今を遡ること4年半前、2020年10月に、福岡・ザ・クラシックゴルフ倶楽部は、倶楽部創設3回目のメジャー大会「日本女子オープン」(優勝 原英莉花プロ)を開催しました。
次回のメジャー誘致は3年後の2028年、同じく日本女子オープンです。18ホールズの改造を昨年終え、現在は大会コースを急ピッチで養生しております。
本稿では、過去大会の経験や次回大会に向けた取り組みを中心にご紹介します。
【前回大会の記憶】
女子オープン2020年大会は、忘れもしないコロナ禍で、一般非公開試合となりました。地元のギャラリーと喜びや興奮を共有できなかったことは残念ですが、様々な学びを得られました。
女子オープンの開催コースとなる条件は日本ゴルフ協会(以下、JGA)の考えの下に設計され、コースレイアウトや周辺のパーキングスペース、場内の敷地面積、ドライビングレンジの大きさ等、多くの項目があるようです。
日本のゴルフの総本山であるJGA主管の大会だけに、世界基準と照らし合わせながら、日本のゴルフをより良く発展させるとの意思が込められています。
具体的には、パワーゲームがプロ競技の世界潮流となる中、本大会ではオープン史上最長セッティングを更新する6761ydsに設定。
空中ハザードとなる木々の伐採やコースからの景観を高めるコース外周の伐採、IP250ydsを想定したFWバンカー位置の見直し、更にはゴルフ場の基本となるコース内のOBエリアを撤廃し、完全に外周のみをOBと定義しました。
実は、OB杭も全て抜き取り、藪の中に設置していたイノシシフェンスをOBラインと定義したのです。OB杭がゴルフ場からすべて抜かれたナショナルオープンは記録上初めてと聞いております。
OB杭の抜き差しは、コース管理上、非常に大変な作業で、復旧に1週間は要しますが、OB杭が全く見えないゴルフ場はコースのビジュアルをより良く見せるように思います。
FWラインも大きく広げました。これではゲームを簡単にしてしまうとの意見もありましたが、この作業の本質は、プレーヤーに対して多様な攻略ルートを用意したということです。
従来の国内プロトーナメントは、狭いFWに長いラフ、ティーショットの落とし所は1点のみのセッティングが目立ちますが、全英・全米という世界のメジャーでは、ロングヒッターを中心に、アマチュアが考えもしない攻略ルートを構想しており、それが観る人を熱狂させています。
プロスポーツはエンターテイメントであることをいつの時代も忘れてはならない。本大会では、その点も一つの学びとなりました。
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【2028のプロモーション】
さて、来たる2028年の女子オープンに向けて準備を進めている最中ですが、初期段階として先頃プロモーションマークを作成しました。
マークのモチーフは、福岡県に所縁のある歴史上最強の女戦士「神功皇后」です。神功皇后は、日本武尊の第2子・14代仲哀天皇の皇后で、15代応神天皇の母とされます。
神と交感する能力を持つ巫女的な女性であったとされ、神功皇后についてのエピソードは、どれも伝説的です。
古事記・日本書紀にもその名が記され、卑弥呼と並ぶ古代日本の象徴的なヒロインのひとりであり、日本で初めて紙幣に肖像が描かれた人物としても有名です。
ロゴやマークは、最も観客の目につくビジュアルであり、その商品の印象までも左右するもの。
過去のナショナルオープンを振り返ると、マークへの好感度は、当然オフィシャルグッズの売上を高めます。
詳細な数字は控えますが、17年の岐阜関カントリークラブの「織田信長」や23年の芦原ゴルフクラブの「恐竜」は大変な人気を誇り、物販も盛況であったと聞いております。

昨年度、弊社を拠点に練習しているプロゴルファーの清水大成プロの応援として、パインハーストNo2で行われた全米オープンの会場を訪ねましたが、大会のプロモーションマークのモチーフとなっているパターボーイ(小さな少年像)は大変な人気で、大半のギャラリーがロゴ入りのアイテムを持っていました。
このような経験から、マークのモチーフは、木や花等の自然物ではなく、思い切ってキャラクターを採用したのです。
現在、同マークの看板やアイテムの製造に取り掛かり、47(フォーティセブン)とのコラボキャップも開発して、販売を開始しています。
ゴルフを遊びつくした成熟したゴルファーは、揃って国内外の名門クラブやナショナルオープンのロゴが入ったゴルフウェアを愛用している印象がありますが、私どももそのお気に入りの中にスタメン入りすることが目標です。
【ゴルフ市場活性化の鍵を握るスタートアップ】
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スポンサーの費用効果を可視化するサービス「Brand Insight」[/caption]
私どもが重視するゴルフ場ビジネスは、プロゴルフとは切っても切れない関係です。
それは、会場を提供することによるPR効果もありますが、プロ団体がスター選手を作り出し、それがテレビに映ることによって、ゴルフギアが売れ、ゴルフ場でプレーするモチベーションにつながってくるからです。
一言でいえば“市場の活性化”を論理的に考え、その上で弊社は積極的にプロ団体に協力をし、地元の若手ゴルファーを応援する取り組みも年々加速しております。
先般、私どもの関連会社は、福岡に拠点を置くスタートアップ、株式会社NextStairs社と業務提携を交わしました。
同社は、画像認識AIの技術を用いて、スポーツにおけるスポンサーの費用対効果を可視化するサービスを提供しています。
可視化する技術の具体的な一例をあげると、従来、人間がストップウォッチを握って計測していたスポーツ中継におけるスポンサーロゴの露出秒数をAIを用いて計測し、
更には画面上のロゴサイズ、ロゴの位置、連続露出、多重露出といった項目も考慮して、より迅速に、そして実態に近いスポンサーシップの広告価値を算出するものです。
私も経験がありますが、興行のスポンサーを依頼するとき、多くの場合はお願いごとになってしまい、
「この金額を出して、いくらの効果が期待できるの?」
と質問されると、回答に困ることが常態化しており、このような不合理を解決するのが同社のサービスです。
ゴルフ市場を伸ばしていくために、プロゴルフは一つの大きなコンテンツであり、それをお願いビジネスにしないこと、社会貢献という言葉に逃げないことが今求められています。
微力ながら、弊社はこの切り口を重視して、市場活性化における役割を考えてまいります。
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この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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