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「地域包括ケアシステム」 構築に向けて注目を集める ゴルフ場の持つポテンシャル

ニュース 小川朗

眠っているゴルフ場の底力。それを引き出すためには、既存の設備を時代のニーズにマッチさせていくことが重要。その体現者ともいうべきゴルフ場が、茨城県にある「スパ&ゴルフリゾート久慈」だ。このゴルフ場に舞い込んでいる注文は、葬儀用会席料理のケータリング。ゴルフ場と葬祭ビジネス、実は相性抜群なのだ。「地域包括ケアシステム」とも、歩調は合う。

地元のJA関連施設が発注元

6月初旬の某日。葬儀2日前に5000円の会席膳、33人前の注文が、「スパ&ゴルフリゾート久慈」に入った。翌日に2人前、さらに当日朝に3人前の追加が飛び込んでくる。

しかし厨房の中は、混乱もなく慣れたもの。通常営業と並行して作業は進み、38人前の会席膳が積み込まれた軽トラックは、予定通りゴルフ場を出発。約束の正午までに葬儀場のホールへと、無事届けることができた。

突発的な注文の変更にも対応ができるのが、ゴルフ場のレストランの強み。高橋哲也料理長が、その秘密を明かす。

「ウチの場合は朝、昼、晩と食事を作っていて、新鮮な材料が豊富にあり、常に回転している状態。だから急な注文が入っても、対応できるのが強みです。会場までは車で10分もあれば着きますから、ぎりぎりまで時間を合わせて、お届けするようにしています」。

注文は別の日にも、コンスタントに入っている。4000円の会席膳が45人前の日もあれば、34人前の日もあった。平均すると15人から30人規模の葬儀が多いという。

葬儀の場合は火葬の間に軽い食事を取り、最後に精進落としの料理を食べるのが一般的。「今はコロナ対策が最優先で、大皿料理ではなく、一人一人、個別の料理をご用意するようになっています」(高橋料理長)。

コロナ禍とはいえ、葬儀は行われ続けている。感染対策のうえで、食事の席は設けられているから、会席膳のニーズも当然あったわけだ。

発注元は、地元のJA。そもそもゴルフ場とJAが結びついたきっかけは何なのか。JA常陸葬祭部・JA大平ホールの阿部淳志副館長が、そのいきさつを明かしてくれた。

「近くの業者が高齢化で、ウチの提供しているメニューがもうできないと言われてしまいましてね。それで以前私がここに異動して来る前に、営業で来たことがあると聞いたゴルフ場さんに、お願いしてみたわけです」。

ゴルフ場側の地道な営業が実を結んだわけだが「今風の料理を出してくれるので、非常に(利用者の)評判もいいですよ」と阿部副館長。他にも業者がおり1社独占とはいかない事情はあるにせよ、様々なメニューに対応できるゴルフ場の強みが、利用者の支持を集めているのは間違いなさそうだ。

最初の緊急事態宣言が出た昨年春は、他のゴルフ場がそうであったように、大打撃を食らっている。

当時を振り返って田中秀幸総支配人がいう。

「コロナで売り上げは落ちましたが、復調傾向になりました。ケータリングだけで、200万円強を売り上げた月もありましたから」。

ゴルフ場にとってのドル箱である土日のコンペは激減したのはこのコースも同じだった。ケータリングの営業を行い、その後定着させていったことで、厳しい逆風の中での救いにもなったわけだ。

その後は密にならず、クラブハウス内が広く感染対策もなされていて、感染リスクが低いスポーツとしてゴルフが見直されていった。

べランピングと法事の融合も

高齢者に対するワクチン接種がほぼ終了したことで、今後期待が膨らんでくるのがクラブハウスを有効活用しての法事。もともとこのコースの強みは、船をかたどった巨大なクラブハウスの利点を生かし、ゴルファーと法事客の動線を完全に分けられることだった。

両者が鉢合わせにならない利点を生かし、約5年前から新聞の折り込みチラシで告知すると早速反響があり、15~30人規模の法事が月2回ペースで入っていた。

ちなみに現在も仏式、神式に対応し、8名からの無料送迎車も完備。会場は8名から80名まで対応できるのもゴルフ場のクラブハウスならでは。食事も豪華だ。

煮物、焼き物、油もの(天ぷら)など7品目3500円、8品目4500円、9品目6000円の会席コースが用意されている。

法事の会場となる部屋も多彩だ。右奥にあるコンペルームはベランダ付きで、バーベキューも可能。ハンモックも設置され「べランピングも可能です」と田中総支配人。べランピングとはベランダでのグランピングを指す造語だそうだ。

その隣には、広いスペースにカラオケが完備されたコンペルームも用意されている。ワクチンが行きわたりニューノーマルに戻った時には、この部屋も人気となりそうだ。

このゴルフ場はゴルファーでもなく、法事客でもない、ランチ目当ての一般客が多いことでも知られていた。雨の日の特別割引もあったため、現地に雨が降ったかを確認してから訪れるランチ目当ての一般客が、全体の一割を占めていた時期もあったほど。

コース内の「松ヶ沢温泉」は日帰り入浴のみにランチカフェテリアとのセットのほか、練習場でタップリ汗を流してから松ケ沢温泉につかって、のんびりするプランも用意されている(料金はDATA BOX参照)。

法事に温泉、食事、それにゴルフ。スペースにゆとりがあって感染リスクの少ないゴルフ場に、人が集まるのは自然の成り行きなのかもしれない。

厚生労働省は『団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していく』としている。

その一方で「今後、認知症高齢者の増加が見込まれることから、認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも、地域包括ケアシステムの構築が重要」ともしている。

ゴルフが認知症予防に役立つ、という説もある。それは2025年に向けて厚生労働省が目指している地域包括ケアシステムにも、直結するテーマでもある。地域住民がゴルフ場と密接な関係を築ければ、シニア世代の健康寿命を延ばすために、ゴルフ場が果たせる役割は多いはずなのだ。

■取材後記


このコースはプロよりも強いアマチュアと言われた中部銀次郎氏が唯一設計監修したコース。その実力は本物で、1967年の西日本オープンでは本当に並み居るプロを抑えて優勝してしまった。当時としては大変な偉業。それからさかのぼること40年、1927年に第1回の日本オープンを制した赤星六郎以来、史上2人目の快挙だった▼筆者も生前一度だけ、六本木で酒席を共にさせていただいた。素顔の中部氏は実に気さくで18歳も年下の私にも優しく、最後まで楽しい酒席だったと記憶している▼生涯アマチュアを通して2001年12月14日に他界した後、追悼コンペは当然のことながら、このコースで行われることになった。追悼コンペには、青木功ら旧交のあった多くのプロが参加。59歳という早すぎる死を惜しんだ▼クラブハウス1階の一角には、クラブやシューズ、グローブなど、中部ゆかりの品を揃えたコーナーもある。また、貴重な中部語録も掲出されている。これも他のゴルフ場にはない、プラスアルファの財産だ。

■データボックス

スパ&ゴルフリゾート久慈

▶住所&電話番号&メールアドレス
 〒313-0112 茨城県常陸太田市岩手町1398 TEL0294-76-1711 FAX0294-76-1791
 メールアドレス:info@spagolf-kuji.jp
▶アクセス
《くるま》  常磐自動車道「那珂IC」より約20km、約25分
《電車》   JR常磐線「勝田駅」から車で約45分、
またはJR水郡線「常陸大宮駅」から車で約15分
《高速バス》 「常陸太田バスターミナル」から車で約15分 
▶ホテル
《久慈スパリゾートホテル》 
レギュラーツイン11室 フォースルーム(4名)1室 スイートツイン2室
和室 (12畳) 2室 プレイルーム 麻雀卓2卓・囲碁・将棋
ホテル温泉浴場 6:00~10:00  19:00~23:00
▶ヴィラ
《リゾートヴィラ棟》
ツインベッドルーム(約67㎡) 定員2~4名 各種アメニティ・寝具完備
キッチン・冷暖房・床暖房 全室天然温泉浴場有り 洗濯乾燥機・空気清浄機
《ワイドテラスヴィラ》
ツインベッドルーム(約61.75㎡) 定員2名各種アメニティ・寝具完備
・キッチン・冷暖房・床暖房 全室天然温泉浴場有り 空気清浄機
▶ゴルフ場
中部銀次郎が唯一、設計・監修した18ホール 14打席200ヤードのドライビングレンジ 
アプローチ・バンカー・パッティング練習場あり
▶温泉
《松ケ沢温泉》
露天風呂付温泉大浴場 地下1200mから湧出、ナトリウム塩化物硫酸塩温泉
日帰り入浴可 大人700円 子供300円(未就学児童無料)
▶レストラン
《ゴルフガーデンレストラン THE GRILL》
朝食から昼食(カフェテリアスタイル)、アフタープレイ、ディナーに対応 
地産地消、トレーサビリティー(原材料~加工~販売~廃棄を明確に記録)がテーマ
カフェテリアランチ 1700円 (小学生980円)
日帰り入浴&カフェテリア 2100円 (小学生1280円)※未就学児無料、価格は税込み
新型コロナ感染症予防対策を徹底のうえ、コンペの打ち上げや各種パーティーに対応
▶クラブハウス内に「中部銀次郎ミュージアム」あり。


この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年9月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら


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ライター紹介 ライター一覧

小川朗

小川朗

山梨県甲府市生まれ。甲府一高→日大芸術卒。82年東スポ入社。「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女のメジャー大会など通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。フリージャーナリストとして本誌を始め、日刊ゲンダイで「ホントにゴルフは面白い!」(毎週金曜日)を連載中。

終活ジャーナリストとして「みんなの介護」でも連載中。日本自殺予防学会会員。週刊誌、ニュースサイトなど各方面に執筆中。㈱清流舎代表取締役COO。東京運動記者クラブ会友。日本ゴルフジャーナリスト協会会長。

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