~本質はなんだ!論1~デフレマインドからの脱却! 日本ゴルフ場経営者協会専務理事 大石順一

~本質はなんだ!論1~デフレマインドからの脱却! 日本ゴルフ場経営者協会専務理事 大石順一
2023年12月、(公財)日本生産性本部は「労働生産性の国際比較2023」を発表。これによると「OECD(経済協力開発機構)」のデータに基づく日本の「一人当たり労働生産性」は、2000年には世界1位でしたが、徐々に下降し、2022年は加盟38か国中31位とハンガリーやラトビアと同程度です。 それでも製造業は18位なので、ゴルフ場も含まれる第3次産業の労働生産性の低さが、全体の足を引っ張っています。特に低い業種として「宿泊・飲食サービス業」が挙げられ、人手不足解消のためにも働き方改革による「ワークライフバランス」の改善が必要とされます。 もちろんゴルフ場も、同様の業種として憂慮すべき状況にあります。経団連は昨年、「長く続いたデフレマインドからの脱却が大事だ」として、「日本の賃金水準は海外主要国に比べて低迷。中長期的な賃金上昇に繋げるためには、労働生産性の向上が欠かせない。社会や消費者が値上げをある程度容認する雰囲気を作り、サプライチェーンの中で適正な取引を行うことで富を共有すべき」としています。 また、連合と日本商工会議所は、物価高や人手不足が経営や人々の生活を圧迫している中、持続的な賃上げに向けて価格転嫁などで連携することを確認しています。 1990年代後半からデフレで物価が上下せず、節約志向への対応で企業は値上げに慎重となり、収益を伸ばせない企業が賃上げをためらう悪循環に陥ったのです。この現象は次の点からも理解できるのではないでしょうか。 まず物価については、世界中に展開するマクドナルドの価格で物価水準などを比較する「ビッグマック指数」があり、1993年と2023年を比べると、日本391円→450円、韓国326円→580円、米国257円→793円と、日本の値上げは極めて小幅です。 また、賃金については、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」で2000年を100とした時、1998年111.0、2022年102.5と、ほとんど伸びていません。 以上を前提に、ゴルフ場業界を見てみましょう。「プレーヤー一人当たりの利用税額」からプレー料金の動向を見ると、2021年度と22年度の合計伸び率が、2020年度との比較で1.4%上昇しています。本当に小さな上昇ですが、1994年度から26年間連続で37.8%も下がったプレー料金が、ようやく上昇に転じたのです。 今後の課題は、各種コストの増加や賃上げに対応しつつ、プレー料金の値上げをどのように実現させるかです。そのためには、「従業員満足度」を高めて労働生産性を改善すること。「従業員満足度」が高まれば、スタッフの気配りがあらゆる業務(接客・コース管理・料理・清掃など)の成果に現れ、「顧客満足度」を高めます。「顧客満足度」が高まれば、値上げへの理解度の範囲が拡大します。 プレーヤーからすれば、値上げは回避して欲しいことですが、それを乗り切らなければ労働生産性の向上による賃上げは望めず、将来を託す人材の確保も難しいでしょう。 次月号では、どのような点に留意すれば「値上げ」と「コスト削減」を実現し、労働生産性を高めて「賃上げ」を実現できるようになるか。さらに「キャディーフィ値上げはキャディー付きプレー離れが起こる」との声もあることから、キャディーフィの内容についても説明したいと考えています。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら