ゴルフ場で地元小学校の卒業イベント

新型コロナウイルス感染拡大にともない、卒業を控えた浜須賀小学校(神奈川県茅ヶ崎市)の6年生が最も楽しみにしていた修学旅行が中止になった。予定されていた鎌倉見学、東京見学の中止に加えて、運動会さえ午前中のみの短縮開催となり、普段の生活の不自由さにあわせて仲間との思い出づくりさえ奪われたことに悔し涙を流すこともあった。
そんな中、寒川町と茅ヶ崎市の公立小学校では、修学旅行の代替行事として、「横浜・八景島シーパラダイス(金沢区)」を貸し切り、2月17日にバスでの日帰り旅行を計画。同施設が通常営業時間に貸し切りを行うのは初の試みとして話題になったが、緊急事態宣言の延長にともない、やむなく中止を余儀なくされた。
そんな子どもたちのために何かできないかと頭を悩ませていた浜須賀小学校の松永忠弘校長は、隣接し防災避難場所でもある茅ヶ崎ゴルフ倶楽部へ相談をした。
タイミングを同じくして、「横浜・八景島シーパラダイス」での日帰り旅行が中止になったニュースをテレビで見て何かできないかと考えていた、(株)ゴルフダイジェスト・オンライン顧問、GDO BASE CHIGASAKIの伊藤修武ゼネラルマネジャーは、「子どもたちのためにひと肌脱ぎましょう」と即答。卒業式まで残り1ヶ月と少し。はたして今どきの子どもたちはどんな体験に感動するのか?
4クラスの全児童140名のため、広いゴルフ場の芝生をめいっぱい使って満喫できるような企画づくりに掛かり切りとなった。
3月11日に開催された、浜須賀小学校 卒業記念「Special Day」。校庭で行われた開会式では校長先生より卒業へ向けたメッセージと、イベントの企画に至った経緯が伝えられた。その後、3番ホールへ続く広域避難場所出入口を通って茅ヶ崎ゴルフ倶楽部へ。青空の下、盛りだくさんのアクティビティが子どもたちを待ち構えていた。
本物のクラブとボールを使って、ティショット、アプローチ、パターゲームをする「ゴルフ体験」、サッカーボールを使った「フットゴルフ体験」、産業廃棄物になってしまうヨットの帆をアップサイクルする「記念品制作」。数多くのイベントを運営してきたスタッフも「思わずうるっときた」「今までで一番思い出に残る」など、いたるところで沸き上がる歓声と、マスク越しに溢れる笑顔に癒されたようだ。
6年生最後の思い出作りイベントは、色とりどりのエコ風船をカウントダウンとともに大空に飛ばして終了した。校長先生は、「子どもたちのためにゴルフ場を開放して、こんなにもたくさんのイベントを考えてもらったことに感動しました。将来、この地域で育っていく中で、地元のつながりを感じることができて良かったなと思っています。コロナ禍でさまざまなつながりが失われていますが、こうして新しいつながりを感じることができたことがとても貴重だったと思います」と感想を述べた。「私たち大人が、職員自身が、子供たちに学ばされました。諦めずに、いろんなことをやらせてくださいと、自分で考えて行動に移す。それができるようになった貴重な1年になったと思います」と、当たり前のことができない悔しさをバネに逆境を乗り越える力を得た生徒を称えた。
最後に参加した子どもたちの感想を列記しよう。新型コロナウイルスに翻弄されながらも、前向きに進もうとするピュアな姿勢から得るものがあるはずだ。
半谷海翔(はんやかいと)さん
イベントを通じてみんなの仲が深まって本当によかったなぁって。コロナの影響で色々なことができなくなって辛い想いをしてきたけれど、色々な人に支えられて乗り切ることができた。何事にも諦めずに生きていきたいと思った。
加藤海(かとううみ)さん
ゴルフは未経験。みんなの笑顔をみて、ゴルフ場ってとても楽しくなれるところだと思った。すごく楽しくて、もっとやってみたいという気持ちが芽生えた。広々していて心が自由になり、自分らしさを発揮できて気持ちがよかった。
望月ありな(もちづきありな)さん
「早くコロナがなくなりますように」と願って風船を飛ばしたのが一番の思い出。隣にあるけれど、小学生でゴルフ場に来れるなんて思わなかった。将来はこのイベントのようにたくさんの笑顔を増やせるような企画をしてみたい。
宮先壮(みやさきそう)さん
ゴルフは初めてだったけれど、楽しくてはまっちゃった。パターゲームは入れるための微調整が難しくて面白かったし、ドライバーショットを打ったときの快感がたまらない。コロナで何にもできなかったことも思い出。何ができるのかを自分達で考えて、先生たちと話し合えたこともよかった。
佐久間智也(さくまともや)さん
修学旅行の代替えイベントも中止になり、「またか」と思っていたので、イベントを開催してもらえたのは、言葉で表現できないくらいにうれしかった。近くにあったけれど、ゴルフ場に行ったことがなくてどんな場所かわからなかったが、今回の体験でいい思い出になった。コロナで何もできないことを諦めるのではなく、できることを発案して実行することを学んだ。これからも色々なことに挑戦していきたい。