【東京都港区】ゴルフメンテナンスアーバン千代田 「受け継ぐソール研磨  継承者の存在が未来を創る」

【東京都港区】ゴルフメンテナンスアーバン千代田 「受け継ぐソール研磨  継承者の存在が未来を創る」
ゴルフメンテナンスアーバンと言えば、業界でも最古参のクラフトマン豊政保宏氏が1983年に東京都墨田区で創立。一時は全国に20店舗を出店し、アーバングループとして名を馳せていた。東京での最後の弟子となったのが、ゴルフメンテナンスアーバン千代田の吉良一矩氏。今回は親方と慕う豊政氏の技を受け継ぐソール研磨を取材した。

先人の知恵と経験で工具は改良して使う

3月を目途に、新たに南青山のレッスンスタジオ「南青山ゴルフスタジオ」(東京都港区)の一画で吉良一矩氏は作業を始める。御年73歳、現役の工房マンだ。55歳で脱サラ。2002年9月にゴルフメンテナンスアーバン(当時・東京都墨田区)の門を叩き、創始者である豊政保宏氏に師事した。ほどなくして、墨田区の店を引き継ぎ、屋号を「ゴルフメンテナンスアーバン千代田」として独立。以後、インドア内で営業するなど拠点を変えながら20年近くゴルファーに寄り添ってきた。 豊政氏や兄弟子から教わったのは技術だけではなく、使いやすい道具の改造まで。その中で興味深いのが、バランス計だ。 「組み立ての際には、必ずシャフトをカットしていない状態で、クラブバランスを測るよう教わりました。なので、使っているバランス計は、シャフト末端を引っ掛ける部分が貫通しています」 例えば、35㌅でウエッジを組み立てる場合、ウエッジ専用シャフトなら37㌅のタイプもある。その2インチを考慮した状態でバランスを測る。 「理由は分かりませんが、そう教わりました(笑)」 いまでこそ、ウエッジ専用シャフトもあるが、数十年前はそれがなく、ウエッジに使用できるシャフト長もメーカー内でバラバラだった。だからか「切らずに測定する」ことで、作業の効率化を図っていたのだろう。吉良氏が使用する工具や機械はすべて古いものが多い。改良して工具や機械を使いやすくする。それが先人の知恵であり経験だ。 その中で磨き抜かれた技のひとつが、ソール研磨。吉良氏の研磨は独特だった。

基本は1種類のペーパーだから研磨音で素材が分かる

多くの職人がウエッジのソール研磨を行う上で、重要視するのがスイングした際のソールの地面との接触部分。だから、基本的にはプラスチックボードの上などでスイングしてソールをあて、傷が付いた部分を研磨する。ところが同じ意味合いでも、吉良氏はソールの座り具合から、ソールのヌケを想定してソール研磨を行う。 「使用するのはインクがしみ込んだスタンプ台です。構えた時に座りが悪い部分、つまりバウンスの高い部分にインクが付きます。そこがソールのヌケに関わります」 スイングをせずに、ソールの座りで判断する。もちろん、それだけではなく、ライ角がアップライトかフラットかによって、トゥやヒール側の引っかかりも含めて研磨するという。 使用するのは特注のサンドペーパー。これも修業時代から使用しているもので、 「基本的に粒度は120番を使用してます。ソールはラウンドで徐々に傷ついていくものなので、昔は粗研磨で終わりですね」 バウンスの高い位置を、リーディングエッジ側に移動させるため、ソールのバッグフェース側から徐々に研磨をスタート。それも1種類のペーパーで基本の作業を終えるから、グラインダーへの押し付け具合が重要となる。 「押し付ける力加減、削れ具合で素材を確認しながら研磨します。硬い素材は高い研磨音で、柔らかい素材は低い音になります。軟鉄品は比較的柔らかいので、ソール研磨も含めて、調整を前提にクラブを使う方には軟鉄品を薦めています」 研磨音でも素材を知り、ゴルファーへ素材も含めて商品を推奨する。アナログだが、長年培われた職人の耳はハイテクを超える。

技を伝承する 継ぐ者の存在

御年73歳の吉良氏は、 「まだまだ現役を続けたいと思っています。そうは思っていますが、3月を目途にお世話になる『南青山ゴルフスタジオ』には、工房の技術を教わりたいという若いインストラクターがいるので、技の継承という意味では、彼に技術を教えていきたいと思います」 内容はというと、 「研磨もそうですが、基本的なことというか、私が親方や兄弟子から教わったことですね。おそらく先々は道具も引き継いでもらうことになるかもしれません」 工房はそもそも一代ぽっきりの経営が多く、経営者の高齢化で廃業するケースが多い。技の継承者の存在が、地クラブ・工房ビジネスの大きな課題であることは間違いない。 ■企業情報 〒107-0062 東京都港区南青1-10-3 橋本ビル 2F 南青山ゴルフスタジオ内