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プレー人口激減期(18-23問題)とゴルフ場(1)

ニュース 北徹朗

もっと考えられるべき「ゴルフ場での遊び方」

月刊ゴルフ用品界2020年8月号への寄稿『コロナ禍と大学授業−ゴルフ授業再開へ向けてのガイドライン−』に対して大きな反響を頂いた。タイトルに掲げたコロナガイドラインよりも、併せて論じた『ゴルフの本質論』への反響が大きかった。つまり、これまでの「市場活性化策」や「プレー人口増加策」は本質的ではない、という指摘であった。

過去約20年に渡り「ゴルフで社会性を身につけよう」とか「ゴルフをすれば認知症に効く」等々、本質論から外れた内容が掲げられることが多かったが、一時的には賑やかされても「市場活性化(プレー人口増加)」という目標には遠く及ばず減少が止まることはなかった。

当時の論考では、【手段としてのゴルフ論】や【何かの目的の下請け的発想のゴルフ論】ではなく、ゴルフそのものが「楽しい」、「またやりたい」と思えるような環境整備(画一的なプレースタイルの改善)をまず考えるべきであることを提案した。

ゴルフ市場活性化策に業界横断的な共通項はない

急激な市場規模縮小が続く中、何とかその“出血”を止めるため、女性やジュニアといった【ターゲット論】や、社会人基礎力が身につくとか認知症に効くといった【副次的価値論】など、様々な話題が挙げられてきた。しかしながら、そもそもプレー行動を決定するのは消費者であり、個人の価値観にまで踏み込む提言は的外れな上に、胡散臭さが滲み出て消費者の心がさらにゴルフから離れて行く印象を受けてきた。

ゴルフ業界の傍らに身を置いていると「産業全体を挙げて」とか「ヨコの連携」と言ったワードを頻繁に耳にする。だが、この約20年間で業界を横断するような有用な共通課題は見出されていない。

要するに、ゴルフ業界全体で取り組めるようなテーマなど存在しない。ゴルフ場を例に考えても、会員制度やゴルフ場のグレード等様々であり、共通項など見出せるはずがない。業界の構造自体も複雑である。また、消費者の一部に焦点を当てようとすれば、何をしてよいかわからなくなる業種や部門が必ず生じる。

まずは、各自の業種・職場で最終着地目標(ゴルフ人口増加)に向かって、目の前の課題にしっかり取り組み、邁進していくべきであろう。そして、そこでの問題意識を業界内で披露し合うことを繰り返して行くことで、協力体制が徐々に整いだすのではないか。

ゴルフ場が変わらなければ何も変わらない

ゴルフをする人が増えない高いハードルは「ゴルフ場での遊び方が1つしかない」ということにある。18ホールや9ホール区切りではない楽しみ方が可能なコースは国内に幾つか存在するが、大半は前者のプレースタイルしか選択できない。融通が利いたとしても、スループレーが認められる程度だろう。また、“R&A規則”の名の下に用具用品の自由度も極めて低い。

現在、コロナ環境下で一時的にゴルフ人口が増えているという報道もあるが、人口減少や少子高齢化の推移を見ると、今後もゴルフ人口の減少傾向が続くことは間違いない。筆者は自らの先行研究を踏まえ「18−23問題」(2018年~2023年にかけてのゴルフ人口激減)を指摘し、それに立ち向かうための改善策や、ゴルフ場での遊び方のバリエーションを増やすための具体的な提案をしてきた。

以下に、「ゴルフ場改革7つの提案」として、首都圏1都8県のゴルフ場支配人に賛否を問うたので、その調査結果を紹介したい。支配人の考え方から「今すぐ変えられそうなこと」、「すぐには変えられそうにないこと」など、ゴルフ市場活性化に繋がる何らかの糸口が見えてくるのではないか。(調査期間:2020年8月31日〜10月30日、分析対象:1都8県の支配人67名)

エビデンスベースの「ゴルフ場改革7つの提案」

筆者による過去の研究(プレーヤー、未経験者、離反者、ゴルフ場・練習場支配人)から導かれた「7つの提案」は下記であった。

1)1ホール単位での料金設定
2)コースの時間貸し料金設定
3)1ホールの時間貸しで同じホールを繰り返し回るプレースタイル【ボウリングスタイル】
4)用具(クラブ)ルール規制の緩和【初心者向クラブなど、ルールでは認められない用具も使用可とする等】
5)スマートゴルフ場化の推進【Wi-Fiをコース内に多数配置し自動チェックイン・チェックアウトを可能にする精算の完全オンライン化】
6)ドレスコード自由化【ドレスコードフリー】
7)ゴルフプレー以外のゴルフ場利用【入場料設定による公園的利用(ゴルフエリアとパークエリアの分離等)】

調査対象ゴルフ場のタイプは、メンバーコース(24コース)、メンバーコース/紹介無のビジター利用可(28コース)、パブリックコース(14コース)、無回答(1コース)であった。

支配人には、下記の文章とともに質問し、5件法(大変有用~全く有用でない)での回答を求めた。

〈○○ゴルフ場 支配人様〉
ゴルフ人口は1990年代前半をピークに減少が続いています。過去、約20年を振り返ると、様々な施策(女性やジュニアの参加促進、若者への訴求)が試みられてきましたが、いずれも期待したほど成果を上げていません。2023年頃には、現在のゴルフ人口を支える厚い層の年代が健康寿命に到達しようとしています。(中略)経費や収支バランスは別として「ゴルフ人口拡大のための有用性の高さ」という観点のみでお考え頂きご回答下さい。

「7つの提案」に対する支配人の賛否

「大変有用」と「まあ有用」の回答数を合算した回答率のうち、概ね50%以上、30%以上、20%以下を目安に類型化した。

〈今すぐできそうな現実的な取り組み〉

1位:スマートゴルフ場化(65.7%)
2位:ゴルフ以外のゴルフ場利用(49.2%)

〈近い将来広がる可能性のある取り組み〉

3位:クラブ規制の緩和(34.5%)
4位:ドレスコードの自由化(37.4%)

〈現状ではごく少数でしかできそうにない取り組み〉

5位:ホールごとの料金設定(20.9%)
6位:コースの時間貸し(17.9%)
7位:ボウリングスタイル(11.9%)

調査結果の詳細と考察は第2回で述べたい。

■参考文献
・北 徹朗(2021)ゴルフの普及と人口増加のための基本的な考え方、ゴルフの科学Vol.33, No.1
・北 徹朗(2018)ゴルフ産業改革論、(株)ゴルフ用品界社


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北徹朗

北徹朗

<現職>武蔵野美術大学身体運動文化教授・同大学院博士後期課程兼担教授、サイバー大学IT総合学部客員准教授、中央大学保健体育研究所客員研究員、東京大学教養学部非常勤講師

<学歴>博士(医学)、経営管理修士(専門職)、最終学歴:国立大学法人東京農工大学大学院工学府博士後期課程

<主な社会活動>ゴルフ市場活性化委員会委員(有識者)、公益社団法人全国大学体育連合常務理事、一般社団法人日本運動・スポーツ科学学会常任理事、日本ゴルフ学会理事・代議員、日本ゴルフ学会関東支部事務局長、一般社団法人大学ゴルフ授業研究会代表理事

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