埼玉県伊奈町。住宅地の中でポツンと営業するのがゴルフ工房MIYABI。クラブフィッターの村田剛氏が一人で切り盛りする。少年期を米国と韓国で過ごし、帰国後は中古ゴルフ店で組み立てやフィッティングを学びながら12年勤務。2022年11月に独立。その村田氏を頼ったのが74歳のベテランゴルファーA氏だ。スコア70〜80台だが、加齢に伴い、身体が回らず、オーバースイングになって手打ち。ボールが上がらずドライバーより3Wが飛んでしまう。そこで村田フィッターは、A氏が慣れ親しんだテーラーメイド『M2』のHL(高ロフト版)と、USTマミヤの『アッタスキング』(4X)の組み合わせを薦めた。
ユーチューバーが推奨するスピン量は少なすぎる!?
2022年11月にオープンしたゴルフ工房MIYABI。40人ほどの常連が村田剛フィッターを頼りにしている。そんな同氏が最近の傾向に警鐘を鳴らす。
「動画を見るゴルファーは多いと思いますが、出演者の推奨するスピン量は少ないと思います。ヘッドスピード(HS)が35〜38m/sのゴルファーなら3000〜3000台後半の回転数があっても良いと思いますよ」
世の中は、低スピンヘッド、低スピンボールが持てはやされているが、それはHSが速いゴルファーに限られる。だから最近多いのは、
「ドライバーより3Wが飛ぶというゴルファーです」
ドライバーの弾道が低スピン過ぎて、飛距離に最低限必要なスピン量を確保できずにドロップ。一方で3Wは何とか飛ばせる。同じ症状が起きているのが、今回の患者であるA氏だ。
A氏は加齢に伴い身体が硬くなって回らなくなり、飛ばそうとしてオーバースイングが悪化。もともとダウンブローが強く、力いっぱい振るから手打ちも悪化。HSは38m/sだが、最近はテンプラかドロップ気味の弾道で、以前の200ヤードに届かず180ヤードと悩んでいた。
そこで村田氏が推奨したのが、A氏が好んで使っていたテーラーメイド『M2』の高ロフト版『M2』(HL)と、強烈なつかまりがウリのUSTマミヤの『アッタスキング』(4X)だ。
ベテランゴルファーの打ち込み 軟らかいシャフトには違和感
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※写真はスタンダードモデル。実際にフィッティングで採用したのは『M2』(HL)[/caption]
村田氏は、まず打ち出し角を上げることを優先した。
「A氏は初代『M2』を好んでいたので、それの高ロフト版を選びました」
『M2』(HL)は標準ロフトが12度だが、ロフト角はプラス2度まで調整が可能なモデル。
「そのヘッドでロフトをプラス2度調整して14度に設定。上から打ち込んでも打ち出し角を確保するためです」
もともとA氏のドライバーの打ち出し角は9〜10度。一方でロフト角15度のスプーンは打ち出し角17度程度を確保していたという。そこでドライバーの打ち出し角を最低でも15〜20度にしたかった。
「結果的に『M2』(HL)で打ち出し角は16〜17度を確保できました」
そのヘッドに装着したのが、USTマミヤ『アッタスキング』の4X。
「マッスルバックで育ったA氏ですから、ダウンブローが強くて軟らかいシャフトには違和感がある。なので、軽くても硬いシャフトで、つかまるシャフトということで『アッタスキング』の4Xを推奨しました」
「4X」という表記だが、重量は53g。74歳のシニアゴルファーが使うシャフトではない。
「ボールがつかまることで打ち出し角のアップ、飛距離アップを狙ったんです」
この組み合わせで、以前の飛距離200ヤードを取り戻したA氏。もうひとつ飛距離アップにつながったのはクラブ長だという。
工房だからできるサポート 徐々に最適な長さを探す

身体が硬くなり、手打ち。コンパクトなスイングになってスイングアークも小さくなる。それでも村田氏が薦めたクラ ブ長は 46 ㌅。なぜなのか?
「加齢に伴って身体が硬くなりスイングがコンパクトになるため、長いクラブは苦手になっていきます。長くなるほどミート率は下がる。でも当たり前ですが、ク ラブが長すぎれば短くカットすればいい。46 ㌅でスタートして、徐々に最適なクラブ長を探せばいいと思うんです。フィッティングは一発で決まらないものですよ」
もちろん、 46 ㌅のクラブ長ではミート 率が下がって飛距離ダウンの要因になるが、つかまるシャフトである『アタッス キング』でミート率減少による飛距離ダウンを補った形だ。
それにしても、HS38 m/sで74 歳のゴルファーに46 ㌅の長尺で、4Xのクラブセッティングは王道ではないだろう。それを実現したのは、ゴルフ工房というアフターサービスが充実した環境だから。これもマイカスタムを成立させる重要な要素だろう。
メーカー担当者コメント
UST Mamiya Japan 営業部 杉本崚氏
「『アッタスキング』はしなり戻りが強いシャフトで、ロフトが多いヘッドと組み合わせたことで、偶然かもしれませんが、いい感じになって飛距離も伸びたんだと思います。通常シニアは軟らかいシャフトを使いがちで、今回は一般的なケースとは違いますが、探求心のあるルファーのお役に立てて嬉しいですね」
ゴルフ工房MIYABIとは
〒362-0806
埼玉県北足立郡伊奈町小室7399
Mobile 080-7108-0724
なお、この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。