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プレー人口激減期(18-23問題)とゴルフ場3

ニュース 北徹朗

コロナ環境下で一時的にゴルフ人口が増えているという報道もあるが、人口減少や少子高齢化の推移を見ると、今後もゴルフ人口の減少傾向が続くことは間違いない。この連載では、筆者が提唱する「18−23問題」(2018年~2023年にかけてのゴルフ人口激減)に立ち向かうための改善策や基礎資料に基づく提言を述べさせて頂く。

コロナパンデミックに伴う「屋外型レジャー重視」への行動変容

『週刊ダイヤモンド(7月3日号)』に11年ぶりにゴルフが特集された。用品、練習場、ゴルフ場ともに好調な状況を踏まえ「ゴルフ復活!」というテーマで特集が組まれていた。

2021年7月12日、東京都に4度目の緊急事態宣言が発出されたが、この約1年で【屋外型レジャー重視の行動変容】へとレジャー行動の価値基準の軸が変わった。コロナ状況下において、外食産業の低迷が報じられるが、反面、テイクアウト・デリバリー文化の発展は著しい。本号ではゴルフ場での食に関する新展開の可能性を提案したい。

テイクアウト・デリバリー文化の著しい発展から着想される「ゴルフ場での食」に関する新展開

内閣府が2021年4月30日に発表した『新型コロナウイルス感染症禍の外食産業の動向』によれば、2020年の飲食店倒産件数(月次)は842件(前年比+5・3%)、飲食店の休廃業・解散件数は1711件(前年比+6・5%)であったとされている。その後も営業自粛要請等が続いていることから、これらの状況が今後すぐに改善することは考え難い。

しかしながら、コロナパンデミックは、外食市場を縮小させはしたものの、テイクアウト・デリバリー文化を定着・発展させた。さらに、外食事業者がテイクアウト・デリバリー業態に参入するようになったことで、ポストコロナ時代においても外食/中食のボーダーレス化が進み、業界内での競争激化が予想される。

コロナ状況下で活況を呈する「ゴルフ場」と「キャンプ場」

コロナ状況下において集客増加が続いている稀有な産業として、ゴルフ場産業やキャンプ場産業がある。キャンプ人口については、コロナ以前から増加傾向が続いており、『オートキャンプ白書2020』(日本オートキャンプ協会)によれば、キャンプ人口は7年連続で増加(2010年:720万人→2019年:860万人)しており、その状況下でコロナ期に入り、さらに勢いを増している。

他方、ゴルフ人口は1990年代をピークに長期に渡り減少傾向が続いてきた。『レジャー白書』(日本生産性本部)によれば1992年には約1480万人であったものが、最新データでは約580万人とされ、ピーク時の半減以下まで減少していることが示されている。

スループレー導入促進は「コロナ時代の一時的な急場凌ぎ」となってはならない

近年、ゴルフ人口はピーク時の半数以下まで減少してきた。ところが、コロナ状況下におけるゴルフ場入場者数は、2020年5月頃までは落ち込んだものの、その後は月当たりの入場者数が前年比100%を越える都道府県が多いとされる。今般のコロナ状況下において、スループレーを認めるゴルフ場が増えており、クラブハウス内で食事や入浴をすることなく、ゴルフだけを楽しむことを可能とするプレースタイルが定着しつつある。

前述の『週刊ダイヤモンド』において、PGMの田中耕太郎社長は、ゴルフ人口の展望について、〝スループレーの普及がカギ〟としつつも「ゴルフ場にとって売り上げ単価が落ちるデメリットもある」としている。その上で、『そういう課題を乗り越えないとスループレーの普及はなかなか進まない。中長期的に考えれば若年層のゴルファーを増やすキーポイントに確実になってくる』と述べている。

スループレーをコロナ時代における緊急避難的対応(一時的な急場凌ぎ)と捉えるのではなく、しっかり定着させて行く必要がある。となると、ゴルフ場でのレストランやフードサービスについて、新しい形を模索する必要があるだろう。

「ゴルフ場活況」と「テイクアウト・デリバリー文化発展」を掛け合わせる

ゴルフは前半9ホール後に昼食を挟み、後半9ホールを行うプレースタイルが一般的である。プレー中に昼食を必ず挟むスポーツは稀有である上に、日本のゴルフ場の9割以上が会員制であることからも、従来、「地産地消」、「季節料理」、「女性客を意識したスイーツの充実」など、ゴルフ場でのフードサービスの工夫と言えば〝高級路線〟あるいは〝おしゃれ路線〟をウリにすることが多かった。

ゴルフ場関係者へのヒアリングでは、ゴルフ場経営において最もコストがかかるのはクラブハウスであるとされている。例えば、浴室内にある3つの浴槽うち、湯が張ってあるものが1つだけしかないゴルフ場を最近見たことがあるが、クラブハウスのコスト削減がゴルフ場経営の肝となっているのかもしれない。

コロナ状況下でゴルフが活況である最大の理由として、「屋外で充分なフィジカルディスタンスをとって実施可能なレジャー」であることが挙げられる。さらに、「コロナを考慮して昼食を挟まずスループレーできること」も安心感をさらに強めている。

筆者はこの状況を見て、【テイクアウト・デリバリー文化の発展】と【屋外レジャー重視の行動変容/コロナ期のゴルフ人口増加】を掛け合わせ、ポストコロナ時代において「フードサービス産業」×「ゴルフ場産業」×「ゴルファー(来場者)」のそれぞれに、Win−Win−Winの関係を構築できる可能性を探れないか、と考えた。

「ゴルフ場へのフードデリバリー」や「フィールド調理・販売」への期待

筆者が実施したゴルフ場支配人を対象とした調査(2021)では、ゴルフ場の経営改善のために「ゴルフ場の公園利用といったゴルフ以外のゴルフ場利用」に経営上の有用性を感じている支配人は49・2%であり、近い将来、ゴルフをしない家族も連れてゴルフ場に行く姿も想像された。「ゴルフ場の公園利用の発想」は、調査対象としたゴルフ場支配人が回答した様々な改善案の中でも、有用性の高い上位の内容であった。

例えば、プレーをしない人のレストラン利用のみを受け入れているゴルフ場(千葉県)や、地域の夏祭り会場としてゴルフ場を開放したり、地元企業によるフードコートを開くなどのイベントを行うゴルフ場(栃木県)も既に存在するが、全国約2200か所のゴルフ場のうち、これらは極めて稀な一例であろう。

今後、ゴルフ場向けのフードデリバリー、出張調理、出張販売サービスが定着すれば、ゴルフ場での楽しみも増えるし、大きな市場が開拓されはしまいか。また、「ゴルフ場の公園利用」に向けての試金石ともなり得るだろう。

ゴルフ場はクラブハウス運営コストに苦慮しており、顧客はアウトドアを求め、そしてフードサービス産業ではテイクアウト・デリバリー文化の著しい発展がみられる。下記の図に示したように、ゴルフ場業とフードサービス業それぞれの課題や強みのバインディング可能性の示唆を、現在のゴルフ消費者が与えている。

筆者は、このアイデアをもとに、現在、調査をすすめている。

■参考文献
1.株式会社ダイヤモンド社(2021)ゴルフ復活、週刊ダイヤモンド2021年7月3日号
2.内閣府(2021)新型コロナウイルス感染症禍の外食産業の動向
3.一般社団法人日本オートキャンプ協会(2020)オートキャンプ白書2020
4.公益財団法人日本生産性本部(2020)レジャー白書2020
5.北 徹朗(2021)連載:プレー人口激減期(18-23問題)とゴルフ場(1)、Golf Economic World 2021年5月号


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北徹朗

北徹朗

<現職>武蔵野美術大学身体運動文化教授・同大学院博士後期課程兼担教授、サイバー大学IT総合学部客員准教授、中央大学保健体育研究所客員研究員、東京大学教養学部非常勤講師

<学歴>博士(医学)、経営管理修士(専門職)、最終学歴:国立大学法人東京農工大学大学院工学府博士後期課程

<主な社会活動>ゴルフ市場活性化委員会委員(有識者)、公益社団法人全国大学体育連合常務理事、一般社団法人日本運動・スポーツ科学学会常任理事、日本ゴルフ学会理事・代議員、日本ゴルフ学会関東支部事務局長、一般社団法人大学ゴルフ授業研究会代表理事

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