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プレー人口激減期(18-23問題)とゴルフ場4

ニュース 北徹朗

コロナ環境下で一時的にゴルフ人口が増えているという報道もあるが、人口減少や少子高齢化の推移を見ると、今後もゴルフ人口の減少傾向が続くことは間違いない。この連載では、筆者が提唱する「18−23問題」(2018年~2023年にかけてのゴルフ人口激減)に立ち向かうための改善策や基礎資料に基づく提言を述べさせて頂く。

ゴルフ場では「キャディ」の労働力不足が際立つ

図1.日本のゴルフ場において労働人員が欠員している業務
(NGKの資料をもとに北が作図)

一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会(NGK)が発表した『雇用状況実態調査報告~人材不足が浮き彫りに~』(2017年)によれば、ゴルフ場における7つの業務のうち「キャディ」が最も不足しているとされている(図1)。

キャディやコース管理など「屋外業務従事者」が不足している

このアンケート調査は、ゴルフ場従業員の業務別の充足状況について「十分」、「不足気味」、「欠員状態」の3件法で実施されている。不足割合(不足気味と欠員状態の合計)がダントツに高いのは「キャディ」(正社員84・4%、パート90・5%)であった。次いで「コース管理」(正社員54・1%、パート70・5%)において、労働力不足が顕著であることが示されている。

いずれも屋外での業務であり、「体力的にきつそう」とか「暑さや寒さなどの厳しい環境へ対応しなければならない」というイメージがあり、敬遠されているのかもしれない。しかし、「健康」という切り口からキャディやコース管理業務を捉えてみると、とても魅力的な仕事であることが見えてくる。

セデンタリー・ライフスタイル(座りっぱなし)は喫煙と同程度に不健康

世界保健機関(WHO)は、全世界の14億人以上が運動不足とみられ、2型糖尿病や心血管疾患、ガン、認知症などにかかるリスクが高いとの研究結果を発表しており、日本でも3人に1人以上がそれに当てはまるとしている。

この研究は、168ヵ国の18歳以上の成人約190万人を対象に行われ、職場、家庭、余暇、交通移動での運動・身体活動について調べられている。日本人の運動不足割合は、35・5%(男性 33・8%、女性 37・0%)であり、女性の方がやや高い。他国の状況を見ると、ブラジル47・0%、ドイツ42・2%、米国40・0%、英国35・9%、韓国35・4%、フランス29・3%、デンマーク28・5%などとなっている。

WHOは、座り続けて殆ど身体を動かさない生活スタイル(セデンタリー・ライフスタイル)を続けることは、喫煙、不健康な食事、アルコールの摂り過ぎ等と並び、上記の疾病を引き起こす原因となっていると警鐘を鳴らしている。また、セデンタリー・ライフスタイルが背景となっている死亡者は世界で年間約200万人であるとの算出もされている。

「健康」に軸足を置いてゴルフ場業務を概観すると、キャディやコース管理といった屋外での仕事は身体活動量がかなり多いことが予想される。座りっぱなしのオフィスワーカーに比べれば、よっぽど健康的な職場ではないか。また、屋内業務のフロントやショップなどにおいても立ち仕事が多く、健康にとっては有用だろう。

ゴルフ場で働くことは十分な身体活動量が確保され健康的

図2.被験者へのデータフィードバックに用いた評価用紙の一部
(超音波骨密度測定装置, Benus付属資料)

筆者は、「健康的な職場環境としてのゴルフ場」という観点から、関東地方のAゴルフ場の従業員を従業員を対象に、職務従事中の活動量調査(2021年3月26日~4月12日)を実施した。調査には加速度計内蔵歩数計を用いた。

次号ではこの内容を中心に構成させて頂くが、例えば、ある日の「レストラン従事者(24歳・女性)」の業務時間中の歩数は1万3537歩であり、「ショップ従事者(29歳・男性)」は1万191歩であった。いずれも屋内業務従事者であるが、多くの歩数が確保されている。就業前後は加速度計を装着していないため、実際の1日当たりの歩数はさらに多い。日本の健康政策(厚生労働省・健康日本21(第2次))では、1日の目標歩数を男性9200歩、女性8300歩としているが、その目標値は楽にクリアしている。

活動的なイメージが強い業務を見ると、「キャディ(49歳・女性)」では業務時間内歩数は2万1606歩、「コース管理(52歳・男性)」の場合は2万5797歩であり、想像通り歩数が多かった。

ちなみに、「支配人(57歳・男性)」の業務時間中の歩数も1万5747歩と多かった。広いクラブハウス内を歩き回るためと思われるが、「ゴルフ場支配人」という仕事も健康的と言えるだろう。

加速度計が比較的激しく振れた活動量の多い時間帯を見ると、運動実施にふさわしい(身体科学的に理想的な)時間帯に身体を動かしている実態もわかってきた。詳細は次号で紹介したい。

ゴルフ場従業員の骨密度測定の試み

Aゴルフ場には、従業員(35名)の骨密度測定にも協力して頂いた。対象者の内訳は男性12名(平均年齢55・8歳)、女性23名(平均年齢46・3歳)、測定日は2021年3月25日であった。

女性においては、40歳代に入ると卵巣機能が衰え始めて骨量が減少し始め、女性ホルモンのエストロゲン分泌が急激に低下する閉経前後の50歳頃からさらに急激な骨量の減少をきたすことが知られている。そのため、特に女性においては骨密度の維持・向上の心掛けは大切である。今回、調査対象としたAゴルフ場には女性従業員が多く、興味深い結果が得られることを期待した。

骨量が多いのは女性ではキャディ、男性ではポーター

収集したデータを評価した結果、女性従業員において骨量が「十分多い」のは23名中4名だった(図2)。この4名のうち2名がキャディ(49歳と45歳)、1名がキャディマスター室(55歳)、1名がハウス(65歳)業務であった。

10名の女性キャディの骨密度を測定したが、そのうち2名が判定区分1(十分多い)、4名が判定区分2(高いレベルの平均域)であり、半数以上が高い骨密度を維持していた。

被験者数が少なく、統計学的有意差が認められなかったため、今回のデータのみで「キャディは骨密度が高い」と断言することはできないが、キャディ以外の女性従業員(レストラン、キッチン、営業、フロント、ハウスなど)と比較すると、「キャディは骨密度が高い」と言える可能性が高い。

なお、男性従業員では、「ポーター」業務従事者の骨密度が高かった。4名中2名が判定区分1(十分多い)、1名が判定区分2(高いレベルの平均域)であった。ポーターは重い荷物を素早く持ち運ぶことを繰り返すため、骨に適度な衝撃がかかる身体活動を伴っている。ポーター従事者は年齢層が高い(66・3歳)ことからも、ゴルフ場で働くことが健康維持・増進に役立っている部分が大きいのではないかと推測される。

参考文献
1.一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会(2017)「雇用状況実態調査」報告~人材不足が浮き彫りに~
2.WHO(2018)Global Action Plan on Physical Activity 2018-2030


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北徹朗

北徹朗

<現職>武蔵野美術大学身体運動文化教授・同大学院博士後期課程兼担教授、サイバー大学IT総合学部客員准教授、中央大学保健体育研究所客員研究員、東京大学教養学部非常勤講師

<学歴>博士(医学)、経営管理修士(専門職)、最終学歴:国立大学法人東京農工大学大学院工学府博士後期課程

<主な社会活動>ゴルフ市場活性化委員会委員(有識者)、公益社団法人全国大学体育連合常務理事、一般社団法人日本運動・スポーツ科学学会常任理事、日本ゴルフ学会理事・代議員、日本ゴルフ学会関東支部事務局長、一般社団法人大学ゴルフ授業研究会代表理事

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