に拍車をかけているといっても過言ではない。
その中で、昨年日本に上陸したアーティザンゴルフのアイアンが来春発売されるが、それが国内の鍛造工場で生産しているようだ。
アーティザンゴルフといえば、ナイキ時代にタイガー・ウッズのアイアンを手掛けていた研磨師マイク・テーラーのブランド。そのアイアンが日本国内での製造となれば、今後、鍛造品の日本国内製造が再び注目を浴びるのは必至だ。
「中国工場の人件費は10年前と比較して大きく高騰しています。コロナ禍でコミュニケーションが取りづらいこともあり、今後は日本国内での生産が見直されることは間違いありません」(地クラブ関係者)
コロナ禍で浮き彫りになった製造拠点の問題。大手クラブメーカーも含め、量より質の時代に変化しているのは間違いない。その中で少量高付加価値の商品を提供できるのが、国内工場の強みといえるかもしれない。
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