千葉のザ・ゴルファンが志向する 「四位一体」の練習場経営術 ~シリーズゴルフ練習場ビジネス~

千葉のザ・ゴルファンが志向する 「四位一体」の練習場経営術 ~シリーズゴルフ練習場ビジネス~
「ザ・ゴルファン」は千葉県印旛郡酒々井町にある2階64打席220ヤードの練習場だ。東関東自動車道・富里ICから車で5分、京成本線・公津の杜駅から徒歩10分と交通至便な場所にある。筆者が取材に訪れた時は夕方で、練習場フィールドの奥には森が広がり豊かな自然を感じられた。この練習場の成り立ちやコンセプトについて、エムエヌケー株式会社ゴルフ事業部ザ・ゴルファン支配人の及川嗣彦氏に取材した。 「ザ・ゴルファン」の開場は1995年6月である。練習場を創業したのは不動産及び地域開発、環境リサイクル事業などを営むエムエヌケー社の先代・神谷一雄氏だった。現在も94歳で会長を務め、ゴルフが大好きで、この地域でも事業展開していたことから練習場ビジネスに参入した。神谷会長は今もゴルフを楽しんでおり、及川支配人によると、 「90歳ぐらいまでは、もっと飛ぶように教えろ」 [caption id="attachment_84739" align="aligncenter" width="1000"] ゴルファン 入り口[/caption] と、常に向上心をもっているとのこと。練習場の名前「ゴルファン」も神谷氏が考案。「GOLF+FUN」でゴルフのファンを増やそうとの思いが込められている。 開業当時は、国道51号線に隣接していることから「ゴルファン51」という名称だったが、2000年に現在の「ザ・ゴルファン」に改称。2018年4月からゴルフパートナーのFCとなり、ゴルフ用品の販売店として、練習場内に「ゴルフパートナー成田酒々井ザ・ゴルファン店」を開業している。 また、1995年6月に石川県でも、ゴルファン開場と同じ時期にザ・カントリークラブ・能登も開場するなど 、ゴルフ事業への熱い想いが伝わってくる。 及川氏が支配人に就任したのは2019年だが、それ以前からこの練習場に関わっており、今年で19年目。同氏はPGAティーチングプロA級の資格も持っている。 「私は高校で野球部でしたが、部活卒業の時に同学年の部員たちと、ゴルフをしてみようとホームベースから球を打ってみたんです。当時の4番バッターは空振りでしたが、自分が一番飛ばすことができて、ゴルフに興味をもちました。自宅の傍の四街道GCに飛び込みでバイトのキャディーから始め、その後社員となりプロを目指しましたが25歳で断念。ゴルフギアに興味があったので、クラブヘッドなどを扱うジオテックゴルフコンポーネントに就職。練習場内に出店する工房の1号店となったのがゴルファンで、そこでクラフトマンとして働き始めたのがゴルファンに関わった最初です」 [caption id="attachment_84740" align="aligncenter" width="1000"] ゴルファン 打席[/caption] その後当時の支配人から誘われゴルファンに入社。工房のクラフトマンとして技術を磨き、支配人からティーチングプロの資格取得を勧められて42歳でPGAの資格をとった。 現在は支配人、スクールのティーチングプロ、クラフトマンという3足の草鞋を履いて、ギアとレッスンの両面からゴルファーをサポートしている。また、最近YouTubeを始めて、シャフトの試打インプレッションなどの情報を発信している。

地域貢献にも参加

[caption id="attachment_84741" align="aligncenter" width="1000"] ゴルファン 工房[/caption] 同施設の商圏は、成田市・酒々井町及び近隣市町村で半径10㎞圏内だが、YouTubeを見た工房目当ての来場者も多く、都内や茨城からも足を運ぶ。その工房やショップの月商は500万円ほど。ゴルフパートナーでの商品販売とゴルファン工房でのシャフト、グリップ交換などでゴルファーの要望に対応している。 施設の特色やポリシーについて、及川支配人はこう話す。 「練習場、スクール、ショップ、工房が併設されているので、クラブの調整を含めて、ゴルフライフの全てをサポートできるのが特色です。ゴルフの敷居は高いので、入り口を下げたいと考えています。そうしないとゴルフは広まっていかない」 現在、年間の来場者数は約7万人で、60歳以上が45%、40~50歳代は33%、30歳代以下19%で、課題は来場者の高齢化だという。 「若年層が少ないのが課題ですね。私が練習場に入った時は30歳になる前でしたが、当時の中心顧客は働き盛りの50代で、今は70代になっている。なので、ゴルフの最初の一歩をサポートして、生涯の趣味として楽しんでもらえるよう、若い世代のゴルファーを育てたい」 ゴルフの普及を目的として、地域貢献にも取り組んでいる。 [caption id="attachment_84742" align="aligncenter" width="1000"] ゴルファン 受付[/caption] 「去年、近隣の公津の杜商店会に入り、10月に開催された公津フェスタに出店。パターのレッスンとゲームで子供がカップインするとお菓子をあげたり、ゴルフに触れてもらっています。また、近隣の国際医療福祉大学のゴルフ部の学生に練習場所を提供し、練習後にボール回収を手伝ってもらっています。今後の計画として、ゴルフ練習場の周りは桜がきれいなので、桜の花見会を開催し、ゴルフをやるやらないに関係なく、来場者に無料の練習券を配って、少しでもゴルフに親しんでもらうことを考えています」 スクールは及川支配人を含む4名のPGAティーチングプロが、ステップに合わせて様々なレッスンを行っている。通常は1クラス5名前後だが、ゴルフデビュー編や上達編、仲間づくり、キレイな体づくりなど多様な「課題」に合わせたカリキュラムを用意、ゴルフライフをサポートしている。初心者から上級者、女性やジュニアと細かなクラス分けが特徴だ。これに工房が連携して、クラブの面からも答えを導いている。 及川支配人が考える次の施策は、 「屋外練習場での酷暑対策として、空きスペースを活用したインドアでの練習や、屋内型のゴルフスクールも考えています」 近年の練習場経営は、打席、スクール、ショップの三位一体型が重視されているが、同社の場合は工房も含めて「四位一体」。そんなザ・ゴルファンの今後に注目である。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら