マイカスタム第17回【チューンアップスタジオ&スクール】球が散らばる低HSシニアに 重軟シャフトとつかまるヘッド

マイカスタム第17回【チューンアップスタジオ&スクール】球が散らばる低HSシニアに 重軟シャフトとつかまるヘッド
東京都町田市の練習場・町田モダンゴルフ内で営業するのが、チューンアップスタジオ&スクール。20年近く工房とスクールを営業しており、多くのゴルファーの拠りどころとなっている。今回の悩めるゴルファーは68歳のシニアゴルファーA氏。スイングアークが小さく、手打ちでタイミングがバラバラ。ドライバー飛距離も180ヤードで、左右に飛球がバラけるのが悩み。そこで提案したのが、飛距離性能に定評のあるアキラプロダクツのヘッド『プロトタイプ GL-02』と、知る人ぞ知るターフのシャフト『バディー OMOYAWA』だ。A氏の悩みは改善された?

人気外資系の高MOIヘッドで「球がつかまらない」が続出

練習場で工房とスクールを開設するチューンアップスタジオ&スクールの中嶋毅氏。多くのゴルファーを診る中で、最近の傾向を次のように説明する。 「大手外資メーカーの人気クラブをプロが使うという理由だけで、購入するゴルファーが多いんです。ヘッドの慣性モーメント(MOI)が大きく、フェースアングルは開き気味。パワーのあるゴルファーなら使いこなせますが、HSの遅いゴルファーなどは球がつかまらない傾向が見られます」 高MOIの米国大手メーカーのドライバー購入者は多いが、それによってつかまらない弾道になってしまい、飛距離をロス、方向性も定まらない傾向があるのだという。 今回の患者A氏は、国内メーカーのドライバーを使っているが、最近流行りの高MOI系で、球がつかまりにくいヘッド。スイングアークが小さく、手打ちで、腕と身体の動きがアンバランスとなる結果、ミート率が落ちて飛球が左右にバラけ、180ヤード程度しか飛ばないのが悩み。 そのA氏にはミート率を向上させる、クラブ重量を上げて手打ちを抑制することを目的として、つかまりと飛距離に定評のあるアキラプロダクツの『プロトタイプ GL-02』と、ターフの『オモヤワ』シャフトの組み合わせを提案した。

68歳、HS37m/sのシニアに総重量316gのドライバー 

この組み合わせがA氏に不釣り合いなのは総重量だ。 「A氏はHSが37m/sと遅く、パワーもありません。以前まで300gを切るドライバーを使っていたので、総重量だけを考えても、ふつうならこの組み合わせは推奨しません」 と前置きして、中嶋氏が続ける。 「ターフの『オモヤワ』は短尺でバランスを軽めに仕上げることで、シャフトの性能を一番引き出せる。今回のドライバーは、総重量が316gとA氏には不釣り合いに見えますが、バランスは『C7』に設定しました」  クラブ長は44.5㌅。スイングアークは小さいままだが、『オモヤワ』の重くて軟らかい特性を生かし、手だけでテークバックせず、身体全体でクラブを上げる動作に誘導。さらに、シャフトの軟らかい特性を生かして打ち急ぎを防ぎ、スイングリズムを安定させた。  それに加えて、ヘッド『GL‐02』の球がつかまりやすい性能を生かして、ミート率が向上。結果として、飛球のバラつきが抑えられ、飛距離も10~15ヤード伸びたという。 「極端に言えば、『オモヤワ』は超軟らかい練習用シャフトです。それでタイミングを矯正しますが、タイミングが合ってきても、球がつかまらないヘッドでは、ミート率の向上と飛距離アップにつながりません。なので、総重量が上がってもバランスを下げて振りやすくして、球がつかまる組み合わせなんです」  そして、この組み合わせがA氏にハマった理由はもう一つあるという。

先入観を取り除くために説明せずに打ってもらう

クラブを推奨する際、中嶋氏が気をつけるのは、 「とにかく、先入観を持たずに一発目を打ってもらうことですね。今回のA氏にも、クラブ長や総重量を一切説明せずに打ってもらいました。振り心地が良いことがわかったので推奨したんです」 もちろん、クラブバランスについても説明せずに試打してもらったという。 「クラブのスペックを最初に説明すると、その数値に拒否反応を示すゴルファーは 多いんです。例えばバランスは『D2がベスト』と思っているゴルファーは多い。 強い先入観は邪魔になります」 それに加え、 「今回のようなセッティングは、万人向けのクラブをつくる大手メーカーには難しいと思います。地クラブだからこそできることはある」 ゴルフが上手なインフルエンサーが挙って持ち上げる高MOIのクラブだが、人間は千差万別だけに、合う、合わないは当然ある。そのことを改めて確認した今回のマイカスタムだった。

メーカー担当者コメント

ターフ 専務取締役 鵜野善光氏 「『オモヤワ』は女性ゴルファーにも好評ですので、A氏のセッティングも可能性はありますね。できれば身長も参考にクラブ長を検討してもらうと、より良いセッティングになると思います」

チューンアップスタジオ&スクールとは

〒194-0004 東京都町田市鶴間447 町田モダンゴルフ内 TEL:042-795-0496 HP:http://ameblo.jp/jeronimo2010
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。