十和田での経験
何年か前にマレーシア大使と十和田湖近くのゴルフ場でプレーをご一緒したことがあります。大使以下20人ほどのマレーシアの方々が集まり、6月の良い季節だったこともあって皆さん大いに楽しんでおられました。
私はその時、ホスト役であったのですが、4番のミドルホール、残り160ヤードの2打目でイーグルを達成しました。一緒にプレーをしていた皆さんが本当に喜んでくださった。下手なゴルフですのでめったにそんなことはできませんから、今も鮮明に覚えています。
大学で留学生の世話をする立場からアジア各国の大使館とは面識があり、いつの間にか各国大使館のコンペに参加するようになっていたのです。どの大使もゴルフが好きで、自分の大使館のコンペはもちろん他の大使館のコンペ、ASEANのコンペなど機会を見つけてはゴルフを楽しんでおられます。当然、大使館員や各国業界の日本支社長といった方々もゴルフに参加されます。
私は十和田での皆さんの楽しむ様子から新たな客層を感じたのです。
アジアを視野に入れる
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マレーシア大使(左から2番目)と十和田で親善ゴルフ。大使の右側が筆者。アジア各国の在日大使館ではゴルフコンペが盛ん。[/caption]
私は「アジア客に強い」ゴルフ場があればかなり集客が見込めると思いますが、中には外国人の入会を認めないゴルフ場があります。これは有望なマーケットを見逃しているのではないかと思います。
今後の世界経済の動向を見れば、アジア各国は成長し、世界の主要なマーケットになるのは間違いありません。今は、アジアからのお客を引き入れ、アジアの各国に様々なゴルフ関連業界が進出する絶好の機会だと思っています。
一方、日本の人口は急激に減っています。昨年生まれた子供は75万人です。20年後の20歳人口は現在の117万人から42万人も減ります。ゴルフ人口も減るでしょう。
これに反比例して外国人労働者が増えています。現在350万人ぐらいですが、日本政府は2050年までには1000万人に増やす計画です。日本に外国人が増え続けることと日本人の若者がどんどん減っていくことが同時並行で進んでいます。
昭和生まれの方々には考えられないことかもしれませんが、日本はこのような方向に進んでいくことは間違いなさそうです。
中国やインド、マレーシア、シンガポールなど様々な国の富裕層が日本に来ています。ゴルフをしたい方がたくさんいます。アジアというマーケットを積極的に取り込む努力をすることを前提として、今から様々な策を用意しているゴルフ場が生き残るのだと思います。
ゴルフ場の改革
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大使館のコンペには50人以上集まる。大きなコンペは100人を超える。アジアの大使館をゲストに迎えたい。[/caption]
私が学生だった頃はもう一つのパートナーシップの柱は若者対策です。サッカーよりラグビーの方が人気があったような気がします。しかしサッカーはJリーグを立ち上げ、今では野球をしのぐ勢いです。
2024年度の高校選手権では会場の国立競技場に5万8000人の観衆が詰めかけました。夏の甲子園の決勝より多いのです。
これはサッカー協会が様々な努力をし、企業中心のクラブから地域密着型のクラブ形式にしたり、Jリーグの下部リーグや若い世代の育成に熱心に取り組んできたからです。
これに対し、ゴルフはどうか。ゴルファーの多くは高齢化したままで、将来が心配です。
現在の状況だけでなく10年後20年後のゴルフ界を想像してみてください。世界は今以上のスピードで進化し続けます。それに備えた対策が遅れてはいないか。
格式ある伝統を守り、人に迷惑をかけない行動などについてきちんと教育することはもちろん大切ですが、その一方で、もう少しカジュアルな感じのゴルフ場が増えてもいいのではないかと思います。
プレーフィーについてもパブリックで安いところが欲しい。若いゴルファーは年齢別のフィーを考えたらどうか。学割も欲しい。
マナーと基礎技術をゴルフ場が無料で教えるゴルフ教室もいいと思います。ゴルフ協会が公式にオンライン講座を開設してもいい。その過程をクリアした初心者は、はじめの数回のフィーを割引するというのはどうでしょう。
若者はSDGsに真剣
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2023年度に優勝した青森山田高校サッカー部。決勝戦は5万人を超える大観衆。時間をかけて若い世代を育成したサッカーの人気は高まるばかり。[/caption]
価格の問題とは別に、若い人たちのSDGsへの関心は非常に強いということを知っておくのも重要です。
考えてみてください。年寄りは間もなく死んでいきます。しかし若者たちは2050年という時代に生きているのです。温暖化や生物多様性の課題は自分たちの課題として非常に重く受け止めています。
特に10代の若者は男性で58.5%、女性72.4%がSDGsの行動を起こしています。これは男性の他世代の平均31.3%、同じく女性の41.4%に比べ圧倒的に高い数値です。
SDGsは若い世代にとって非常に深刻な課題です。この流れに沿って、ゴルフ業界がSDGs対応に本気で大きく舵を切れば、若者は集まってくるはずです。
17 グローバル・パートナーシップを活性化する
全ての国々、特に開発途上国での持続可能な開発目標の達成を支援すべく、知識、専門的知見、技術及び資金源を動員、共有するマルチステークホルダー・パートナーシップによって補完しつつ、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを強化する。
さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを推進するなど19項目がターゲットとなっている。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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