埼玉県新座市にある「ウィンズゴルフステーション新座」は、関越自動車道の新座料金所を川越方面に向かってすぐの右側にあり、大きなネットとウィンズの看板が目印だ。3階161打席300ヤード、首都圏最大級の練習場である。
新座料金所の横に高速の出口はなく、練馬IC、和光IC、所沢ICからが便利。筆者は都心から車で訪れたが、練馬谷原交差点から15分のアクセスであった。
入り口からロビーに入ると天井が高く、開放的で明るい雰囲気。この練習場の成り立ちやコンセプトについて、同施設を経営する株式会社武蔵野・スポーツレジャー事業部の小棚木克之事業部長(ゴルフ練習場・ゴルフ場支配人)と、スポーツレジャー事業部ウィンズゴルフステーション新座の中村浩通副支配人に話を聞いた。取材場所は2階のロビー。以前は喫茶やレストランだったが、2017年からはベーカリーとして営業しており、練習場の利用者以外もパンを買いに足を運ぶ。
株式会社武蔵野は1967年12月に現取締役会長の安田定明氏が創業した。弁当・おにぎり・寿司・調理パン・調理麺等の製造販売と、スポーツレジャー施設の運営・管理が主業務の会社。全国に17工場、グループ企業5社を持ち、従業員1万938名(2023年3月現在)、売上高1671億9798万円(2023年3月期)の大手企業だ。
ゴルフ関連では練習場のウィンズゴルフステーション新座、ゴルフ場はロイヤルメドウゴルフ倶楽部(栃木)とオーシャンリンクス宮古島(沖縄)を経営している。
練習場の開業は1992年10月だが、ゴルフ練習場を開業した理由について小棚木氏は、
「創業者は、充実した人生を送るためには“食”と”癒し“が必要だと考えています。これを実現するために”癒し“の部分ではスパやゴルフレンジ、ホテルなどを運営。健康作りも視野に入れた施設やサービスの提供を行っているのです」
と説明する。
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ウィンズ 1階からの風景[/caption]
株式会社武蔵野の社史には、安田興産(株)(現・武蔵野スポーツ事業部)が新座市に首都圏最大級規模のゴルフ練習場・ウィンズゴルフステーション新座を開業、と書かれてある。小棚木氏は、
「この辺りは畑だったと聞いていますが、私が入社する前だったので、当時の詳細は分かりません」
その後、1999年に一部のネットの鉄塔高さを45mから60mに伸ばし、翌年には全体を60mまで高くした。来場者にストレスなくボールを打ってもらうための投資だった。同氏は事業のポリシーについて、
「会社の経営哲学として、全スタッフが武蔵野イズムを共有しています。ウィンズでは、打席、フロント、スクール、インドアゴルフ、ベーカリーと、それぞれのチームが一丸となってベクトルを合わせて、一人ひとりが解決に向けて考え、行動する『全員経営』を標榜。目的を達成するためにみんなで協力しています。“至誠通天”誠を尽くせば願いは天に通じる、その心構えでお客様に接しています」
従業員は24名で、そのうち社員は8名。ボール回収などはシルバー人材を活用している。
インドアは女性比率3割
練習場のコンセプトは「ゴルフ村」を意識しているという。
「あそこに行けば何でもある、と思って頂けたら嬉しいですね。アウトドア、インドア、工房、ベーカリーも備えるゴルフ村のイメージです。練習場名は開業当時から変わらず『ゴルフステーション』としており、そのあたりに経営に対する考え方が表れています」
インドアの開業は比較的新しく2023年11月、別棟に8打席でオープンした。責任者の中村氏は、
「インドアは暑さ寒さに関係なく快適にプレーでき、若い方や女性の来場比率が屋外施設よりも高い。女性比率は30%です」
当初、インドア施設は駅前の出店が検討されたが、まずは練習場内での成功を目標に掲げた。300ヤードのアウトドアと、8打席のインドアを併設することで相乗効果が期待できる。インドアは同じ敷地で内部は木造、自然を感じさせる構造だ。こちらの施設名は「ウィンズファミリーゴルフ」となっており、3世代でゴルフを楽しんでもらいたいとの想いを込めている。
小棚木氏は、練習場経営のこだわりをこう話す。
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ウィンズ フロン・ロビー[/caption]
「練習ボールは年1回、夏にダンロップの2ピースを25万球全部入れ替えています。同時にフェアウェイの整備、ネットやワイヤーの点検等を行いますが、お客様に迷惑をかけないよう、営業終了後にボールの入れ替えや点検をして、夕方には再オープンできる段取りです。接客にも力を入れており、チェックインは自動精算機を活用。空いた時間にお客様への挨拶だけではなく一言声かけるようにしています。グループでホテル経営をしているので、比較して練習場のDX化は遅れているように感じます。その点も、今後の課題だと思っています」
年間30万人以上が来場する大型練習場なため、商圏は半径10㎞と広い。地元の新座からが中心だが、都内からは近隣の練馬だけではなく杉並、世田谷からの来場もある。中心世代は50代で30%。前述のようにインドアの女性比率は高いのだが、全体としては15%である。
最後に、今後の課題をこう語る。
「若いうちにゴルフに触れられる環境をつくり、国民的なスポーツになってほしいですね。一部の人しかやっていないのが残念で、もったいないと思います。当施設では親子3世代の来場を促し、おじいちゃんやお父さんが子供に教える場を提供したい。インドアは初心者が入りやすいので、チャンスがあると思っています。将来のビジョンは、ゴルフと健康を結びつけること。ストレッチの大切さを提唱するなど、普段から健康を意識してもらえる施設を目指したいですね。健康が事業として成り立つよう、事業計画をつくっていきたいと考えています」
株式会社武蔵野は“癒し”が人生に不可欠な要素だとしている。ゴルフ事業を通じて「自分らしく・健康に過ごせる社会」の実現を目指す同社の今後に期待したい。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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