近年、未知のウィルスによる感染症の流行や異常気象による災害が世界各地で発生し、私たちの生活に影響を与えています。これらを解消するために、「生物多様性の保全」や「地球温暖化防止」の国際的活動に関心が高まっています。
社会・経済全体が「生物多様性」(生物間の差異)による「自然環境=自然資本」からの恵みである「生態系サービス」に依存しています。過去50年間、人類は自然の回復力を超えた「自然資本」の利用によって豊かになりましたが、「生態系サービス」は劣化傾向にあります。
そのため「生態系サービスの劣化を止め、回復軌道に転換させる活動=ネイチャーポジティブ」が必要とされ、2022年12月にモントリオールで開催された「国連生物多様性条約第15回締約国会議」(COP15)で、2030年までの世界目標として採択されたのが陸域・海域の30%を生物多様性の保全地域とする「30by30」(サーティー・バイ・サーティー)です。
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「生物多様性」が重要な理由は、全ての生物が補完し合いながら生態系を維持しているため、ある種の遺伝子や生態系が失われるとその影響は他の生物にも及び、全体のバランスが崩れてしまうからです。そもそも、人間の身体を形成している細胞の6割弱は微生物によるもので、その遺伝子の数は人間固有のものの数百倍にも及ぶと言われており、私たちの生命は地球と不可分なものとなっているようです。
また、近年、大きな問題となっている「熱中症」による死亡者数は、厚生労働省調べでは2000年207名、2022年1477名と約7倍に増加し、その約8割が65歳以上の高齢者とのことです。昨年は観測史上最も暑い夏となり、国連は「地球沸騰化の時代が来た」と危機感を露わにすると共に「人間の活動が地球温暖化を引き起こしていることは疑う余地がない」と断定しました。
このような事態を解決するために「持続可能な開発目標(SDGs)」を定め、将来の世代が必要とするものを損なうことなく、現在の世代の欲求を達成することを目指しています。即ち、人類は限りある資源を活用して進歩することを目指して一直線に発展を続けてきたが、その価値観の転換=人間観の転換を迫られているのです。
具体的には「直線型(資源を採掘し、モノを作り、捨てる)から循環型へ」「集中型から分散型へ」「専有から共有へ」と言ったような言葉で表現される「余裕」と「多様性」を持ちつつ、困難に直面した時に適切な対応ができる方向に転換しなければなりません。
幸い、ゴルフを含めたスポーツには、互いをリスペクトすることや、共感することを自然に身に付けられる効用があります。「ゴルフの普及」は、単に業界発展のためだけではなく、もっと広範な効果を意識する必要があるでしょう。
原則論は以上にして、次の提案をゴルフ場において検討頂きたいと思っています。
「30by30」達成のために、我が国では「国立公園などの保護地域の拡張と管理の質の向上」及び、民間企業の所有地等で生物多様性が保たれている「里地里山」等を「自然共生サイト(OECM)」として認定することとしています。
ゴルフ場(その一部でも可)は、「自然共生サイト」として認定を受けることができる可能性があります。「自然共生サイト」として認定されれば、地球環境の保全に貢献するゴルフ場企業としてイメージの向上にも繋がります。
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この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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