~本質はなんだ!論3~キーワードは「スローダウン!」

~本質はなんだ!論3~キーワードは「スローダウン!」
私的なことだが、3か月後に「後期高齢者」に仲間入り……。自分自身に大きな変化は感じていないが、運転免許証の「認知症機能検査」の受講案内が到着して実感しました。 文部科学省が行っている「新体力テスト」の「6分間歩行」で、2021年の75~79歳の距離が、1998年の65~69歳と変わらない結果となり、高齢者に10歳ほど若返りが見られているそうです。また、2021年の「労働人口(15歳以上で労働する能力と意思を有する人)6907万人」の内、65歳以上者は926万人で、10年前と比較して342万人増加しています。 様々な業種で人手不足が生じていること、高齢者側にも公的年金制度だけでは厳しい経済的理由もあることなどから、高齢期の働き方がどのように変化するか? 日増しに重要な課題となっています。 一般的に、加齢によって新しい情報を得てから処理するスピードや直観力は低下するが、経験や学習により蓄積される洞察力などは上昇すると言われています。したがって、高齢期の働き方としては、得意分野の仕事を自身のペースに合わせて継続できれば、社会から必要とされ、役割があると感じられる「ウェルビーイングな状態」の働き方につながるのではと考えています。 [surfing_other_article id=87020][/surfing_other_article] フランスの経済学者トマ・ピケティは、著書「21世紀の資本」で、 「世界の技術的な最前線にいる国で、一人当たりの産出成長率が長期にわたり年率1.5%を上回った国の歴史的事例はひとつもない」 として、これから私たちが迎えるのは「低成長の時代だ」としています。また、オックスフォード大学地理学教授のダニー・ドーリングは、著書「スローダウン 減速する素晴らしき世界」において、 「スローダウンは歴史の終わりでも救いの到来でもない。ユートピアに向かっているわけではないが、ほとんどの人の生活は良くなるだろう。住まいも教育も改善し、過酷な仕事も減り、安定へと向かっている」 とし、加速的な経済成長、人口増加や出生数の減速、二酸化炭素排出量の増加率でさえ緩やかになると様々なデータを用いて「スローダウン」(物事がゆっくり進むようになる)をポジティブに捉えています。そして、「日本は世界の大国の中で最初にスローダウンした国だった」として、市場も需要も際限なく拡大することから生じる経済格差は持続しなくなり、お互いにもっと気遣う社会になると予測しています。 ゴルフ場産業の規模は基本的に国内人口の増減に左右されます。厚生労働省から「出生数急減」として、2023年の出生数(外国人を含む速報値)が8年連続減少で76万人弱となり、このままでは2035年に50万人を下回ると発表されています。 国立社会保障・人口問題研究所は、減少要因を新型コロナの感染拡大で結婚や妊娠が減少したためとして、2024年以降にある程度持ち直すと予測しています。しかし、2023年の婚姻数(速報値)が90年ぶりに50万組を下回ったなどから実現は望み薄のようです。現状の出生率1.26のままでは、50~100年後の実質経済成長率は年平均△1.1%と予測されています。 婚姻数の回復には若年層の不安定な雇用や所得環境の改善が不可欠ですが、実質賃金はマイナスです。 このような状況でゴルフ場業界がすべきは、低料金化による利用者数増から、質の向上による客単価増だと思います。国の観光政策で実施されている政策です。スローダウンすることへの対応がキーワードでは。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら