真冬のスポーツ実施中における紫外線量―ゴルフ、スキー、マラソンのうち紫外線対策が最も必要なスポーツは何か―

真冬のスポーツ実施中における紫外線量―ゴルフ、スキー、マラソンのうち紫外線対策が最も必要なスポーツは何か―

快晴時よりも曇りの方が紫外線量が多いことも

筆者は、以前の連載において、日本に降り注ぐUVインデックス値(紫外線が人体に及ぼす影響の度合いを示す指標)が、近年「極端に強い(Extreme)」という域にまで上昇し、オーストラリアの夏並みの紫外線レベルに到達する日が出現するようになっていることを紹介してきた(北、2024)。 [surfing_other_article id=83320][/surfing_other_article] 気象庁によれば、地上に到達する紫外線量は、快晴時を100%とすると、曇りの場合約60%、雨の場合約30%の量になるとする一方、雲の間から太陽が出ている場合には、雲からの散乱光が加わるため快晴時よりも多い紫外線が観測されることもあるとしている。要するに、ギラギラと太陽がまぶしい時ではない状況下の方が、より紫外線レベルが高いこともある。 紫外線は目に見えない上に、感覚的にもわからないため、紫外線量を把握できる測定器や紫外線チェッカーを持っていない限りは、対策を怠りがちである。従来、「紫外線対策」と「暑さ対策」はセットで言われることが多かったが、今後は冬場でも紫外線対策がますます重要になってくると思われる。 そこで本稿では、真冬(2月)のゴルフプレー中の紫外線量と、冬場に人気の高いスポーツである「スキー」と「マラソン(ランニング)」実施中の紫外線量(UVA)を観察したので、その概要を紹介したい。

2025年2月のスポーツ実施中におけるUVA観察

[caption id="attachment_86927" align="aligncenter" width="788"] 図1.皇居(マラソン5キロ)[/caption] [caption id="attachment_86928" align="aligncenter" width="788"] 図2.東京湾カントリークラブ(ゴルフ)[/caption] [caption id="attachment_86929" align="aligncenter" width="788"] 図3.横浜海の公園(マラソン2.5キロ)[/caption] [caption id="attachment_86930" align="aligncenter" width="788"] 図4.湯沢高原スキー場(スキー)[/caption] 筆者が2025年2月に実施した「ゴルフ」、「スキー」、「マラソン(ランニング)」の3種類のスポーツ実施時にUVAデータを収集した。これらスポーツのプレー中、着衣等に覆われていない頬に計測機器を装着しUVAを計測した(マラソンは皇居と海辺の2カ所で実施・計測)。活動内容と実験当日の気象環境は表1の通りであった。 また、スポーツ実施日(紫外線データ計測当日)の会場の様子を図1~4に示した。

観察の結果:ゴルフ場の紫外線量データが最も高かった

4つのスポーツ実施中のデータを確認したところ、2月13日に実施した東京湾カントリークラブでのハーフラウンド時に計測したデータが最も高かった。次いで、皇居マラソン(2月8日)、湯沢高原スキー場(2月23日)、海の公園マラソン(2月16日)の順に高かった(表2)。

【提言】「WBGTと紫外線量が同時に計測・表示されるモニタ」の新規製品開発

[caption id="attachment_86931" align="aligncenter" width="788"] 図5.冬場のスポーツ実施中のUVAとWBGT(数値は表1.2のデータを四捨五入)[/caption] 近年の突発的猛暑により、事業所のみならず個人でハンディタイプのWBGT(暑さ指数)測定器を持参する人を夏場には見かけるようになった。だが、「暑さ」と「紫外線量」は必ずしも相関しないこともよく知られている。実際、今回筆者が収集した紫外線(棒グラフ/青)とWBGT(折れ線/橙)のデータを重ねて見ても、両者に相関関係は認められなかった(図5)。 すなわち、それほど暑くない日であっても紫外線量が高い日がある。だが、前述のように、暑さと違い紫外線量は感覚的にはわからない。そこで、WBGTと紫外線量の両方が同時に計測・表示されるモニタがあれば、ゴルフをする人にとってはより合理的な対策が取りやすくなる。こうした製品はありそうでまだないので、早期の製品開発が期待される。 1)北 徹朗(2024)ゴルフプレー中における着衣の色と紫外線透過量の観察、GEWゴルフエコノミックワールド2024年10月号 2)気象庁:オゾン・紫外線について,https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq21.html(2025年3月18日確認)
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら